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西加奈子さん小説「i」

作者:西加奈子さん。1977年生まれ。カイロ・大阪育ち。
言わずと知れた人気小説作家さん。西さんの表紙は毎回ご自身で書かれています。印象派を思わすような絵もとっても素敵なのです!

<作品について>           「愛」についてとことんまで深堀りされた作品。主人公のアイはシリア生まれの養子。養父はアメリカ人、養母は日本人。個人としても十分に尊重され、何不自由なく育てられ、そして愛されている。アイはずっと恵まれた環境に罪悪感を覚えて生きている。なぜ自分が幸せな環境を手に入れてしまったのか、選ばれてしまったのか?世界の悲惨な出来事を見聞きするたびに、自分の環境とのギャップに苦しんでいる。アイが高校生になったころ父親の転勤で日本にやってくる。とことんまでデリケートになっているアイ。そんな罪悪感をまとったアイを救うたくさんの出来事とは‥‥

<感想>
西さんの小説は、誰に対してもとことんまで優しいと思う。「こんなことで辛いなんて思っちゃいけない。だってもっと大変な人もいるんだから…」と良く思ってた。世界では毎日毎日悲惨な事件が発生していて、幼い子も巻き込まれて命を落としている。私はどうだ?家があっておいしいものが食べられて子供も元気にそばにいる。なのにこんなちっぽけなことでうじうじ悩んでるなんて…と。
でも人の辛さって比較することができないし、感情は感情として自分で受け止めてあげることが、結果として他人の感情も受け入れることが出来るんだと思う。端から見て「裕福だから」「容姿が綺麗だから」って必ずしも幸せなのかってそれは分からない。その人自身にしか分からない辛さがあるのかもしれない。そんな境遇の人たちが「辛い」って言えない世の中もどうなのか。そこもまるごと受け入れてくれる作品で胸を打たれた。

「想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う」(本文引用)

想像=愛・思いやり だなと思った。人と人って親子であっても100%分かり合うことはできない。自分のことだって分からない。人は絶対的に孤独。それは間違いない。でも、自分のことであれ他人のことであれ想像すること、想いを寄せることって愛だなと。まずは自分の感情に寄り添って大事にすること。そこから他人・社会を思いやり想像すること。そんな風に一人ひとりが考えていければ、この世界ももっと愛のある世界になるのではないかな?なんてとてつもないスケールで考えてしまった。

<まとめ>
割とシリアスで読んでで辛くなるところもあったけど、最後のシーンで、その辛さもすべて回収してくれて、とても感動的な作品でした。

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