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【ワンパブ・オープン社内報 vol.13】 祝・創刊40周年! カメラ一筋の『CAPA』編集長に聞いた”写真の未来”

メディアビジネス本部 第4メディアプロデュース部 菅原隆治

【ワンパブ・オープン社内報】は、ワン・パブリッシングで働く人を通して、会社・雑誌・メディアが、いまどのような新しいことにチャレンジしているかをお伝えしている連載です。今回は、今月号で創刊40周年! 『CAPA』の編集長を務める菅原隆治さんにお話を聞いてきました。(所属や肩書は取材当時のものです)

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【社員プロフィール】
菅原隆治
1997年:株式会社学習研究社 入社。『CAPA』編集部配属
1998年:『四季の写真』デスク。翌年に副編集長
2002年:『四季の写真』編集長 兼 『CAPA』副編集長
2012年~:『CAPA』編集長


時代とともに変化を遂げてきた『CAPA』

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―『CAPA』は、今月発売の10月号で創刊40周年を迎えました。おめでとうございます! そのうちの約10年間、菅原さんが編集長を務めているのですね。簡単に、雑誌の紹介をお願いできますか。

『CAPA』は、カメラ情報誌として1981年に創刊しました。当時は自動露出などオート化が進んで、「カメラは難しいもの」というハードルが下がった時代。幅広い価格帯のカメラが数多く販売され、中高生がお小遣いをためて買える機種もたくさんありました。また、アイドル全盛期だったこともあり、「カメラで女の子を撮る」ことに対する憧れもあり、そしてなにより、カメラを持つこと自体がカッコよかった。そんな若者たちに向けて、創刊された雑誌なんです。

現在は読者の年齢層が上がって、特に風景写真の撮影テクニックやフォトコンテストの人気が高いです。同時に、カメラ自体の製品情報や検証企画も好評。カメラファンと写真愛好家、両方に楽しんでいただいています。

―ちなみに、『CAPA』という名前の由来を教えてください。

当時の編集長によると、「CAMERA PAL」(カメラパル=カメラ仲間)の略であり、同時に、有名な戦場カメラマン ロバート・キャパからもその名を取って、『CAPA』と名付けられたとのことです。

カメラ仲間という由来からもわかるように、『CAPA』は読者の方と同じ視点に立って、記事作りを続けてきました。読者との交流を図る企画もたくさんおこなってきましたね。ここ数年はコロナの影響で開催できていませんが、年に3~4回実施していた撮影会もその一つです。

撮影会は、ポートレートや風景、鉄道、サーキットでのレースなど、さまざまな被写体をテーマにしてきました。規模の大きなものでは、参加者3500人を集めて開催した「アンダー・ザ・スカイ」があります。この撮影会では、よみうりランドのイーストを会場に、プロカメラマンとアイドルのステージや、50人以上のモデルさんを自分の愛用カメラで撮ることができたんですよ。

―今年から始まったオンラインイベント『CAPA博』が、まさにその撮影会にかわる読者との交流の場ということでしょうか。

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↑オンラインイベント事前登録者に抽選でプレゼントする『CAPA特製サコッシュ』

そうですね。ただ、これまでのリアルイベントと違って、今回のオンラインイベントは『CAPA』読者でなくても楽しめるようになっています。というのも、昨年から今年にかけて、ライバルであり共に切磋琢磨してきたカメラ誌が続々と休刊になってしまったんです。ですから、これまでほかのカメラ誌を愛読してきた方を含め、よりたくさんの写真愛好家の方に幅広く楽しんでもらえるような内容を企画しています。ちなみに、配信に使用しているカメラは、すべてミラーレス一眼なんですよ。カメラの役割も広がってきましたね。

第2回目は、9月20日に開催します。LEDライトを使ったモデル撮影は、スタジオからライブでさまざまなテクニックをご紹介します。また、表紙を16年間撮っていただいた山岸伸カメラマンのトークや、人気ヒコーキ写真家のルーク・オザワさん&鉄道写真家 長根広和さんの対談、そしてシグマ山木社長の目の前でシグマのカメラを解体してしまう動画もあります。事前申し込みをした方に抽選でプレゼントする『CAPA特製サコッシュ』も好評です。なかなかいいでしょう?(笑)

▶第2回CAPA博はこちらから視聴できます!

