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「Free!」FS前編感想-“ただの人”になってゆく七瀬遙

劇場版 Free!-the Final Stroke-前編 、観ました。

とんでもねーところで終わってしまった。

嘘だろ遙。

あんなに人間臭い遙、初めて見た。

お前、本当にあの遙なのか?

優しくて相思相愛な幼馴染、可愛い後輩、ともに競い高め合うライバル、水泳という絆で結ばれた仲間がいて、人を惹きつけるカリスマ性をもち、手先も器用でなんでもできる、

純粋なまでに水にも水に関わる仲間にも愛され続けてきた天才・七瀬遙なのか?

泳ぐことが大好きで、どこまでも向こう見ずなまでにフリーだった遙なのか?

思えば、途中から様子がおかしかった。

十で神童、十五で天才、二十歳過ぎればただの人

アニメ「Free!」1期の最初に遙が言っていたことわざ。

十で神童、十五で天才、二十歳過ぎればただの人

今回のFSでは、これを意識した台詞が多かった。

「神童か、ただの人か」

1期の冒頭では「あぁ、早くただの人になりてぇ」と生意気に呟いていた遙だが、今はその“ただの人”になることに恐れている。

この祖母から教えてもらったことわざが、いつの間にか遙の中で呪い的なものに化けてしまっているのだ。

なんでそんな気にするの!?

二十歳過ぎたら、もう何者にもなれないつまらない人間になるとでも思ってるのか?

30歳、40歳、50歳だろうと、才能を開花させ人々を感動させる力をもつ人なんてこの世にたくさんいるのに。

例えば作家でいうと、夏目漱石は38歳の時に「吾輩(わがはい)は猫である」でデビューしたし、やなせたかしは「アンパンマン」を描き始めたのは50代の時。

年齢なんて関係ない!!

…と思うのだが、「Free!」はスポーツの世界の話。

芸術とは違い、身体の衰えというものが密接に関連してくる。

スポーツをしている人間はスポーツを全くしない人間とまた意識や考え方が違うのだろう。

気持ちに身体が追いついておらず、フラフラの状態で階段から落っこちた遙は見ていられなかった。

郁弥が素早くキャッチしなかったらどうなっていたことか…!!

何してんだよ遙!!

遙は負けた方がよかったのかも

もしかしたら、遙は予選に落ちた方がよかったのかもしれない。

世界大会で遙・凛・郁弥は、遙だけが予選通過し、凛・郁弥は予選落ちした。

負けた凛・郁弥は傷の舐め合いをし、結果得るものは確実にあった。

自分の弱さを肯定し分析し、未来へ進むために重要な選択をした。

しかし遙は未来が一切見えていない。

これは七瀬遙が天才だったからこその弱さ。

あんなに「捨てたくない」と言っていた遙が「捨てる」と決めた。

何を捨てようというのか。

それを捨てた先の未来は、遙が見たかった景色なのか。

本物の“フリー”なのか。

「たくさんの荷物が人生を豊かにさせるんだよ。ま、その荷物に時として縛られるんだけどね」

ここでミハイルの台詞が深く刺さる。

七瀬遙が“ただの人”へ

もうこの時点で、遙は神童でも天才でもなく、“ただの人”にしか見えない。

天才すぎる七瀬遙に僕自身は今まで全く共感できなかったが(唯一共感できたのは水の中の“フリー”で、以前書いた記事参照)

“ただの人”となった彼に僕は深く感情移入できてしまった。

きっと「Free!」は、七瀬遙が“ただの人”になるまでの物語。

“ただの人”になった彼はその先で何を見つけるのか?という物語なのだろう。

その見つけたものが、彼自身の“フリー”に繋がる。

金城楓=“仲間に恵まれなかった七瀬遙”

3期から登場した金城楓という男。

今までイマイチどんなキャラか掴めなくて人間らしさを失ったキャラなんだと思っていたが、今回の映画で「彼もちゃんと人間なんだな」と思った。

まさか水泳始めたきっかけが日和だったとは。

きっと金城は、仲間に恵まれた遙とは対照的なキャラ、

つまり“仲間に恵まれなかった七瀬遙”なのだろう。

遙のことも、遙と凛との関係も心配だし、金城と東さんの関係も心配。アルベルトのメンタルも心配。

もう全部心配。

まぁ遙があぁなってしまったが、凛は以前も書いたように「Free!」の中でも一番成長したキャラだと思うし遙の弱さを理解し受け止められる器量もあるはずなので、大丈夫だと信じたい。

最初の学祭や後半の忘年会での彼らの微笑ましいやり取りが無かったら心が折れていた…

(↓冒頭10分が観れます)

旭スペシャルがどんなのかが気になる。

あと凛のメイド姿や、郁弥の恥ずかしい(?)格好も気になる。

貴澄って水泳やってるわけでもないのに、みんなとずーっと仲良いのすごいな。

あのコミュ力が死ぬほど羨ましい。

繋がりとフリー

アニメ3期8話で語っていたヒーローについて。

「遙をヒーローとして憧れていた郁弥も、実は誰かにとってのヒーローである」という話があった。

誰かにとってのヒーローも、また他の誰かをヒーローとして見ている。

影響し合い刺激し合い高め合う。

つまり誰もがヒーローであり、誰もがヒーローに救われているのである。

「Free!」は誰かが無意識に誰かの影響を与え、その誰かがまた他の誰から影響を与え…という人と人の繋がりや、

過去→今→未来の繋がりがテーマとなっている。

その誰かが突然目の前からいなくなることもあるが、続けていたらきっとまた出会えるし、二度と会えなくても影響はずっと受け続けるし(凛の父親や金城の兄貴?のように)、誰かに影響を与え続けることもできるんだから、どうか未来を見続けてほしい。

そこで彼らだけの“フリー”を見つけてほしい、と願わずにはいられない。

後編を今週中にも観に行こうと思う。

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