社長体験記04〜 命 と 食 を学ぶ 〜
【はじめに】
2022年5月16日、藤の花がきれいに咲く頃、石巻市小積浜(牡鹿半島)で
食猟師の小野寺さんのワークショップを受講しました。
昨年秋に、友人の志賀ちゃん(写真家)から小野寺さんの存在を教わり、
必ずお会いしたい!ワークショップを受けたい!と熱く胸の内に秘めて
おりました。
志賀ちゃんからは、昨年夏に小野寺さんによる、小鹿(下処理済)を捌き
皆で調理して食す、というワークショップの動画を見せてもらい
感銘を受けました。是非、うちの子ども達、そして私自身もこの経験を
したい、と強く感じた次第です。
●小野寺望さん Antler Crafts WEB SITE ⇒ https://antlercrafts.jp/
●小野寺さんについての記事 ⇒ https://magazine.hitosara.com/article/1590/
●志賀理江子さん WEB SITE ⇒ https://www.liekoshiga.com/biography/
【ワークショップについて】
目的地は、仙台から車で2時間かからないほどの所にあります。
到着して、いそいそと準備をしていたら、集合がかかり
建物の庇のある場所へ。
ワークショップをはじめるにあたって、自己紹介や一日の流れなどの説明が
行われました。
その日は志賀ちゃんの繋がりのあるメンバー以外に、東京・目黒の三ツ星レストランのシェフご一同や仙台の有名レストランのシェフも参加されておりました。
ワークショップは、鶏の屠殺・食肉までの処理、の体験です。
子ども達もそうですが、大人でもスーパーや食卓に並ぶ食肉が
どのような過程で処理・加工されているのか?知らない方が多いのでは
ないでしょうか?
牛・豚・鶏の全身像は頭にその絵を浮かべられるが、それらがどのような
プロセスで、日々、口にしている食肉の状態になるのか?
『何事にも前後の過程がある。』
『ある一面、断片だけを見るのでなく、多角的視点から人・物・事を
捉える。』
自分の中でずっと大切にしているものと一致する。
持ち続けている問題意識とも合致。
注)これより㈱に、人によりグロテスクと捉えられる画像がありますので
ご注意ください。
【ワークショップ体験】
鶏は、食肉用に育てられたものではなく、卵を産めなくなった経産鶏を
使いました。
よく聞く首をはねて血抜きをする、という屠殺方法は鶏がかわいそう
という小野寺さんのお考えに従い、こめかみ付近から金具を刺し脳死
させる、という方法で行いました。
台の上で鶏を抑える係と刺す係に分かれて、行います。
子ども達だけでは難しいので、小野寺さんが刺す方の介助をして
下さいました。
1羽目を刺すまでに時間を要しました。
言葉のない張り詰めた空気。皆の意識が一点に集まる。
「昨日の晩ごはんで食べたから揚げもここから来ているんだよ。」
という志賀ちゃんの声。
刺された鶏が絶命するまで、台から少し離れた地面で、手を添えられ
待つ時間がしばらくありました。生きている物の体温を感じる時間でも
あります。
なかなか絶命しない鶏が何羽かは、刺し直しされました。
その次の工程は、羽をむしる、です。
皆、無心で作業を行っていました。
やりながら毛根を残さないように抜くコツを探しました。
小野寺さんから、熱い湯に付けると取りやすくなる、という事も
教わりました。
ワークショップが終わった後に、鶏に対しての認識が
「生き物」から「食肉」に変わった瞬間があったな、と邂逅しました。
毛をむしった後の鶏と向き合っている時、目の前にあるものは
「食肉」でした。
羽をむしった鶏のうち、毛根や産毛が残っているものはガスバーナーを
使って、ムダ毛処理が行われました。
次はいよいよ内臓の取出しです。
小野寺さんの周りに人が集まり、手本を見せてくださりました。
スタンダードな鶏の取出し方と鴨の取出し方の2種類。
取り出した内臓がどの部位かも説明いただきました。
その後、何グループかに分かれて、それぞれで鶏の解体作業を
行いました。
教わりながらでしたが、私も生まれて初めて鶏を捌きました。
当然ですが、魚や貝を捌くのとは全く異なりました。
印象的だったのは、内臓を取り出す為に、腹の中に手を突っ込んだ際
中がまだ生温かったことです。あの感触と温度は忘れられません。
先ほど「食肉」という認識に変わったはずの感覚を再び「生き物」側に
少しだけ引き戻されました。
むね肉、ささみ、もも肉、手羽先、手羽元。
ここまで来ると、見慣れた状態です。
しかし食肉用の鶏ではないので、どこも小ぶりでした。
食肉用は少しでも可食部を増やす為に、大きく育てられている事を
改めて認識しました。
解体が終わると、シェフ達は調理タイムに移行。我々、ノットシェフ組は
建物の裏手で、内臓の処理作業を行いました。
腸から排泄物を地道に絞り出す作業、普段嗅ぐことのない臭いとのお戯れ。
個人的におおっと思ったのは、砂肝(砂ずり)でした。
食べたものをすり潰すための器官。ゆえに中には食べた餌が入っており
またすり潰すために固い肉球のようなものがありました。
総じて、百聞は一見に如かず、を実感した機会でありました。
そしていよいよ『食』の時間!!
一流シェフの皆さんの料理は言わずもがな『絶品』でした。
写真の他にも差入れの鱸の刺身、スープ、パン(マルモ)など
全て最高に美味しかったです。
初めて小野寺さんの鹿肉もいただきましたが、野卑さのない
上品な野生の香りがして、感動しました。
一流シェフによる鹿肉の火入れも素晴らしかったです。
【総 括】
我々は、生き物の命をいただいて、それを糧にして生きている。
その言葉の意味は、こういった体験を通してはじめて深まり
身についていくのだと思います。
『命は温もり』
今の時代、インターネットやゲームなどで簡単に疑似体験ができてしまい
ますが、そこからは何のリアリティも実感も味わえていない。
生きづらい現代に身を置く人々、特に悩める大人、そして子ども達にこそ
地面や太陽などの自然、そして生き物から温もりを感じて、心を動かして
欲しい。
生き物の命を通して、食、そして自分たちが生きることを
見つめ直す、素晴らしい機会となりました。
小野寺さん、志賀さん、関係者の皆様、参加者の皆様
本当にありがとうございました!
次は我が子達にも参加させたいと思っております。
【おまけ】帰り途中に、White Deerを初めて見ました。
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