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常に自分自身を飽きさせないように。「感動」こそ、私の本づくりの原点

株式会社アスコム 編集局編集部 大西 志帆

【ワンパブ・オープン社内報】は、ワン・パブリッシングで働く人を通して、会社・雑誌・メディアが今どのような新しいことにチャレンジしているかをお伝えしている連載です。今回は、グループ会社の株式会社アスコムで編集として働く大西さんを取材しました。

【プロフィール】
大西 志帆(おおにし しほ)
新卒で建設会社に入社し、自治体向けの営業を担当。その後、編集職に興味を持ち、さまざまな場所で編集に関する知識と経験を積む。2022年アスコムに入社、書籍の編集業務に携わる。2024年3月末現在、自身の担当書籍は6冊。


建設会社勤務から編集者へ。異業種に飛び込んだ所以とは?

―新卒で入ったのは、建設系の会社なのですね。編集とはまったく違う業種なので驚きました。
 
もともと私は文系なのですが、就職活動ではむしろ理系の人が多い会社や業界に惹かれていました。自分が今まで接してこなかった世界に憧れがあって、せっかくなら仕事じゃないと関われないようなところで働きたいなと思っていて。
 
建設会社(プラントエンジニアリング会社)を選んだのは、合同説明会で鉄骨だらけのプラント(工場設備)の写真を見て、「なんてカッコイイんだ!」と感動したことがきっかけです。入社後は作業着とヘルメットで営業をしていました。いろいろな経験ができてすごく楽しかったですね。
 
―そこから、どういった経緯で編集のお仕事に転向されたのですか?
 
お客さんも理系の人ばかりの中、自分なりに勉強してさまざまな提案をして、それが少しずつ数字に結びついて……すごく充実していました。ですが、いつしかその状態に慣れてしまって、大きな数字の仕事が決まってもあまり心が動かなくなってしまったんです。会社も業務内容も一緒に働いていた人たちも大好きだったんですが、だからこそ、その状態はあまりよくないなと思っていました。ともすると、仕事を甘く見てしまうことにもなりかねないから。
 
そんなとき、ある編集者の方がやっていたオンラインサロンに入りまして、日々こんなに面白いことを考えて仕事をしている大人が世の中にいるんだ! とものすごい衝撃を受けたんです。ご縁あってそのオンラインサロンで少し編集のお手伝いをさせてもらうようになり、私もこんな仕事がしたいと思うようになりました。
 
―その後アスコムに入社し、仕事として編集業務に取り組むようになられたわけですが、入社前に感じていたことと何かギャップはありましたか?
 
入社前までいろいろな編集者の方から聞いていた「編集の世界」は真実でしたが、本を出す側になってみて初めて知った業務というのもたくさんありました。一冊の本を出すためにやらなくてはいけないこと、築き上げていかなくてはいけない関係性。そういったものを一つひとつ先輩に教わりながら、一緒に本づくりをしてくれる仲間を探しながら、今日まで来た感じです。

入社してからこれまでに5冊の本を担当しました。いずれも周りの人たちに力を借りながら作り上げてきたのですが、先日(3月28日)発売になったばかりの『文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。』(pato・著)という本が、本当に自分自身で企画を立てて、デザイナーさんをはじめ携わってもらう仲間を集めて、著者の方と二人三脚で作り上げた一冊です。

温めていた想いがついに形に。『文章で伝えるときいちばん大切なものは、感情である。』制作秘話

―そういった意味では、大西さんのデビュー作と言ってもいいかもしれませんね! どのような本なのですか? その本に込めた大西さんの想いと共に教えてください。
 
私がずっと「こんなふうに働きたいな」と思っていた通りに形にできた本だと思っています。本を読んでいるときって、自分と本に書いてあることの一対一じゃないですか。だから、結局読んでいる人の心を動かせなければいけないということを、憧れの編集者の方がおっしゃっていて。そのためには、強い何かを持っている著者さんと出会ったときに、その魅力を何倍にもして世の中に届けなくてはいけない。著者さんの魅力をいかに伝えるかが、私の仕事なのだと思っています。
 
今回の著者であるpatoさんとの出会いは、私がアスコムに入社して2か月後くらいでしょうか、当時のTwitter(現・X)でたまたまタイムラインに流れてきた記事を読んで、「こんなにも文章がうまい人が世の中にいるのか!」と衝撃を受けたこと。絶対にこの人の本を作りたい! と思いつつ、入社間もない自分にできるのかという葛藤もあって、すぐには連絡できなかったんです。自分の能力が足りないがために、著者さんの魅力が弱まって伝わることは一番良くないことだから。
 
でも、他の出版社の方に見つかってしまったらどうしよう(もう十分有名な方だったのですが。笑)、早く自分が成長しなくては、とすごく焦っていました。そのまま2か月くらい悶々としていたんですが、やっぱり、patoさんは私が今まで読んだ中で確実に一番文章がうまい人だと確信しまして、何の繋がりもないところから突然連絡をしました。
 
―そこからは、とんとん拍子に企画が進んだのですか?
 
