見出し画像

#20 - 間接的な知識の研修

 私自身もそうでしたが、SEという職種についた多くの人は、新しいITスキルや手法、資格などには敏感に反応して自己投資だったり社内研修を利用したりしますが、会社の歴史、契約の種類、契約書の内容、会社内の各種手続きなどは必要最低限の知識にしかアクセスしないように思います。しかし、ある程度会社の仕組みや世の中の仕組みは知っておく必要があると感じ、強制ではないけど「知っておくと得をする知識」程度の研修を作りました。

 SEとして活動している社員に対し、契約の種類とか、社内プロセスとか、給与の話などの話をしようかなと考えました。SEとしては、お客様の要望に沿ったシステムを構築するのがメインの仕事ではありますが、会社の中で仕事をする以上、会社として成り立っている色々なプロセスやお客様との契約の内容などをスキルとして身につけておくことが重要だと考えたのです。

 そのためには、会社の背景と歴史、会社内で使えるツール、アウトソーシングとかシステム・インテグレーションの違いにはじまって、請負契約、準委任契約の違い、基本契約と個別契約の使い分け、プロジェクトの見積もりから、受注して開発していく過程の社内レビューの意味と必要性、協力会社への発注、売り上げとプロジェクトに必要なコストの関係、給与に関する説明、さらには退職金に対する説明などを複数回の研修として仕立てる必要がありました。

 自分自身が新人の頃を思い返し、普通に会話されている内容が分からないなと思っていたり、会社のプロセスや契約は営業に任せておけばいいのかもと思っていたことが自分の身に降りかかって焦ったことを思い出して資料を作成しました。まとまった時間をとっての説明会のような研修体系ではなく、1時間で話できる内容に分けてシナリオを作り、全部にエントリーしてもいいし、知らない部分のみエントリーしてもいいような研修に仕立て上げました。

 元々は、キャリア入社の場合、社内プロセスなどの説明がほとんどないので仕事をする上で効率が悪く困っているという声が社員から上がってきたことに対応するために検討したのですが、新人であっても全てを教えられているわけではないなということと、中堅くらいのポジションにいる社員に対しても最新情報を伝えた方がいいのではと考えて、全社員対象の研修という構成になりました。

 私自身が退職に向けて、業務引き継ぎを少しづつ実施していたということもあり、少しずつ時間が取れるようになった時に研修資料を作成し、退職する前の2年間の間で研修を実施しました。おかげで私にとっては、普段話をすることがない他部門の社員の顔を見ながら話ができたことが大きな成果だったかもしれません。

 過去を振り返るとIT業界のテクノロジーの進歩や考え方、利用するソフトなど凄まじく速く進化してきています。その中で活動するSEやPMは日々新しいことを学ぶ必要があり、プレッシャーもかなりあると思います。しかし、いつかは若いSEにポジションを譲り、経験を教えていく時が訪れます。その際に、所属している会社の背景や会社の中のプロセスがなぜ必要なのか、作られた意味は何なのか、どうして内容が変化したのかなどを知るということは、ただの面倒な事務処理ではなく健全な会社の中で働く環境の維持に必要であるということを認識しておく必要があると思います。

☆ ☆ ☆

 シリーズで書いてきた「システムズ・エンジニア時代の回顧録」SEとして考えてきたことをこの回で終了したいと思います。最後の方は、SEというより管理職になった後の回顧録となってしまいましたこと、ご了承ください。

よろしければサポートをお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。