見出し画像

UberEatsバッグ床直置き問題について

 今日もおぞましい時事ネタ。見て気持ちの良いものではないので動画リンクは割愛。

(補足)今回の問題は、ラーメン屋の配達を受け取る際、カバンを壁に押し付け持つのではなく床に置いてほしいとの店側の要望を、UberEats配達員が見下されたと感じて断り配達をキャンセルしたもの。その後、口論となり店側の暴力的なシーンが動画としてテレビ放映され、本人もtwitter上で投稿している。

 結論から書くと、私は食べる側であると共に、作る側でもあり、リザーブする側でもあり、掃除する側でもあり、後片付けする側でもあるのでお店側が取った態度は非常に良く分かる。
 料理とは得てして完成した瞬間から劣化が始まるもので、分かりやすい例で言うと「お鮨」や、「外は熱々、中は程好い火入れの焼き物」などだろうか。少し細かく補足する、

お鮨に関しては、
 ・シャリの温度が下がる。
 ・ネタや醤油が渇く。
 ・海苔などは湿気を吸って触感や香りを失う。
焼き物については、
 ・冷める、冷めたことにより触感が変わる。
 ・逆に中は火がとおり過ぎる。
 ・ドリップによりソースの味が変わる。

 など劣化する要因を挙げればキリがないほどだ(細かく書くとまだまだある。)。故にinstagram等への投稿のために、飲食店で撮影する行為が大嫌いなのだが、その話は今回関係ないので省略する。劣化したお料理はもはや全くの別物と言ってよい「物体」であり、だからこそ作り置きではなくライブで提供する価値があるものとも言える。
 今回のラーメンの件についても同様で、提供までの時間が延びれば延びるほど麺が伸びる、スープが冷める、油が固まる、スープのテクスチャーが変わるなど作り手からすると頭がおかしくなる要素の詰め合わせだ。
 頭がおかしくなる原因も書いておく。食べ手にとっては、ラーメンなどで15分ほど(か?)、お鮨で数秒ほどの食事時間だろうが、仕込みが9割以上を占める作り手にとっては数時間から数日をかけて作り上げた一品になる。それが故に、出来るだけ最高の状態で提供し食べていただきたいと考えるのは至極当然の帰結だ。
 フランス料理などでは、その一分一秒を惜しむがゆえに数人で一皿を盛り付ける、一度その熱量を目の当たりにしたならば、皿を疎かにすることなど到底できない。想像することさえ難しいのならば、一度YOUTUBEででも見ることをオススメする。あるいは豚骨を煮込めばよい。
 もちろん心地良く食事していただきたいがために、料理人はこのようなことを決して口にはしない。では何故ここまでクドクド長たらしい文章を書いたのかと言うと、端的に述べるならば「金を払っているのだから何をしてもよい。」という意見が散見されるからだ。おそらく目に見えないがゆえに想像ができないのだろう、料理人がその一皿にかけた背景を慮れば決して無下には扱えないはずだ。しかし、それでもなお足蹴に出来る人がいるならば、それは「人の努力を意図も容易く蔑ろにできる人」ということになる。そんな人間にまで果たして配慮は必要なのだろうか。大脱線。

海苔巻き



 今回の騒動においての店側と配達員の主張(と予想されるもの、直接的に断言はされていないのであくまで推測)、さらにオブザーバーの意見を列挙してみる。

お店側、
 ・壁が汚れるのでカバンを床に置いてほしい。
 ・正当な理由なく配達を拒否するのは許せない。
配達員側、
 ・カバンが汚れるので床には置きたくない。
 ・壁が汚れるので床に置いてほしいと言われたときの態度が馬鹿にして見下しているように感じた。
 ・上記の理由により、配達をキャンセルした。
オブザーバー
 ・暴力、または暴力に準ずる行為は決して許せない。
 ・配達員側は正当な権利を行使しただけ。
 ・配達をキャンセルしようが再配達員が来るので構わないだろう。
 ・配達が少し遅れる程度の話し。
 ・所詮ラーメン
 ・所詮UberEats、安いサービスにクオリティを求めるな。

 一つ一つ見ていく。
 まず壁が汚れるので床に置いてほしいという意見には納得がいく。特に壁は塗装の剥げや傷、つまるところ内観の損失を招くので許容しがたいだろう。さらにそれを理由として、配達を拒否することが許せないのも理解できる。上記で長々書いたように、たとえラーメンであろうと、「一皿」が軽視されていい理由にはならない、もちろん味の劣化はお店の直接の評価、つまり経済的な打撃をも意味する。この配達員はお店の財布に手を突っ込んだ自覚を持たなければならない。

