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#15 - プロジェクト・オーナーとしての活動

 ライン(部下のいる管理職)になると、プロジェクトに対して責任を持つPMとは別にラインとして管理するため、プロジェクト・オーナーという役割を担うことがありました。私も、いくつかのプロジェクト・オーナーを担当したことがありましたが、そのうちの一つで、プロジェクトの途中から担当した経験を紹介したいと思います。

 プロジェクトは最初から最後まで問題なく進むことは稀だとは思いますが、お客様との関係が悪化してしまうと、お互いの主張がぶつかってしまい、どちらが対応コストを負担すべきか、ということで折り合いがつかないことが発生することもあります。多くは、PMのみではなく、PMの所属長や上司を含め、営業とともに解決に当たります。プロジェクト・オーナーという役割は、そのような場合に、お客様との交渉に積極的に当たるわけですが日頃からお客様とのリレーションを維持するという役割も含まれています。リレーション次第で問題に対する対応も少なからず変わるものです。

 私がオーナーとして担当したプロジェクトは、前任者からの引き継ぎ案件で既に開発プロジェクトは終盤で、すでにテスト局面に入っていましたが、バグなどが多く発生し、なかなかテストの終了が見えない状況になっていました。PMをはじめプロジェクトメンバーは懸命にテストと修正を実施していましたが、日々発生する問題と変更は、バックログとして積み上がる状態が続き、メンバーのモチベーションも上がらない状態が継続していました。お客様も予算的にギリギリまで捻出していたということもあり、追加の予算確保がかなり厳しい状況に置かれていたようです。

 プロジェクトでは、定期的な確認のためステアリングコミッティーを開催するケースはよくありますが、私が担当したお客様では、毎日確認しないと対応が遅れてしまうリスクがあるため、日々、問題管理と変更管理の一環として発生したIssueに対し、コスト負担はどちらが担うべきか、ということを検討する会議を実施していました。

 日々実施される会議では、発生した問題に対して見積もった修正工数や仕様変更依頼に対する見積もった工数をどちらに責任があるかということを判断し、お客様負担とプロジェクトでの負担を分別し現場に戻し、対応作業を実施してもらうということを実施していました。もちろん、現場としては、プロジェクトチームの責任であると判断されたIssueに対しては、モチベーションが上がらず、更なる問題を発生させてしまう可能性もありました。したがって、プロジェクト・オーナーとしては、なんとか日々のお客様との確認の場でプロジェクトチームの努力を理解してもらうことが最も重要なミッションと感じられました。

 ある日の確認会議の時、いくつかの問題として発見された項目が議題となり一つ一つ確認をしていきました。その際、確かにプロジェクトとしてプログラムのバグだろうという項目がでました。普通に考えれば、プロジェクトチームの責任で修正しますという内容なのですが、その時のケースはお客様と合意したテスト内容では発生しない問題だったようで、独自に担当者が確認して見出した問題だったのです。つまり、担当者が、ちょっとおかしいと感じてテストケースを追加して発見したミスでした。お客様は当然のように、これは「そちらのミスですよね」と切り出されたので、元々の仕様の解釈の齟齬から始まった結果の問題発生であるということと、かなり強引ではありましたが、テストケース自体はお客様と合意した内容以上のことを実施したという事実を踏まえ、交渉を開始しました。

 交渉の際に重要視したのは、有償化してもらうことより日々の作業を頑張ってくれているメンバーのモチベーションでした。メンバーが言われたことしかやらないていう状態になってしまうと、気づける問題も見落としてしまう可能性が高くなるとともに、品質も低下して行きます。そうではなく、メンバー全員がなんとか効率化によって時間を捻出し、できる限りの努力をしてくれることが、結果的にはメンバーのスキル向上とともにお客様満足度も向上します。

 指示された内容のみではなく、自らが「ここまで実施しておくべき内容」として活動してくれた結果をプロジェクトの上層部やお客様がどう捉えたのかということをお客様にも伝えたかったので、その手段として我々は「有償」にしていただくという交渉をしました。他にも問題が発生していましたが、メンバーが自ら気付いて見つけた問題に対しては、メンバーのモチベーションを維持するためにも、有償の修正案件としてくださいとお願いをしました。

 お客様もそんなことを言われると思っていなかったようで、びっくりした顔をされていましたが、最終的にはお客様にも納得していただきました。熱意が伝わったのだと思います。確かに、契約書に沿った交渉は大切ですが、お互いに「人」を介して交渉し構築するわけなので気持ちよく仕事をする環境にすることが結果として品質につながるものだと信じています。

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松浦 照葉 (てりは)
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