正気と狂気のせめぎ合い
ボディビル界隈って「狂気」だの「執念」だの、気が狂うまでトレーニングに励む様を凄い美化し賞賛する傾向にあるんですね。JBBFという日本最大規模のボディビル団体のトップ選手、合戸孝二選手の異名は「狂気の男」ですし、もう界隈から狂うことを推奨されているようなもんです。
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これって、躁鬱だのキチガイには非常に都合がよくて、街中で白目むいて発狂してたら即逮捕ですが、ジムでバーベルを握りながらだと白目むいて発狂してても許される。なんなら「凄い追い込みだな……」とすら思ってもらえるかもしれない。こんな環境だと、もはや狂気、狂っていることをカッコいいことだと思って自ら狂気を演出するようになるんですよ。こうなるとだんだん社会通念から外れた行動をするようになる。前作で話した暴力性も「こんな喧嘩する俺、狂気的でカッコいい！」という気持ちも少なからずありました。病気だと言われることが気持ちよかった。
こう、幼少期に頭がおかしい、キチガイ等の言葉を、まぁいじめでも虐待でも浴びていた人間って、自分の精神状態に何かしらの後ろめたさを抱えてる人が多いんじゃないかなって思うんです。
でもこの世界では、そのキチガイ、言葉を治すなら「狂気」も褒められるものになる。俺は間違ってなかったんだ！とどんどん狂気に飲み込まれていって、最初はカッコいいからと演出していた狂気に飲み込まれていくんです。Twitterの筋トレ界隈とか見てたら、そういう人多いように思います。まぁそれで強くなれるんなら構わないって人の方が多いと思いますが。
精神障害者が太宰治にハマるのと一緒ですね。躁鬱と境界性人格障害を持って、死ぬ死ぬと、ワイは人間失格なんやー！と、喚き散らかして大衆から拍手喝采を浴びている彼を見ると、死ぬ死ぬと喚き散らかしている自分のことを肯定されている気分になって楽になれる。クズであったり堕落していることも、太宰のおかげでアイデンティティにすらできて、自分が死ぬ死ぬということもどこか愛らしく感じてきて、より精神疾患に拍車がかかる。希死念慮を抱くことで良い思慮が生まれ、それが創作に繋がるんなら、まぁ別に良いだろうと思ってる精神疾患持ちは多いように思います。
小説家ってのは自殺しまくりで、昭和文学を代表する作家、三島だの太宰だの川端だの芥川だの、もう自殺してない小説家のことを思い浮かべる方が難しいです。これは僕が強い希死念慮を抱えていて、自然とそういう作風の作家ばかり好んで読んでいるからかも知れませんが、それでも他の界隈に比べたら文学というのは自殺者が多い。キチガイは筋トレと文学をやって、せいせいと自殺しろってことですな(！？)
現代の創作物で言えば浅野いにお先生の「おやすみプンプン」とかもその類ですね。虐待されてて、境界性人格障害丸出しの田中愛子がめっちゃ可愛く描写されてる作品。あれ読んだら精神疾患女性は自身を肯定されてるような気分になるでしょうね。我々が狂気のビルダーに憧れてスクワットを5時間するように、精神疾患女性は愛子ちゃんに憧れて男の目玉をフォークで抉るんです。
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だいぶ話が逸れましたが、我々精神障害者が自殺せず、または人に刃物を向けずにこれからも楽しくやっていくには、「狂気」「希死念慮」から卒業する必要があるのだと思います。これらは確かに火力は強いし強いモチベーションになるのですが、待ってるのは破滅のみです。これらをモチベーションにしていた友人は自殺してしまいました。
太く短く生きるんだと、刹那的に儚く生きるんだと、三島由紀夫の燃え盛る金閣寺のように、永遠ではないものに美しさを感じる、無駄に長く生きるのなら、一瞬でも美しく燃え盛って朽ち果ててやると、調子がいい時はいくらでもそれらしいこと言えるんです。私にはそれらの言葉を言い続ける才能がなかった。これらの言葉をモチベーションに頑張ってる人を貶す意図は全くなくて、逆にそういう人たちを見ていたら心が熱く激るんです。でも私にそんな生き方をする才能は無かった。
僕は躁鬱で、一定期間で鬱がきて強制的に休養がくるんですよ。それで何とか自殺せず、人を殺さず済んでますが、ずっと躁で突っ走ってたら確実に死ぬか殺すかしてると思います。
「狂気」だの「希死念慮」以外のモチベーションを何とか模索していかなければなりません。