推しのアイスショーのために人生初の遠征をした話
前回、羽生くんのアイスショーのライブビューイングを観るために映画館に行った話をした。
そこで私は、「八戸には行けないと思うけど、遠くから応援してるね」的なことを書いたのだ。
それが、まさか、現地で羽生くんを見られることになるなんて……。
しかもそのために、人生初の遠征をすることになるなんて……。
前回は羽生くんとの出会いも含め、いろいろ書いた結果、1万字以上のnoteになってしまったが、果たして今回はどうなるか。
少しでもいいので、読んでいただけたらありがたい。
1.八戸公演、応募する?しない?
実を言うと、私はもともと八戸公演には応募しないでおこうと思っていた。
横浜公演に応募した方はご存じかと思うが、チケットはかなりの激戦で、「#横浜全滅」というハッシュタグができてしまうほどだった。
そのため、八戸公演はさらなる激戦になるだろうと覚悟していた。
さらに、私はこれまで「遠征」というものを経験したことがない。
「遠征」とは、自分が住んでいる地域から離れた場所で開催される推しのライブや舞台などを観に行くことだ。
大きなライブや舞台は、だいたい東京、大阪、名古屋などの大都市を中心に行われることが多い。
そのため、特に地方に住んでいる方は、推しに会うために新幹線や高速バスなどを使ったり、ホテルを取ったりする。
中には海外公演のために国境を越える方もいる。
そうやって、推しのために時間とお金をかけて遠征する方がたくさんいるのだ。
一方私は、東京生まれ東京育ちという恵まれた環境にいて、推しに会うために行った一番遠い場所といえば横浜ぐらい。
例えば、東京に住んでいても大阪公演のために遠征するとか、そういう人も多いと思うが、私はそこまでの気力はなく、東京公演に行ければ十分でしょ、みたいな感じで、かなりゆる〜くやっているタイプのオタクなのだ。
(あと、単純に推しが多すぎるので、いちいち遠征なんてしてたら身体的にも金銭的にもしんどいというのもある。)
だから、羽生くんのためとはいえ、一人で八戸まで行くということ自体、私にとっては大冒険だったし、いろいろ手配しなければならないことを考えると、不安の方が大きかった。
でも、「どうせ当たらないだろうし、とりあえず当たって砕けろ精神で応募してみるか!」ということで、先行抽選の受付最終日に思いきって応募することにしたのだ。
2.運命の当落発表
そして、当落発表の日。
その日は11月11日だった。
偶然だが、ちょうど某新聞の読者投稿欄に私の投稿が載った日でもあった。
とりあえずSNSでその投稿の宣伝をした後、コンビニでトッポを買った。
本当は「ポッキー&プリッツの日」なのだが、長瀬くんファンの友達にトッポを買うと約束したのだ。
「その点トッポってすげえよな、最後までチョコたっぷりだもん」というあのセリフどおり、トッポは端っこまでチョコたっぷりでおいしかった。
トッポをボリボリかじりながら当落発表を待っていると、「クレジットカードの利用可能額が動いているかどうかで、事前に当落が分かる」という内容をTwitterに投稿している方がいた。
クレジットカードを使って買い物などをしたとき、カードの利用明細が出てくるまでには少し時間がかかるが、利用可能額(カードで利用できる上限額)はすぐに変動するので、そこをチェックすれば事前に当落が分かる場合もあるらしい。
なるほど、いいことを聞いた。
早速、自分のカードを調べてみることにした。
だが、私は同じカードで他にも本やグッズなどを注文しており、まだ利用明細が出ていないものもいくつかある。
注文履歴や記憶を頼りに計算してみたが、どうやっても計算が合わない。
目的ごとにカードを使い分けて管理している方ならすぐに分かるのかもしれないが、私はそこまで器用ではない。
自分が何にどれだけお金を使っているのかすら把握できず、結局よく分からないままだった。
ただ、チケット分の金額が動いているような感じはなかった。
「覚悟はしてたけど、今回もダメだったか」と落ち込んだ。
そして、15:00を過ぎ、抽選結果のメールが届いた。
今回、私は2日(金)と3日(土)の分を申し込んでいたのだが、送られてきたのは3日の分だけだった。
結果は落選。
落ち込むと同時に、ある疑問が湧いてきた。
「そういえば、何で2日の分のメールが来ないんだろう?」
3.当選……?
メールが送られてくる前に、チケットのサイトで当落を確認することはできるのだが、どうせ全滅だろうと思っていたので、怖くてアクセスできなかった。
でも、メールが届いていないことに違和感を感じた私は、おそるおそるサイトをのぞいてみることにした。
そこには、「当選」の文字が。
……えっ?