いえ(苦笑)。まずはコンタクトをとってから半年くらいかけて、大事に大事に、どんなテーマだったらpatoさんの文章の良さが活きるのかを考え、対話を重ねました。結果、直球ど真ん中で文章術のテーマがいいんじゃないかという話になったのが、去年の夏くらいですね。そうして上がってきた原稿を読んで、「とんでもないものができてしまった……」と大感動したんです。これは、私が持っているカードをすべて使わなければ! と思い、すぐにレジェンドだと思っているデザイナーの方のところに、その原稿を持って行きました。
 
そうしたら、その場で読んでくださって、「すごく面白いね! やろう!」と言ってくださったんですよ。本来であれば、その場ですぐに仕事を受けてもらえるものではないはずなんですが。

―著者さんにもデザイナーさんにも、大西さんの熱意が伝わったのですね!
 
それしか武器がないんです(笑)。どうしたらより良いものになるかをpatoさんとも何度も何度もやり取りをしました。原稿も3回くらい丸ごと書き直してくださって……その度にさらに良くなっていくような本当にすごい方です。そして、patoさんの文章を届けるために、最高のメンバーを集めることが自分の役割だと思っていたので、チーム作りにも必死で動きました。
 
こうしてたくさんの方の想いが込められた本が、ようやく形になりました。ここからは「いいね!」と言ってくれる人をいかに増やせるかですね。よりたくさんの方に、この本を届けたいです。

起床3時間後がカギ!大西流・時間の使い方

―普段はどのようにお仕事を進めているのですか? 一日のタイムスケジュールを教えてください。
 
基本は、午前中に家で仕事をして、午後から会社に行っています。私が担当した本の著者である睡眠専門医の先生から、朝起きてから3時間後が一番集中できる時間帯だと聞いたんですよ。頭がスッキリしてアイデアが湧きやすいゴールデンタイム。朝7時に起きたとすると、10時頃ですよね。その時間帯に電車に乗ったり移動したりするのはもったいないなと思いまして。なので、午前中は頭を使う作業、一人でじっくりタイトルやコピーを考えたり、原稿を読んだりする時間にあてています。
 
そのぶん、午後は打ち合わせや会議など、人とコミュニケーションをとる時間にしています。常に著者さんを探しているので、気になるイベントに行ったりもしますね。
 
―出社時間や在宅勤務の割合も含めて、そのあたりの働き方は個人に任されているのですね。
 
そうですね。編集部全員が集まる企画会議が週に一回あるのですが、それ以外は比較的自由です。朝早く来て夕方早く帰る人もいれば、私のように午後出社する人もいますし、みんなリモートもうまく駆使しています。自分のベストな働き方で大丈夫だよという感じです。
 
―すごく働きやすい環境だと感じますが、そのような働き方を入社前からイメージされていましたか?
 
私が見てきた編集者の方々が、皆さん土日関係なくずっと編集をやっているような感じだったので、時間の使い方という意味では想像通りですが、個人を尊重してくれる働きやすい会社だとは常に感じています。ちなみに、最初に入った建設会社は朝8時始業でラジオ体操をしていたので、そことのギャップは大きかったです(笑)。

常に感動できる自分でいたい。その感動を人に届けたい。

―ここからは、大西さんご自身のお話も聞かせてください。得意なこと、苦手なことをそれぞれ教えてもらえますか?
 
初対面の人にも躊躇なく話しかけられますし、オファーして断られてもあまりダメージを受けないのは、得意なことというか長所だと思っています。自分と似ている人や環境よりも、全然違うところにすごく興味があるので、たとえばものすごい理系の相手にも臆せず、興味を持って話を聞けることも強みかもしれません。
 
一方で、飽き性なんですよ。退屈なことがすごく苦手。ルーティーンで決められたことをきっちりやることが得意ではありません。場所や時間を工夫して変えたり、新しい人やものに触れたりしていないと、自分自身が飽きちゃうんです。
 
―その「飽き性」という点がまさに転職を考えられた理由であり、常に変化があるクリエイティブな編集のお仕事はピッタリですね。先ほど、常に著者の方を探していると伺いましたが、どのように情報をキャッチしているのですか?
 
SNSをチェックしたりイベントや展示会に行ったりするのはもちろんですが、人が「良い」というものはとりあえず一度試すようにしています。面白いと聞いた漫画や映画はすぐにチェックする。誰かが熱狂しているものには、絶対に何か魅力があるはずですよね。そこから自分なりに響いたものをたどっていく感じです。そうすると、知らなかった世界に触れられるし、教えてくれた相手のことも知れて一石二鳥なんです。
 
―最後に、今後の夢や目標を聞かせてください。仕事でもプライベートでも構いません。
 
これは仕事もプライベートも、どちらにも当てはまるのですが……常に感動できる自分でいたいです。自分が夢中になって、感動するところから本が生まれると思うんです。だから、これからの目標は、自分を飽きさせないように生きること。
 
―それは素敵な目標ですね。ちなみに、最近始めたことはありますか?
 
サーフィンです。学生時代はスキューバダイビングのサークルに入っていて、海とは潜るものだと思っていたんですが、サーフィンに熱狂している人が周りにすごく多くて。そんなに言うなら楽しいんじゃないかと思って始めたら、まんまとハマりました(笑)。今では海に潜らず、波に乗ってます!
 
「自分の頑張り次第で、どんなことにでもチャレンジできるこの仕事が本当に楽しく、やりがいいっぱいです。一冊の本を作るダイナミックさに興味がある人と、ぜひ一緒に働きたいです!」と大西さん。とにかく毎日が充実していて、仕事を心底楽しんでいる様子がお話から伝わってきました。これからも、大西さんの愛情と熱意から生まれる作品たちを楽しみにしています! 

(取材:水谷映美/撮影:鈴木謙介)


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