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今、自分はここにいる💪!

20数年前の昔話。少々お付き合いいただこう。

コロナウィルス感染における世界レベルでの対応により、オリンピックをはじめ、ありとあらゆるスポーツ大会、フェスティバル等が中止の判断を余儀なくされた。今、あらためてスポーツ文化が私たちに残しているもの、レガシィを考える。

時は20数年前へ。本格的に陸上競技を自らの道の一つとしたのが高校生の時。専門種目は中距離。中学時代はバスケットボールを愛し、そんな中に陸上競技を体育教師の半ば強引な勧めにより、スタートさせたのが始まりでもある。負けず嫌いの性格が功を奏したのか、気持ちは整わずの状態であったが、それなりの結果を残すに至った。しかし、まだまだ志し半ば、全国の頂点目指して、高校、大学と陸上競技を続け、現在は陸上競技の指導者としての日々を送っているのであるが。陸上競技が今の自分に何を残したのか?これまで自分が経験してきた陸上競技の一場面がいつも頭をよぎり、心を奮い立たせる。

自分の専門種目800m。それなりの結果を出していたため、各地域で選抜されるブロック合宿などにメンバーとして選出されていた。苦しい練習の毎日ではあったが、ともに目的と練習の苦しさ、勝つことの喜びを共有できる仲間との出逢いが何よりの宝物になっていた。優勝をねらって出場する大会。予選開始前のアップ。仲の良い仲間であるとともに、これから1枠の優勝をねらうライバルでもある。久しぶりの再開を楽しみながら、これまでの練習等を語り合う。このままの楽しいやり取りと、アットホームな雰囲気を残しながら、レースが進んでいく。いよいよ決勝の8名が決定する。これまで仲良くコミュニケーションを取りながらアップをしたり、最終コールを受けていた雰囲気から一転、決勝前で人通りが少なくなったアップ会場にも関わらず、話もせず、目も合わせない戦闘モードへ切り替わる。仲の良かった仲間から、一枠の優勝をねらう「敵」となる。そのまま8名の決勝レースがスタート。勝つためのそれぞれのレースビジョンを遂行し、自分が誰よりも速くゴールラインを通過することしか考えない。「いつ仕掛けるか!」自分の得意な勝ちパターンにレースを誘導したい。しかし、8名全員の勝ちパターンを全員が熟知している。「まだ脚は動くのか」「相手の状態は?」「仕掛けどころはいつか…」ギリギリの心理戦、乳酸との葛藤…極限状態の中。「今だ!!!」。最後の力を振り絞る。800mを専門にしてきたアスリートなら誰しもわかる共通用語、ラストの「削りあい」!とにかく相手よりも前に。考えていることは、そこしかない!「勝ちたい…」。なだれ込むようにゴールラインに飛び込む8名。死闘を繰り広げ、様々な想いを交錯させながら、8名が見つめる先は一つ。運命を分かつ電光掲示板…。栄冠を掴むのは? 順位確定。歓喜、悲しみ、緊張から解き放たれた安堵感を経て、8名全員が「敵」から「仲間」に戻る。悔しさもあるが、優勝者の努力を褒め称え、8名全員のこれまでの努力を認めあう。全員と握手し、肩を組む。そこは、すべてをわかりあった仲間へのリスペクトと「笑顔」しか存在しない、かけがえのない時間。

「あ~、今、自分はここにいる!」

私が陸上競技を愛し続ける理由がここにある。勝つために犠牲にしてきた時間、努力と工夫。迫り来る困難を指導者、仲間、そして自分の力で乗り越える。我慢、感謝、継続、支えあいなど、陸上競技から学ぶことはたくさんある。しかし、一生懸命に何かに打ち込むことでしか生まれない友情、研ぎ澄まされた感覚。自分の努力が認められる自尊感情の極み、自分の存在が誰かの役に立っている自己有用感の心地よさ、自分が自分らしく、大地を力強く踏みしめて立っているという実感。まさに自分が確かに、ここに存在していることの喜びを確認できる瞬間でもあった。この瞬間を何度も味わうために、走り続けてきた。現在は現役を退き、競技者から大会運営、指導ステージへ。

スポーツ文化のレガシィは、一生懸命の中から生まれる全世界の仲間とのつながり、そして、自分の確かな存在意義、ではないだろうか?コロナウィルス感染拡大のリスクを避けるため、全世界のスポーツ文化が足留めされている。しかし、スポーツにおいて自分の確かな存在意義を得たスポーツのスーパースターたちが、自分の得た全世界の仲間たちとともに、SNSを駆使し、いろんな発信をしてくれる。その発信に勇気をもらう。コロナウィルスによりスポーツ文化は止まった…?何を言うか、こんな危機でさえ、スポーツ文化は新しい何かを育んでいるのだと私は確信する。

世界的な危機が訪れたとき、スポーツは無力であると囁かれることがある。私の微力ながらの発信で些か恐縮ではあるが、確信してほしい。スポーツの力は偉大であり、時代を形作る紛れもない文化であると。

現役で活躍されているアスリートの皆さん、引退されたスーパースター、大会運営に携わる方々、指導者、未来ある子どもたち。さぁ、今、それぞれの立場でやれることをやりましょう。そして、力を合わせましょう。スポーツは決してとまらない!


ありがとうございます。