夢の「男性表紙」がついに実現。圧巻だった岡田さんの撮影

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―40周年記念となる10月号の表紙は、V6の岡田准一さん。これが、『CAPA』史上初の男性表紙と聞いて驚きました。すごくカッコイイ表紙だと、SNSでも話題です。

うれしいですね。以前から、いつか男性の表紙をやりたいと思っていたんですよ。『CAPA』の別冊では、男性にカメラを持ってもらった表紙をやったことがありましたが、本誌は今回が初です。かつて『POTATO』の編集長をしていた部長の紹介もあり、カメラが好きなことで知られる岡田准一さんの表紙が実現しました。

いつもの女性表紙とは違って、逆光気味のハードな照明で、カッコイイ表紙が撮りたいとずっと目論んでいたんですが、まさに!という素晴らしい仕上がりになったと思っています。

表紙撮影時にはグラビア用の撮影もおこないましたが、岡田さんはカメラの持ち方から構え方まで、プロのようでしたね。いつもの表紙撮影では、まずカメラの持ち方指導から始まることが多いんです。カメラの底を見せないで、とか、人差し指はシャッターボタンの上に、とか。それが、岡田さんの撮影では、カメラを手渡したらすぐに撮影スタート。写真の上がりも、ほぼOKカット。どれもポーズや表情がキマっていて、捨てカットがほとんど無いのには驚きました。ご自身がカメラをやっているので、カメラマンがシャッターを切るタイミングが感覚としてわかっているようです。「撮られる才能」を感じた撮影でした。

―撮影現場の様子が目に浮かびます! 以前にHey! Say! JUMP の中島裕翔さんが巻頭特集に出たときも、かなり反響がありましたね。

あの特集後、中島さんのページを読んでくれたファンの方たちから、たくさんのお手紙が届きました。「裕翔くんを起用してくれてありがとうございます!」というお礼が書かれていて……こちらこそ、中島さん、そして読者の方々にお礼をお伝えしたいです。

『CAPA』は、高校生くらいの若い子から80歳以上の方まで、幅広い読者がいます。中島さんの特集をきっかけに、親子やおじいちゃんとお孫さんが一緒に『CAPA』を読んでくれたという話も聞き、うれしいかぎりですね。

―確かに、若いタレントさんの中でも、写真が趣味という方が多いですよね。スマホで写真を撮ることが当たり前になってきた反面、デジカメやフィルムカメラへの注目も再度集まってきているように感じます。このあたりの時代の流れやムーブメントを、菅原さんはどのように感じていらっしゃいますか?

スマホで写真を撮ること、大歓迎です。撮影することが日常になるのは、写真がそれだけ身近になるということ。写真の面白さに気づくと、興味はカメラにも向けられます。やはりカメラだから撮れる写真があるし、レンズを交換すれば表現の世界が広がる。ここまでくればしめたもので、あなたはもう立派なカメラファン。『CAPA』を読んでますます写真の面白さにはまってください、となります。

……それは冗談として、カメラは写真を撮る手段であると同時に、モノとしての魅力も備えています。精密機械を収めたボディを握ったときの重量感、外装が金属ならその温度感、ダイヤルを回すときのクリック感など、キカイをいじる楽しさがありますね。

また、デジタルからカメラを始めた人が、近年、フィルムカメラを持つようになりました。不便さを楽しむというより、銀塩の描写、つまり色が少し転んだり被写体の輪郭が滲んだり、独特の味わいのある写真に魅力を感じているようです。撮ってすぐその場で結果を見られない潔さも、撮影に集中できて、撮る行為をより楽しめることにつながります。