……当選?
……えっ?(2回目)
一瞬わけが分からなかった。
何かの間違いかと思った。
そのときの私の脳内はこんな感じだった。
「そんな、嘘だ、えっ、何で、当たるわけないのに、どうして、えっ、マジか、どうしよう、当たっちゃった、えっ、待って待って待って、私、羽生くんに会えるの?ずっと会いたかった羽生くんに会えるの?えっ、どうしよう、八戸、遠いよ、遠征だ、準備しなきゃ、まず何からやればいいんだ、マジでどうしよう、待って待って待って……」
落ち着けよ。
いや、でも本当に冗談抜きでこれぐらいパニックになっていた。
だって、当たると思ってなかったから。
横浜の結果が散々だったから。
羽生くんに会いたいという思いはずっとあったけど、それが叶う日が来るとは思ってなかったから。
私はずっと羽生くんを画面越しでしか見られないと思ってたから。
羽生くんに会えるなんて、夢のまた夢だと思ってたから。
まさか、こんなに早くチャンスが来るなんて、信じられなかった。
11月11日にこんな嬉しいことが起こるなんて、想像もしてなかった。
だいぶ遅れて嬉しさがこみ上げてきた。
ずっと会いたかった人に会えるんだ。
羽生くんに会えるんだ。
私の夢が叶うんだ。
神様、本当に本当にありがとうございます!!!
4.冷静になって見えたこと
少し落ち着いてからTwitterを見てみると、今回もさまざまな声が上がっていた。
その中で特に目についたのは、私のような横浜全滅組の当選だった。
確かに、横浜は全然ダメだったけど八戸は当選したという人が心なしか多い気がする。
そのうち、「横浜全滅だった人は当たりやすくなっているのでは?」という説が出てきた。
これに関しては、実際にアンケートを取ってまとめてくださった方がいるので、そちらをご覧いただきたい。
(ご本人様に掲載許可をいただきました。)
見てみると確かに、横浜公演で当選した方は八戸公演の当選確率がかなり下がっているような気がする。
これは、一人でも多くの人に公演を観てほしいという羽生くんの意思なのだろうか。
この件に関しては、さまざまな意見があると思う。
本当に横浜全滅組が当選しやすいシステムになっていたのだとしたら、私が当選したのは間違いなくそのおかげだろう。
だから、私としてはありがたい気持ちももちろんある。
ただ、「そういうシステムにするなら前もって公表すべき」という意見もあるし、それはごもっともだと思う。
さらに、横浜、八戸ともに全滅で悲しい思いをしている方や、奇跡的に両方当選したことに複雑な思いを抱く方など、さまざまな感情が入り乱れる当落発表になった。
それでも、「当選した方おめでとうございます!」と祝福してくださる方がたくさんいた。
自分が落選してすごく悲しいはずなのに、誰かの幸せを祝福できるなんて本当に素晴らしいと思う。
これから皆さんに毎日一回以上は絶対いいことが起こるように祈っている。
5.初めての遠征、どうすればいい?
さて、運良く当選した私だが、やらなければいけないことはたくさんある。
はじめに言ったとおり、遠征は今回が初めて。
分からないことが多すぎる。
頭の中で『はじめてのおつかい』のテーマソングが流れてきそうだ。
はじめてのえんせい!
ドレミファドレミファ♪
ドッドドレミファ♪
今回、はじめてのえんせいに挑戦するのは、東京都に住むあやちゃん、28歳。
大好きな羽生結弦くんに会いに行くために、なんと八戸まで行くんです!
さあ、ちゃんとたどり着くことはできるかな〜?
申し訳ない、つい変な妄想をしてしまった。
でもそれぐらい私にとって遠征は大きなことなのだ。
とにかくまずは新幹線の予約だ!
すぐにえきねっとにアクセスし、行きの新幹線の予約を取った。
しかし、問題は帰りだ。
当日、八戸から東京へ向かう最終の新幹線が出るのは20:12。
公演が始まるのは18:00。
……微妙すぎる。
でも、この前の横浜公演のときは2時間足らずで終わったし、規制退場も上の方の席からだと思うし、頑張れば間に合うんじゃね?
いやいや、さすがにそれはリスクが高すぎるか。
じゃあ仙台まで行って泊まるとか?
