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Hallow,world!

-20℃を下回った朝
いつものように大きな橋を車で渡る。

気温が低い朝は、決まって天気がすこぶるいい。
空は青く 高く
空気は澄んで
橋の右 くっきりと山の白い稜線が青空との境目を描く。
川岸の木々の枝々はすべて
隅から隅まで樹霜に覆われて
橋の弧のてっぺんで見下ろす
遠くの団地の四角
スーパーの看板
遠くの信号
朝の光の中 白と銀と金でできた世界を
ゆっくりと同じ歩幅で車が進むのが見える。


「ニンゲンがいなかったら、この星はどんなに美しいことだろう」


少なくとも10年前のワタシは
そう思っていた。

だとしたらそれは
植物にとっても生き物にとっても
どんなに幸福なことだろう。
imagineという言葉を聞くと
太古の地球の姿を思い浮かべたものだ。

まるであのアニメのように
この星がひとつの生命体だとしたら
ニンゲンがいないことが平和で健康で
いつか駆逐されるべきワタシだった。

ニンゲンなんていなくなればいいのにと 本気で思ってた。



ザ・本末転倒。



今はわかる。

木々も砂も
猫も君も
この星も
幸せも
そうじゃないことも
私がいるから ここに在るってこと。

想像してみてほしい。
もし今、目の前にあるこの景色を私が見ていなければ
そこに美しさは生まれない。
美しさは
それを美しいと思うモノがそこにいたとき
はじめて生まれるものだから。

白と銀と金色の中
霜に濡れた車の屋根が 朝の光を反射する

美しい日常を見下ろしながら
ニンゲンの生きついたこの星は
なんて美しいのだろう と思う。


 顔をあげて 黒い目の人
 君が見たから 光は生まれた


その時 車の中で響く歌。

私はそれを書こうと思う。
私が生んだ 私の星の話。

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