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風の在る山

約千メートルの山に登った。天気は曇り。真っ直ぐ天に向かって伸びる杉の森林を越え、低い植物に囲まれた尾根をぬけ、雪の残る湿地でカエルの卵を観察して、約2時間半で頂上にたどり着いた。
登山のお楽しみは食べることにあると言っても過言ではない。山で調理するごはんはなんでもおいしい。お湯を沸かしてカップ麺の容器に注ぐと、ジャンキーな香りが辺りに充満した。なんとなく、いつも日清カップヌードルを選ぶ。山に一番似合う気がするのだ。持参した肉を焼く。これまたおいしい。今度はフレンチトーストを下拵えして持ってこようか。夢が広がる。そして食後のコーヒー。豆から挽いてくれる友人のおかげで、食後の一杯が一層優雅なものになる。余計な音や匂いがしない、静かな空間。美しい景色を前に、達成感といい疲労を感じながらぼーっとする時間は、何物にも代え難い。
頂上付近には、高い山に生息する福寿草が至る所に生えていた。雪が残る窪地の横に明るい黄色が咲き乱れ、冬と春が同居していた。福寿草はつややかな花弁にたんぽぽのようなギザギザの葉っぱで、遠くから見るとやっぱりたんぽぽのようだった。近くで見ると形が全然違うとわかるのだけれど。たんぽぽの方が柔らかで、福寿草はわりとがっしりしている印象だ。しかし福寿草って、とてもおめでたい名前だな。縁起物なのだろうか。
今回の登山は、今までで一番「風」をはっきりと感じられたように思う。周囲は何もない、細い尾根を横断しているとき、右から左へ風がびゅうっと通り抜けていくのが耳で、体でわかった。雲も風に乗ってどんどん流れていっていた。風は目に見えないけれど、在るんだなぁってなんだか感心してしまった。友人にさっき吹いた風について話すと、「花鳥風月」という言葉にあるように、風は自然の美しいものの一つとされているから、自分も風を意識するようになったという返事があり、なるほどと思った。いつも風が吹くことを良しと思わず、むしろわずらわしく感じていたりしたが、自然はありのままでそこに在り、自分の受け取り方次第だと思った。私も風を意識してみようと思う。
もうひとつのお楽しみは温泉だ。風呂も最高、上がった後のアイスも最高。スジャータのアイスはソフトクリームのようでソフトクリームではない。アイスだ。私はカップよりコーン派なのだが、めっきりコーンで出される機会が減ったのは残念だ。写真は必ずコーンなのに。しかし、コーンよりカップ派の方が実は多い(多分。私のリサーチ)。不思議だ。コーンの方が食べられるのだから格上!!
山はいいぞ。また行きたいな。今度は山小屋で一泊したい。風を感じにゆくのだ。

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