うわ〜、どうしよう、どうすればいいんだろう。
父に相談すると、「夜行バスがあるじゃん」と言われた。
なるほど、その手があったか。
しかし夜行バスももちろん乗ったことがないので不安で仕方がない。
なんとか新幹線で帰れないだろうか。
あと、なぜか母(羽生くんファンではない、チケット持ってない)まで巻き込み、二人で仙台に一泊するかとか、いろいろ考えた。
でも、最終的には父の言うとおり、夜行バスで帰ってくることにした。
その結果、新幹線を予約してキャンセルして、ホテルを予約してキャンセルして、とずいぶん無駄な動きが多くなってしまった。
せめて新幹線がもう少し遅ければ、迷わず新幹線で帰ってくるのにな〜。
でも、今回のショーに合わせて新幹線を増便したのは本当にすごいと思う。
私も結果的には、増便した新幹線に乗って八戸に向かった。
やはり羽生結弦の影響力は半端じゃない。
ちなみに余談中の余談だが、普段新幹線を使わないのに、急にいろいろ予約したり変更したり取り消したりというのを繰り返したせいか、カードの不正利用を疑われ、カードの利用を一部制限されてしまった。
実は来年、友達と某テーマパークに行く計画を立てており、私がまとめてチケットを買うことになったのだが、新幹線やテーマパークのチケットは換金目的で購入されることが多いため、少しでも怪しい動きがあると、制限がかかりやすくなってしまうようだ。
そのせいでパークのチケットが買えず、急きょ別のカードで買うことになった。
一応カード会社に事情を説明して、制限は解除してもらえたようなのでよかったが、利用制限をかけられたのはこれが初めてだったので少し焦ってしまった。
皆様も普段と違う動きをするときはお気をつけくださいね。
ところで、遠征にあたって気になるのが「寒さ」だ。
幼い頃、父が盛岡に単身赴任していたので、たまに遊びに行っていたし、東北地方は旅行で何度も訪れたことがあるが、やはり東北の冬は寒い。めちゃくちゃ寒い。
寒がりの私にとってはおそらく地獄だと思う。
さらに12月ともなれば、雪が降る可能性もある。
これに関しては刻一刻と状況が変わるので、天気予報をしっかりチェックしなければならないが、少なくとも東京にいるときと同じぐらいの服装だと痛い目を見ることは確かだ。
ヒートテックやタイツ、ダウンジャケットにカイロなど、いつも以上に対策をする必要がある。
しかしここでまた悩ましいのが、持っていくカバンの大きさだ。
八戸駅のコインロッカーの数はあまり多くないため、おそらく会場に荷物を全て持っていかなければならないと思う。
そうなったときに、例えばスーツケースだと明らかに他の人の邪魔になってしまう。
なので、荷物は必要最低限にしたいのだ。
寒さ対策や夜行バスのためにあれこれ持っていきたいところだが、そういった荷物をいかにしてコンパクトにまとめるかが、今回の遠征のカギとなりそうだ。
6.いよいよ遠征準備!!!
いよいよ遠征の準備をすることになった。
実を言うと、私は荷造りがとてつもなく嫌いだ。
友達や家族との旅行など、そういったイベント自体はものすごく楽しみだが、必要なものを考えてそれをスーツケースやカバンに詰め込むという作業が苦痛で仕方ない。
「荷造りさえなければ旅行をもっと楽しめるのに……」と思ってしまうほどである。
しかし、今回は推しの尊い姿を拝みに行くという一大イベント。
このためにわざわざ有休まで取ったのだ。
文句を言っている場合ではない。
前日の夜に、一人荷造りチキンレースを開催した。
(荷造りチキンレースとは、旅行や合宿などの予定が迫っている中、いかにギリギリまで荷造りせずにいられるかを競うしょうもないレースのことである。)
とりあえず、父から借りた斜めがけのカバンに貴重品などを入れ、これまた父から借りたでかいリュックに防寒グッズなどの大きめの荷物を入れることにした。
こうしておけば、夜行バスに乗るときにリュックをトランクに預けても支障がないだろうと考えたのだ。
私が準備した荷物は以下のとおりだ。
・UNIQLOのダウンジャケット
・無印良品のマフラー
・冬用の帽子
・耳当て
・手袋
・ブランケット
・カイロ(貼るタイプ、貼らないタイプ)
・靴下
・サポーター
・湿布
・手提げ袋
・財布
・保険証
・水筒(2本)
・軽食、お菓子
・レジ袋(数枚)
・折り畳み傘
・ハンカチ
・ポケットティッシュ
・アルコール除菌シート
・マスク(数枚)
・コンタクトレンズケース
・コンタクト洗浄液
・目薬
・メガネケース
・オペラグラス
・モバイルバッテリー
・充電ケーブル
・筆記用具&メモ帳
ちなみにブランケットは現地のグッズ購入で調達したかったのだが、整理券が一番最後のグループだったので、もしかしたら売り切れてしまっているかもしれないと思い、予備のものを持っていくことにした。
また、定期券はiPhoneのウォレット機能に入れてあるし、新幹線もeチケットで乗車するので紙のチケットは必要ない。