 次にカバンが汚れるので床には置きたくないという配達員側の意見を見ていく。配達員はカバンを清潔に保つ義務(義務なのか知らんけど...)があるので、一定理はあるように思えるが、それを以て配達を拒否する理由になるとは到底思えない。何故なら、それだけではカバンの中に収められる「皿」には一切の影響がないからだ、というかそのためのカバンである。つまるところ、この拒否はカバンの使命・役目から逸脱した、カバンにつく傷や底面の汚れが嫌だという利己的な理由によるものとしか言えない。
 さらに配達員は馬鹿にして見下されている感じがしたと証言しているが、それならば何故そのやり取りを動画で発信しないのか(twitterでは店側が詰め寄る意図的に切り抜かれたシーンのみ発信)。ドライブレコーダー代わりにボディカメラに映っていたとあるので、馬鹿にして見下される様子が映っているはずなのだが、見事にそのシーンは切り抜かれている。これらを踏まえた利己的な拒否事由は、仕事の真っ当性やUberEatsが掲げる会社の役目に適当と言えるのだろうか、そして配達を拒否する正当な理由と言えるのだろうか。

 最後に、オブザーバーの意見を見ていく。
 暴力、暴力に準ずる行為は決して許されないというもの、これには理がある。私自身、どんな理由があれど暴力は大嫌いだ。しかし、しかしだ、程度にもよるのだが、お店でリザーブする人が皿を傾けてソースが横に少し流れただけで(零れてはいない)、ぶっ飛ばされ、どつかれるのも事実だ。そしてその理由は、その一皿に込めた熱量を無駄にしただけでなく、お店への経済的な損失、つまり間接的に人のお金を盗んだからと言っても過言ではない。本来、従業員全員で被るその経済的損失は、ほとんどの場合オーナーが被ってくれる(潰れなければだけど!)。どんな暴力行為も許されないと考えるし、その建前も理解できるが、状況がそれを許さないのも事実だ。
 たかが皿を運ぶだけの仕事、されど皿を運ぶ仕事、それがお金を稼ぐということであり、仕事をするということである。

 配達員側のキャンセルに正当性がないことは上に書いたとおりであるが、それでも尚、どんな理由であれキャンセルする権利があるとする主張もあるだろう。ただ、UberEats側がそれを決して是としていないのは、その権利(正確には決して権利ではない)を行使した配達員への依頼が激減することを見ても明らかだ。結局、最後は配達員がバックれてしまえば元も子もないのだが、そんな「誰かが権利と言い張る別の何か」をここで論じても仕方ないので省略する。

 配達をキャンセルしようが再配達員が来るので構わないだろう、配達が少し遅れる程度の話しという意見も上記に述べたとおりだ。劣化したラーメンを美味しくなく食べて誰が得をするのだろうか。カバンか?

 所詮ラーメン、されどラーメン。誰だって自分の仕事を軽くぞんざいに扱われたり、けなされたら嫌だろうに。

 最後に、所詮UberEats、安いサービスにクオリティを求めるなというもの。これはサービスを受ける側、つまり食べ手が言っている分には一向にかまわない、お金を払う側が対価と対価に見合う仕事かを個人で判決するのは全くもって自由だ。
 しかし、こと仕事をする側、今回で言うと店側と配達員側がそれを言うのは違う(言ってないけど。)。一見、店側もUberEatsの利用者のように見えるが、食べ手が消費者であることを考えると、店とUberEatsは料理人とリザーバーの関係のように共同で仕事をしている関係と言える。
 仕事をする側が「安いサービスにクオリティを求めるな。」と主張するのは滑稽で仕方がない。これはつまるところ、仕事と仕事の対価を自己の中で設定して行使しているのだ。仕事とは会社が期待した働きとその対価を、会社と従業員が両者の合意のもと契約して履行するものだ、決して自己の中で設定するものではない(会社代表除く。)。当たり前だがクオリティを求めない会社など存在しないだろう、つまり仕事と仕事の対価を自己の中で設定することは、往々にして働かずにお金を貰いたい人がやりがちな行為だ(この場合は、不労所得者や株主を指すのではなく、完全な給料泥棒を指す。)。
 この言葉を仕事をする側が言う場合、働かずにお金を貰いたい人が免罪符として使っているとしか思えない。ダメな公●員見てれば分かるっしょ。
 そして誰かに投げかける言葉でもない。それこそお金を払う側が個人で判断することであって、赤の他人がああすべきこうすべきと言うのはお門違いだ。作り手の気持ちはどうであれ、配達員が転んで中身がぐちゃぐちゃになっていたとしても、許せる人は許せるのだから。


最後!
こんなことを諸々考えて行きついた先は、
料理は商売ではなく、「家で自分で全部やる」でした、トホホ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?