きれいに写りすぎる現代のデジカメは、機種ごとに性能の善し悪しはあっても写りの差はわずかなもの。それに対してフィルムカメラは、古いレンズの描写、フィルムの銘柄の違いもあわせて、現実をリアルに写し出さない曖昧さがいい。ケミカルの写真も面白い。そこに気づいた人が写真を発表して、見た人に広がっていく。時代で波はあれども、フィルム写真やフィルムカメラがブームの一つになったのは喜ばしいことです。

たくさんの人に求められる写真集を作りたい

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―ここからは、菅原さんご自身のお話も聞かせてください。昔から写真がお好きだと聞きましたが、普段はどんなものを撮影しているのですか?

最近はコロナ禍ということもあって、なかなか撮影に行けていませんが……風景を撮るのが好きですね。昔は、時間に余裕があればロケの前日から現地に行って、自分のカメラで撮影したりもしていました。愛用しているのは、ハッセルブラッド。新品はとても高価なのでずっと憧れていましたが、中古で程度のいいものが手頃な価格で手に入る機会があり、ついに購入しました。スナップを撮るときは、リコーGRデジタル。現行機ではなくて、何世代か前のモデルです。

プライベートでは、2年ほど前、当時高校生の息子と9日間ほどベトナムへ男2人旅をしました。そのときの写真は、個人的に写真集として1冊にまとめましたね。また行きたいです。

―それは素敵ですね! では、菅原さんがお仕事でうれしい・楽しいと感じるのは、どんなときですか?

やはり、一緒に作っているスタッフと共に、良いページができたときですね。最新号でいうと、40人の写真家の方に取材する大型特集があるのですが、4人くらいで手分けして進めていきました。自分の担当ページをお互いに見せ合い、全体のバランスを考えながら、ああしようこうしようと話し合って進めていくのが、すごく楽しかったです。達成感もありました。

あとは、良い写真に出会ったとき。プロの写真家だけでなく、コンテストに応募してきてくれたアマチュアの方の写真も、眼を見張るような作品があります。

―反対に、お仕事で大変だなと思うときはありますか?

最近は体力の低下を実感します(苦笑)。夜になると目はしょぼしょぼ、腰も痛いです……。若い頃みたいに、3日連続徹夜なんて無理ですね!

―最後に、今後の夢や作りたい本、目標などを教えてください。

何万部も売れる写真集を作りたいです。いい本は作れても、売れなければ自己満足で終わりですから。たくさんの人に求められる写真集を作りたいですね。

いま、『Momoco写真集』というデジタル写真集を発行しています。かつてアイドル雑誌『Momoco』で連載していたグラビア企画のリバイバルとして、未掲載の秘蔵カットを含めたデジタル写真集です。当時の連載を撮り下ろしていた写真家の協力と、副編集長の熱意で実現しました。今後も、こういった世の中の写真集とひと味違う価値を作っていけたらと思っています。

そして映像制作。カメラという同じ道具を使いながら、写真とはまったく違う表現ができます。写真は数万分の1秒から数時間までを1枚に閉じ込めることができる。一方ムービーは、一瞬の連続性でリアルにも非現実的にも表現できます。映像表現の面白さを知ってもらうために、『CAPA』のウェブサイト『CAPA CAMERA WEB』を使って積極的に発信していきたいです。

―40年もの長い間、読者に愛され、支えられてきた『CAPA』は、今後も進化とチャレンジを続けていきます。そんな決意が感じられるインタビューでした。若い頃からカメラ好きで、カメラに関わる仕事一筋。そんな菅原編集長が撮った写真も、いつか見てみたいなと思いました。菅原さん、ありがとうございました!

楽しみながら写真が上手くなる!
カメラ&写真情報誌【CAPA】
発売日:毎月19日
ホームページ
https://getnavi.jp/capa/

(取材:水谷映美/撮影:我妻慶一)


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