さらに、公演のチケットもデジタルなので、入場するときにカバンを漁らなくていいのはとても楽だと思う。
自分で事前に調べた情報や、Twitterに載っていたアドバイスなどをもとに、最大限の寒さ対策をした。
そして何より大事なのは、「東京の感覚のまま八戸に行ってはいけない」ということだ。
会場となるフラット八戸は、八戸駅の西口側にあるのだが、地図を見てみると、西口側には驚くほど何もない。
東京であれば、開場時間まで喫茶店などで過ごすというのが一般的だが、喫茶店も八戸駅のドトールぐらいしかなさそうだ。
当日はきっと多くのお客さんが押し寄せて満席になってしまうだろう。
さらに駅構内のお土産屋さんや飲食店も18:00には閉まってしまう。
私は公演が終わった後、21:00頃に出発する夜行バスに乗る予定なのだが、バスを待つ間、どこで過ごせばいいのだろう。
頼りになりそうなのは東口側にある24時間営業のコンビニぐらいだ。
いろいろ調べていくうちに、一気に不安が襲ってきた。
東京生まれ東京育ちというあまりにも恵まれた環境に身を置いてきたため、地方の不便さには慣れていない。
(※決して八戸の方々をディスっているわけではない。)
コンビニもスーパーもファストフード店も喫茶店も家から徒歩圏内にある自分の状況は、決して当たり前ではないということを思い知った。
「何がなんでも生き延びて無事に帰ってきてやる……!!!」と、まるで遠い異国の地に向かうかのような気持ちになった。
(※繰り返すが、決して八戸の方々をディスっているわけではない。)
そんなことをあれこれ考えつつ、ある程度準備をして眠りについたのだった。
7.いざ八戸!!!
朝8時すぎに寝ぼけながら起床。
この数時間前、サッカーW杯で日本がスペインに奇跡的に勝利していた。
私は試合を観ることなく寝てしまったが、もともと早起きの父はテレビで観戦していたらしい。
あまりサッカーに詳しくない私でも、今回のことがいかにすごいかというのは何となく分かった。
ただ、ドイツに勝ち、コスタリカに負け、スペインに勝つという怒涛の展開に、手のひら返しをしまくる人も多かったと思う。
私はそういうのがあまり好きではなかったので、喜ぶのはほどほどにしておいた。
朝食を食べて洗い物をし、風呂に入って荷物の最終チェックを行った。
寒さ対策のために服をめちゃくちゃ着込み、でかいリュックを背負った私は、まるで山登りにでも行くかのような出で立ちだった。
さすがに東京にいる間は暑かったが、手荷物を減らすため、新幹線に乗るまでは我慢した。
そして、新幹線に乗り込み、無事に出発。
私は3列シートの窓側だったが、ラッキーなことに隣の2席には誰もいなかった。
出発するとすぐに、父が買ってくれたおにぎりとランチパックを口に放り込んだ。
今回、夜行バスに乗ることも考えて、食べ物は多めに持ってきた。
ちなみに飲み物は、自宅から持ってきたホットのほうじ茶で、これも水筒2本分。
荷物にはなってしまうが、寒いところで少しでも身体を暖めるために必要だと思ったのだ。
そして、新幹線はぐんぐん北へ。
幸い、この日はいい天気で、遠くの景色がよく見えた。
寝ようかとも思ったが、Instagramのストーリーを見たり、noteを書いたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎてしまった。
そして、いよいよ八戸に到着。
寒さ対策バッチリの状態でホームに降りたので、そこまで寒さは感じなかったが、やはり空気は冷たかった。
会場は夕日に照らされてとても綺麗だった。
まずはグッズ購入というミッションがある。
私のお目当てはブランケット。
ネットでグッズを購入したときに買いそびれてしまったのだ。
今回、八戸会場で販売されるということで、どうしても手に入れたいと思っていた。
幸い、売り切れてはいなかったので、無事に買うことができた。
次に私が向かったのは、八戸駅の東口側にあるお土産屋さん。
今回、アイスショーのために有休を取ったことを上司に伝えていたので、さすがに何かお土産は買わなければならないだろうと思った。
家族の分も含め、無事にお土産を購入。
レジにはたくさんの人が並んでおり、羽生くんがもたらす経済効果をここでも実感した。
開場時間が近づくまで屋内で待っているうちに、だんだんソワソワしてきた。
このときはまだ全然実感が湧いていなかったけど、ついに羽生くんに会えるんだと思うと、少しずつ緊張が高まってきた。
そしていい時間になったところで外に出て待機列に並んだ。
夜になるといっそう冷え込み、手袋をしていても手がかじかむほどになった。
今回のために桐灰のめっちゃ熱いカイロを買っておいたのは本当に正解だった。
そして、地味に役に立ったのがスマホ対応の手袋だ。
手袋をしたままでもスマホの画面を操作できるのでとても助かった。
待機列に並んでいる間は本当に寒かったが、帽子、耳当て、手袋、カイロと、さまざまなグッズを駆使してなんとか乗り切った。
8.開演!!!
