見出し画像

子どもたちからの表現(プレゼント)

「コンパス教えてくれてありがとう」(Kさん)

Kさんはとても笑い上戸で、ささいなことでも笑い出し、なかなか止まらない感じで、毎回楽しく過ごしました。Kさんは、スケジュールの把握が課題にあがっていたので、私とは主に毎月のスケジュール作りをメインに取り組みました。お母さんをはじめ、学校や他の放課後デイサービスのスタッフ、相談支援事業所の担当の方とも情報を共有しながらスケジュールを把握して、毎月のカレンダーにカラフルな色わけをしながら、本人が予定を記入してきました。他にも聞き取りのワークや、漢字、九九の暗唱などの学習もしました。


そのKさんと学習する最後の日、「コンパスおしえてくれてありがとう!」と何度も書かれたお手紙をもらいました。コンパスの練習をしたのは2、3回くらいでしたが、円を描く練習をしたのがとても楽しかったようで、そういえば、お母さんにコンパスを買ってもらったようで筆箱の中に入れていました。
スケジュールの把握は大事だけれど、Kさんにとっては、コンパスの使い方を練習して、クルンと円が描けるようになったことが一番心に残るうれしいことだったこと、教えてもらいました。


確かに、コンパスってちょっと難しいけれど、きれいな円が描ける不思議な道具だね!ああ、せっかく筆箱に入っていたのに、もっともっとKさんと一緒に、コンパスで円を描けばよかったな〜。Kさんに教えてもらって、はじめてコンパスがそんなに楽しかったことを知りました。


「見るな!」(H君)

H君は計算プリントで30問中1問でも間違いがあると、イライラしてプリントをグチャグチャに丸めてしまうお子さんでした。ある日の個別学習の時間に、H君は自分の腕で私の視線をガードしながら、メモ帳の裏に何かを一生懸命に書き始めました。「何書いてるの?」と聞くと同時に「見るな!」とすごまれ、しばらくそっとしておくと、やがてメモを折りたたんで、また学習に戻ることができました。
その日の帰りにH君から無言で渡された折りたたんだメモには、なんと!先程の態度と表情からは全く想像できない文章が綴られていました!

画像1

H君、あのとき、こんな気持ちが湧いてきて、それを文章にしてくれていたんだね。宿題をめぐって大変なことになるとお母さんから聞いていたけど、家でもがんばりたいと思っていたんだね。
こんな気持ちでいるなんて、全くわかりませんでした!こちらこそ、あんなにトゲトゲした態度に、こんなに優しい気持ちを隠していること、文字で伝えてくれて本当にどうもありがとう!

「大学に行きたいです!」(M君)

M君は『名探偵コナン』と『ざんねんないきもの事典』が大好きです。自分の好きなことを話す時には、キラキラした目になるのが印象的でした。その反面、自分の気持ちを言葉にすることは難しいようで、困った顔になり言葉につまって「よくわかりません」というのが精一杯でした。
そこで、M君とは表現を課題に、あなうめ作文や身近な人にハガキやお手紙を書いたり、お母さんに電話をかける練習をしたりしました。毎回、学習することに意欲的で、いろんなことを吸収して、思いがけない言葉で気持ちを伝えてくれる場面が増えていきました。


そんなM君の卒業の日、3枚にわたるお手紙を頂きました。それだけでもとても驚いたのですが、その中に「高とうぶをそつぎょうしたら大学へいきたいです」と書いてあり、予想もしていなかった彼の表現に胸を打たれ、ファンファーレが響くような感動を覚えました。

画像2

M君、いろんな進路があります。ここにその一つを紹介しますね。
いつか大学で学びながら、青春時代を謳歌するM君をそっと覗いてみたいです。

                      (One to One 玉城 裕美子)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?