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毎日がPerfect Day

2024年の幕開けは言うまでもなく誰もが暗い気持ちになったお正月だった。
全然なぐさめにならないけれど日本だけではない。
イスラエルによるパレスチナ攻撃に心痛めているロンドンの友人は
「メリークリスマス、ハッピーニューイヤーは私には言わないで!」と
SNSに投稿していた。

元旦の大地震を知ったのは
88歳の母と娘と3人でヴィム・ヴェンダース監督の新作、
カンヌ映画祭で主演の役所広司が最優秀男優賞を受賞したことでも
話題になった「Perfect Days」を観終わって映画館を出たところだった。

(私のインスタをフォローして下さってる方はお気付きかも知れませんが)
年末にもこの映画一人で観に行った。
1週間と置かずにまた観に行ったのは母と一緒に観たかったからだ。

年末に92歳の父が入院し、もう自宅には帰れないかも知れないと告げられ
母は初めて一人暮らしになった。
私は私で24年間続いてきた結婚のことで吐きたくなるくらい悩んでいる。
娘はそんな大人の悩みそっちのけで恋している。
それぞれが色んな想いを抱えた年末年始だった。

「Perfect Days」は禅そのものマインドフルネスそのものを
映画にしたような作品だ。
ヴィム・ヴェンダース監督の小津安二郎映画への敬愛の真骨頂だ。
清貧の生活を孤独に無口に送る公衆トイレの清掃員の役所広司が
心を込めて公衆トイレ清掃の仕事に勤しみ、木漏れ日や朝日や植物を愛し
人々を愛し世界を愛して、毎日を大切に生きる日常を淡々と描く。
彼がその人生で何を経験してきたかは語られない。
悲しみや辛さをたくさん抱えて生きていることだけが
彼の喜怒哀楽の表情から窺い知ることができる。
(それにしても台詞の少ないこと!)
それでも「今は今」と単調な日常を愛し生きる。

ブッダも言ったとおりこの世は苦しみで満ちているのだ。
天災も病気も死も避けられない。
人と人が愛し合えば必ず苦しみが始まる。
出会いがあれば別れが必ず訪れる。
人類の歴史を見れば分かるようにおそらく戦争も避けられないのだ。
そして大抵の場合、多分誰も悪くないのだ。

常に自然災害に見舞われ二度の原爆投下も経験し
ブッダの諦念が精神性に深く染み込んだ日本人は
こんな時にその行動で海外の人から驚かれることが多い。
東日本大震災の時にもその冷静な態度や公共道徳心の高さは
海外でも絶賛されたし、今回の航空事故でもその客室乗務員と
乗客の対応は目覚ましいものがあったと早速報道された。

こんな時に誰かのせいにして恨んだり騒いだりしても仕方ない。
それよりも淡々と目の前にあることをこなしていくことが最善策だと
DNAレベルで日本人は悟っているのかも知れない。

どんな辛い苦しい夜も必ず明け新しい朝が来ることを知っているのだ。
ドアを開いて目に飛び込む朝の光は必ず美しい。
世界はその光が創り出す美しい木漏れ日で満ち満ちている。
それを知っている限り希望は捨てない。





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