そしていよいよ会場内に入り、席についた。
私は南側のスタンドA席。
なんと、羽生くんが出てくるところを正面から見られる良席だった。
横浜公演と同様、観客には光るバングルが配られた。
オペラグラスを準備し、グッズのブランケットを広げ、静かにそのときを待った。
いよいよ、私の10年越しの夢が叶うときが来るんだ。
そう思うと、自然と手に力が入った。
会場が暗くなり、待ちに待った瞬間がついに訪れた。
公演の流れは基本的に横浜と同じだったので細かい説明は省略するが、印象に残った場面を書いていく。
まず、決意表明会見と羽生くんのウォーミングアップの映像が流れ、その後に羽生くんがリンクに姿を現した。
私の心の中の第一声は、「うわあ〜」だったと思う。
もう、本当にそれしか感想が出てこなかった。
ずっとこの目で見たいと思っていた人が、目の前のリンクに立っている。
これ以上幸せなことはないと思った。
次に頭に浮かんだのは、私が敬愛するVanessaさんのYouTubeでの発言だった。
「羽生くんの身長172cm!?192cmじゃなくて!?」
そう、羽生くんの身長は日本人男性の平均ほどなのだが、顔の小ささと手足の長さにより、とても大きく見えた。
もはやスタイルが2次元なのだ。
そして、滑るときやジャンプするときに響く氷の音も美しかった。
生で聴く氷の音はこんなにも美しいものなのかと思った。
6分間練習が終わると、「1番、羽生結弦さん」のアナウンスとともに羽生くんがリンクに飛び出していき、『SEIMEI』に合わせて滑り始めた。
ジャンプも成功させ、演技が終了すると会場はスタンディングオベーション。
私も余韻に浸りながら精一杯の拍手を送った。
その後は幼少期の羽生くんの映像が流れた。
リュックにプーさんをつけながら、遊具に乗って前後に激しく揺れるあの映像もまた見ることができた。
その後は、三味線の演奏に合わせて『Change』を披露した。
途中、羽生くんが私のいる南側のエリアに向かって大きく手拍子をしてきた。
まるで「ほらもっと手拍子しろよ!」と煽っているような感じだった。
からかい上手、いや、盛り上げ上手の羽生さんだ。
演技が終わると、羽生くんがマイクを持って話し始めた。
「もし何かあったら、必ずどこかにスタッフさんがいらっしゃると思うので、遠慮なく声をかけてください」とお客さんへの気遣いを見せていた。
また、「サッカーもあって、寝不足の方もいらっしゃると思いますが、眠かったら寝てくださいね」と冗談を言う場面もあり、会場は笑いに包まれた。
あなたに会うためにわざわざ八戸まで来て寝るわけないやろがい!!!
その後は質問コーナーへ。
「これだけフィギュアスケートに打ち込める原動力は何ですか?」という質問に対しては、このようなことを言っていたと思う。
(記憶が曖昧なので、間違えていたらすみません。)
「『逃げる』って言葉を皆さんよく使うじゃないですか。例えば宿題をやらなきゃいけないけど、ゲームしたり漫画読んだりしたいな〜っていうときに、『逃げる』って言葉を使うと思うんですけど、僕にとっては逃げることの方が怖いんです。」
うわ〜、さすが羽生くんだ。
やるべきことから逃げてばかりの私には本当に耳が痛い話だった。
羽生くんは続けて言った。
「こんなことを言うと、『メンタル強いね』なんて言われるんですけど、僕メンタルお豆腐なんですよ。豆腐の角に頭ぶつけただけで倒れちゃうんじゃないかってぐらい。なので優しく扱ってください(笑)。」
うわ〜、ギャップ萌えだ〜、ギャップ萌えを狙ってきた〜。
先生〜、羽生くんがギャップのある発言をして私たちをさらなる沼に落とそうとしてきました〜!
