【No.17】お客様は先生@こうならいいなサラリーマン劇場
サラリーマンの世界で起きているかもしれないことをドラマ風に綴ってみたいとおもいます。内容は架空の話ですが、思い当たることがあれば要注意ですよ。それから、この劇場の結末は「こうならいいな」という内容で終わります。なので、現実界とは少し違うかもしれません😊
それでは、幕を開けてみることにしましょう。
キーワード 初めての仕事、環境、指示、放任
ここはお客様のシステムを請け負って開発する会社である。お客様の業種はさまざまで、今回新人Aがアサインされたのは半導体業界の前工程の管理システム刷新のプロジェクトだった。新人Aは半導体どころか生産管理の知識すらない。その状態でお客様とどんなシステムに刷新していくかのデザインをする局面から参加することになったのだ。最もリードするのは先輩なのでその方法を見て知識を付けることに専念するつもりだ。
お客様サイトにて、先輩がお客様とシステムの話をしているのを新人Aは横で聞き必死にメモしていた。
「後工程は別システムですが、適正値の範囲の半導体ができる歩留まり率を上げることが重要と考えていますが、後工程からのフィードバックはどうやって取り込まれていますか」
「ああ、後工程は別工場にウェハーを搬送して担当してもらっているけれど、ウェハーごとに管理番号が付いていてその単位で正常な半導体の率をフィードバックしてもらっているよ。今のところは正常値の範囲で出来上がる率は悪くはないと思っている。それに多少の範囲外の製品はスポット市場に流れるからそれほど無駄はでていないはずだ」
新人Aは会話の内容が全く理解できなかった。大体前工程と後工程の違いすら分かっていなかったのだから。そこで、先輩に聞いてみた。
「先輩、先ほど会話されていた内容、さっぱりわからないんですけど」
「最初は誰でもそうだよ。黙って聞いていて自分で調べるなりして理解するように努力しなさい」
新人Aはそれ以上聞くことができなくなり、時間だけが過ぎていった。プログラミングの段階になると仕様書が出来上がるので作ることはできるようになりプロジェクトにも貢献できているつもりになったので、最初の頃の業務の話のことは忘れ去ってしまった。
一段落した後、同期の社員と愚痴のこぼしあいをしていた。
「この前さ、初めての仕事で半導体工場のシステムを担当したんだけと、業務が全くわからなくてさ。最初の局面ではできるだけ喋らないようにしていたよ」
「へー、そうなんだ。誰も教えてくれなかったの」
「先輩も自分で調べろっていうだけさ。教えてもらってないことはわかるわけないよな」
「そりゃそうだよ。どうやれば良いかぐらいは教えてくれないとわからないよな」
「あー、もっとちゃんと教えてくれる先輩の下で仕事したいなぁ」
ここはお客様のシステムを請け負って開発する会社である。お客様の業種はさまざまで、今回新人Aがアサインされたのは半導体業界の前工程の管理システム刷新のプロジェクトだった。新人Aは半導体どころか生産管理の知識すらない。その状態でお客様とどんなシステムに刷新していくかのデザインをする局面から参加することになったのだ。最もリードするのは先輩なのでその方法を見て知識を付けることに専念するつもりだ。
ただ、新人Aは半導体業務に対する基礎知識が全くないことを認識していたので、事前に先輩に相談して先輩からのアドバイスをもらっていた。
「大型書店にいけば業務概要を説明した本を売ってるから、それである程度知識を得ておくことが一番手っ取り早いかな。もちろん研修もあるけど今回は日程が合わないかもしれないね」
新人Aは書店に駆け込み、PHPなどから出ている業界の業務概要を解説している入門書を購入して事前に読んだ。そのことでお客様特有ではなく一般知識としての半導体工場の業務をおおよそ理解することができた。そして、先輩と共にお客様との会議に参加した。
新人Aは先輩とお客様の話をメモしながら理解しようと必死になった。
「後工程は別システムですが、適正値の範囲の半導体ができる歩留まり率を上げることが重要と考えていますが、後工程からのフィードバックはどうやって取り込まれていますか」
「ああ、後工程は別工場にウェハーを搬送して担当してもらっているけれど、ウェハーごとに管理番号が付いていてその単位で正常な半導体の率をフィードバックしてもらっているよ。今のところは正常値の範囲で出来上がる率は悪くはないと思っている。それに多少の範囲外の製品はスポット市場に流れるからそれほど無駄はでていないはずだ」
新人Aは、歩留まりの話の時に出ていたウェハーごとの管理番号が気になり、確認した。
「すみません、一つだけ確認させてください。ウェハーごとの管理番号のコード内容と採番のタイミングが記述されている資料はどこりありますか」
「おや、新人さんなのに多少の知識をつけてきているようですね。コードは共通事項説明書の中のコード一覧からリンクされているはずだから確認してください」
新人Aは資料を見ながら確認し、先輩たちがデザインしている内容も見ながらこのお客様特有の業務を理解できるようになっていた。それは一般的な業務概要を事前に把握できていたことが大きかった。初めてのプロジェクト参加にも関わらず新人Aは知識を習得することができた。
お客様も気にかけてくれるようになり、直接質問することも快く対応してくれるようになり、新人Aにとってはお客様が先生代わりとなった。
プロジェクトも終わり、同僚と話をしていた。
「今回は初めてのプロジェクトで緊張したけどなんとか貢献できたよ」
「へーすごいな、業務とかわかんなかったんじゃないか」
「そうなんだ、だから先輩に聞いて最初に本屋に行って業務概要の本を探して読んだんだよ。半日もかからないで読めるくらいのもので十分に役になってさ。お客様とも距離が縮んだんだ。業務の話ができるから」
「へー、すごいな。俺は、ぼーっと先輩の横で見てただけだから業務知識は全くついてないよ」
「担当する業務の概要は事前に学習しておく方が絶対いいよ。お前も次はそうしてみろよ」
「わかった、アサインが決まったら即書店だな、OK」
いかがですか。あくまでも一例ではありますが、事前準備をせずに参加するケースとそうでないケースの違いは何事にも明らかな差が出るものです。それに、お客様の業務はお客様が一番ご存じです。だったら、一般的なこととの差をお客様に教えてもらうことがいちばんの近道だと思いませんか。それは案外お客様は一般的なことを知識として習得していないことも多くあります。自社の業務を知っていれば良いので、一般的なことを学んでいないケースもあるのです。そんな時は、より良い議論に発展させることもできそうですよね。
☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。
🌿松浦照葉の販売中の電子書籍一覧
🌿松浦照葉のプロフィール
🌿松浦照葉の毎日更新掲示板
よろしければサポートをお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。