いや〜、羽生結弦って、おもしれー男。
途中どっかのタイミングでMCの方に、「羽生さん寒くないですか?」って聞かれて、羽生くんが「寒いですね」って言って上着を着るシーンがあったんだけど、そりゃ極寒の八戸のリンクで片方ノースリーブはいくら羽生くんでも寒いだろうよ。
そして、お待ちかねのリクエストコーナーへ。
横浜公演のときは大人の事情で候補に入れられなかったという『Otoñal』が新たに加わっていた。
私は『花になれ』が見たかったので、バングルを緑色に点灯させた。
会場を見ながら羽生くんが一言。
「これ青と水色分かりづらいですね〜(笑)。」
確かに。
どうせなら赤とか入れてもよかったかもね。
羽生くん「青の人〜♪」
(青の人がバングルを振る)
羽生くん「水色の人〜♪」
(水色の人がバングルを振る)
羽生くん「あっ、緑の人もありがとうございます♪」
(私、笑顔でバングルを振る)
羽生くん「紫は〜?(割と少なめだった)……あっ、レツクレ(『Let's Go Crazy』)はみんなもうお腹いっぱいなのかな(笑)?」
(笑いが起こる)
最終的に、票が一番多かった『Otoñal』を滑ることになり、滑り終わると会場は拍手に包まれた。
その次は、事前に募集した滑ってほしいプログラムの中から、『ミッション:インポッシブル2』を滑った。
まだ羽生くんが中学生の頃のプログラムで、今ではなかなかやらないような振付もあるので、注目してほしいとのことだった。
こちらも最高にかっこよかった。
次の映像にいく前に、羽生くんが静かに話し始めた。
この後、東日本大震災の映像が流れることを踏まえてのものだった。
私はあまり知らなかったのだが、横浜公演のときに震災の映像を流したことに対して、批判の声もあったようだ。
羽生くんは、きっとそういった意見を目にしたのだろう。
確かにショッキングな映像だったし、見るのが辛くなってしまう人もいたと思う。
でも、地震や津波で大勢の方が亡くなったこと、家族や友達を亡くした方がたくさんいること、ふるさとを離れざるを得なかった方がたくさんいること、当たり前にあったはずの日常を一瞬にして奪われた方がたくさんいること。
それは変えることのできない事実だ。
そして、羽生くん自身も被災した。
そんな羽生くんの言葉には重みがあった。
「かさぶたを無理にはがす必要はないけど、少しでも向き合っていただきたい」
そんなことを言っていたと思う。
映像は、羽生くん自身が選んだというようなことも話していた。
一つひとつ言葉を選びながら、真摯に、丁寧に話す姿がとても印象的だった。
ネガティブなことを言う人もいるかもしれない。
でも、あえてこの映像を入れたことの意味を感じ取ってほしい。
そんな羽生くんの想いを感じた。
大丈夫。少なくともここにいる人たちには、羽生くんの気持ち、ちゃんと伝わってるからね。
私は心の中で羽生くんに語りかけていた。
そして、震災の映像が流れた。
おそらく、横浜公演のときと映像が少し違ったと思う。
少しでも見る人の負担を減らすために、いろいろと考えて作り直したのだろう。
私は目を逸らさず、じっと映像を見続けていた。
そしてチャリティーアイスショーの映像の後に、『ロミオ+ジュリエット』の映像が流れ、途中から羽生くんがリンクに登場。
前回の記事にも書いたが、私が羽生くんを本格的に応援したいと思ったきっかけのプログラムなので、生で見ることができて本当に嬉しかった。
その後はソチオリンピックや平昌オリンピックを中心とした映像と、『夢見る憧憬』に合わせて滑る羽生くんの映像が流れた。
そして、白い布をまとった羽生くんがリンクに登場し、『いつか終わる夢』に合わせて滑り始めた。
横浜公演と同様、プロジェクションマッピングの映像に合わせて滑る羽生くんは本当に美しかった。
今回は上の方の席で、リンク全体を見渡せる位置だったので、プロジェクションマッピングの映像も割としっかり見ることができた。
そして、羽生くんがリンクを去ると、SEKAI NO OWARIの『サザンカ』に合わせて、羽生くんが1位になれなかった大会の映像、ジャンプに失敗し転倒する映像、松葉杖をつきながら表彰台に上がる映像、衝突事故のときの映像(衝突シーンはカット)などが流れた。
横浜公演のときも一度見ていたが、何度見ても胸が苦しくなる映像だった。
そこへさらに羽生くんの肉声で、「僕は、幸せです」なんて言われてしまったら、もう胸がギュウウウっとなってしまう。
前回もいろいろ書いたが、羽生くんは本当にすごい人だと思う。
本人は手放しで賞賛されることをあまり好まないかもしれないが、私は何度だって言いたい。
あなたは素晴らしい人だと。
あなたに出会えてよかったと。
そして羽生くんが再びリンクに登場し、『春よ、来い』に合わせて滑り始めた。
手に持ったリンクの氷を、パーッと空中に撒くところは、もはやアートのようだった。
もうここまでくると、私の語彙力では到底表現できない。
圧倒的なスケートの技術と、卓越した表現力で思いっきりぶん殴られたような感じで、「すごい」「綺麗」「美しい」みたいな感想しか出てこなかった。
滑り終えると、羽生くんは丁寧にお辞儀をしてリンクを去っていった。
すぐさまアンコールの拍手が会場に鳴り響いた。
自然とみんながバングルを青色に点灯させ、会場が青一色になった。
すると、時計の秒針が進む映像が流れ、『パリの散歩道』のエレキギターの音が鳴り響き、羽生くんが再びリンクに登場した。
滑り終えると、会場はスタンディングオベーション。
そのままエンディングに突入した。
Adoさんの『私は最強』に合わせてリンクをぐるぐる回り、会場のお客さんにひととおり挨拶すると、最後に「ありがとうございました!!!」と叫んでリンクを去っていった。
約1時間半の公演は無事に終了した。
本当にあっという間だった。
夢のような時間だった。
そして、私の夢が一つ叶った瞬間だった。
9.おうちに帰るまでが遠征です
余韻に浸りたいところだったが、すぐに規制退場が始まったので、じっくり考える余裕もないまま、急いで荷物をまとめて外に出た。
凍えるような寒さの中、私は喜びを噛みしめていた。
チケット当選という奇跡のおかげで、素晴らしい時間を過ごすことができた。
本当に感謝しかない。
それと同時に、来たくても来られなかった人がたくさんいることも分かっていたので、その方々の分までしっかり目に焼きつけるぞ、という気持ちもあった。
noteは落ち着いたらゆっくり書くことにしよう。
そんなことを思いつつ、頭の中では早くも次のことを考えていた。
そう、夜行バスだ。
公演が思ったより早めに終わったので、結果的に新幹線で帰ることもできたのだが、夜行バスを予約してしまっているので、おとなしくバスを待つことにした。
しかし、駅の中は人が多くて落ち着かない。
もういっそのこと外に出てしまえ!
このとき、バスの出発時刻までまだ1時間以上あった。
自分でもアホだなと思ったが、とりあえず静かな場所に行きたかったのだ。
八戸駅の東口側に出ると、もうお土産屋さんも閉まっていて、ひっそりとしていた。
ベンチに腰掛けて、荷物の整理をしたり、カレーパンやおにぎりを食べたりしながらバスが来るのを待った。
当たり前だがめちゃくちゃ寒かった。
桐灰のめっちゃ熱いカイロを使っても太刀打ちできないほどの寒さだった。
今考えると、よくあんなところに1時間もいられたなと思う。
そして、記憶が薄れないうちに、iPhoneに簡単なメモを残すことにした。
寒さで手の感覚が麻痺し、文字を打つのもしんどかったが、なんとかメモを残すことができた。
このnoteを書くにあたって、そのときのメモはけっこう役に立ったと思う。
そして、やっとバスが到着した。
大きな荷物をトランクに預けて乗車した。
(ここからはもはや夜行バスのレポートになってしまうので、興味のある方だけお読みください。)
私が乗った夜行バスは4列シートで、それぞれの席に充電用のコンセントがついていた。
また、顔の部分を覆うフードのようなものもついており、寝るときはそのフードを下げることができるようになっていた。
いよいよ人生初の夜行バスの旅がスタートした。
ここからはただ乗っているだけだったので特に書くこともないが、自分の不器用さを痛感した出来事があった。
iPhoneを充電するためにケーブルを差し込もうと思ったのだが、うまく差し込めなかったのだ。
事前に「コンセントは回しながら差し込むタイプです」という車内アナウンスがあったのだが、いざやってみると全然うまくいかなかった。
しかも途中から車内が暗くなり、コンセントの穴がよく見えない状態になってしまった。
周りの迷惑にならないように、iPhoneの画面で手元を照らしながら何度もトライするが、ことごとく失敗。
もう諦めようかと思ったが、いろいろやっているうちに奇跡的に差し込むことができた。
達成感はあったものの、めちゃくちゃ疲れた。
何でこんなことにエネルギーを使わなきゃいけないんだという感じだったが、無事にiPhoneを充電することができた。
その後、寝たり起きたりを繰り返しながらバスに揺られること約9時間。
ようやく、目的地のバスタ新宿に到着した。
私は預けていた荷物を受け取り、帰路についた。
結論から言うと、お尻と足の裏がめちゃくちゃ痛くなっていた。
途中で一度も席を立たなかったので、お尻が痛くなることは覚悟していたが、足の裏が痛くなるのは予想外だった。
実は、足を乗せられるフットレストがついていたのだが、足元がごちゃごちゃしていたこともあり、フットレストを使わなかったのだ。
これがよくなかった。
知らず知らずのうちに足の裏にも体重がかかってしまい、ずっと立ちっぱなしのような状態になってしまっていた。
もし次に夜行バスを使う機会があったら、フットレストはしっかり活用したいと思う。
10.まとめ
こんな感じで長々と書いてきたが、大きなトラブルもなく無事に帰ってくることができて本当にホッとしている。
八戸に行けることが決まったときから、とにかくインフルやらコロちゃんやらにかからないように祈りまくっていた。
横浜でも八戸でも、そういった理由で泣く泣くチケットをリセールに出した方がいて、その方々のツイートを見るたびに胸が締めつけられるような気持ちになった。
どんなに気をつけていても感染してしまうことはあるし、これに関しては本当にどうしようもない。
でも、それで行けなくなったら私は一生自分を責め続けただろうし、ずっと後悔して生きることになっていたと思う。
このような状況で元気に当日を迎えることができたのは、本当に運がよかったとしか言えない。
また、新幹線も時間どおりに発車し、事故もなく無事に八戸までたどり着くことができた。
さすがに八戸は寒かったが、私が行った日は雪も降っていなかったので、その点はラッキーだった。
そして何より、羽生くんがケガなく無事に当日を迎えられたことが本当に嬉しい。
羽生くんにとって特別な場所である東北の地で、私が羽生くんを推し始めた高校生の頃からの夢を叶えることができて本当によかった。
一年を締めくくるにはまだ早いかもしれないが、2022年は間違いなく私にとって特別な年になった。
羽生くんと同じ時代を生きている奇跡に、心から感謝したい。
羽生くん、あなたは最高だよ。
本当に本当にありがとう。
11.羽生くん、あんたとんでもねえことしてくれたじゃねえか
本当は羽生くんへの感謝の気持ちを綴って、わ〜感動的だね〜よかったね〜みたいな感じで終わらせようと思ってたけど、そうもいかなくなってしまった。
12月5日、八戸公演の最終日。
ここで、とんでもないサプライズがあった。
「2023年2月26日、羽生結弦、東京ドームでアイスショーやります!!!」
……はっ???
……ちょっと待て???
……羽生くんが???
……東京ドームで???
……アイスショー???
ええええええええええ!?!?!?!?!?
いや確かにもっと大きなところでやろうって言ったし、東京ドームとかいいんじゃない?みたいな感じで言ってたけどさ、まさか本当にやるなんて思わないじゃん!?!?!?
たぶんプロローグと並行して話を進めてたんだろうけどさ、私たちが「東京ドームでやろうぜ〜」みたいに言ってたのをどういう気持ちで見てたのよ。
あれか?デ○ノートの夜○月みたいに、「計画通り」つってほくそ笑んでたのか?
私たちは最初から羽生くんの手のひらで転がされていたのか?
羽生くん、あなたはなんて恐ろしい人なの。
「僕なんか」って弱気な発言してたじゃん。
そのたびに「もっと自信持ちなよ!」って私たちが励ましてきたじゃん。
もうそんな心配いらないぐらいのでっかいプロジェクトが裏で動いてたってことでしょ?
あんたとんでもねえヤツだな。
見てた人たちは情緒が大変だったらしいよ。
せっかく感動してたところにどでかいサプライズぶち込まれて涙引っ込んだって言ってたよ。
もうちょっと余韻に浸らせてあげることはできなかったのかね?
……あっ、できない、そうですか、ウッス、すんません。
まだ詳しいことは何も分からないけど、きっととんでもないものができあがるんだろうな。
チケット取れるか分からないけど、もし行けるならぜひ行きたい。
ということで、プロローグのレポ(と見せかけた個人的感想)はこれで終わりになるが、次は東京ドームのレポ(と見せかけた個人的感想)を書くことになるかもしれない。
まあ、いろいろ好き勝手言いまくったけど、これからも羽生くんを応援したいと思う気持ちは変わらないし、自分のペースで推し続けていくつもりだ。
とにかく、今は羽生くんが無事に当日を迎えられることを祈るしかない。
あと、私もチケットが当たるといいな〜。
どんな感じになるのか今から楽しみだ。
では、そろそろここら辺で失礼します。
最後まで読んでくださった方(いるのか?)、本当に本当にありがとうございます!!!
あっ、最後に一言だけ。
羽生くん、お誕生日おめでとう。
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