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成瀬は天下を取りにいく

宮島未奈 2023年

・あらすじ

2024年本屋大賞受賞作
「この夏、私は西武に捧げようと思う。」
「今度、M1グランプリ出ようと思う。」
これは琵琶湖のほとりで生まれ育った一人の少女の物語。西武大津店閉店に夏休みを捧げたり、M1でたり、かと思ったら今度は、東大受けると言い出したり、なかなかに刺激的で、でもどこかに愛嬌のあるそんな姿を描いていた。彼女の行く末は?

・感想

Xをご覧の方はご存知かもしれませんが、先週本屋大賞の受賞作が発表されたとのことで、翌日に大学の本屋で購入しました。前々からSNSなどでいろいろな人が紹介しているのを見ていて気になっておりました。

開いて最初に思ったことは、「何で西武の大津店を出してくるんだ」ということです。今までにはないスタイルの始め方といってよいでしょう。読み進めていくうちに、閉店する日まで、毎日のように西武に通いつめ「この人は目立ちたいのかな」と思いました。何をしたいのかちょっとよくわからず「?」と思いながら次の章に行きました。

大津西武の閉店後、成瀬は島崎とM1に出たいと言い始めます。そして大阪の会場に向かい審査員の人の厳しいチェックを受けますが…。
その後、彼女は高校に入って何を思ったのかいきなり坊主にしてしまいます。その動機はとても衝撃的なものでしたがここで取り上げるよりも実際にお読みになった方が印象強いかと思います。朝の満員電車の中で吹き出しそうになりました(笑)

成瀬がしたかったことは何なのかと考えた時に、単純に目立ちたかっただけなのかと最初は思いました。しかし、それだけであそこまでするのかと考えました。これは私感ですが、学生時代にできること、可能性を信じていろいろなことに手を付けてみたのではないかと思いました。西武のことも、M1も、坊主も、東大受験も、一際目立つことというのに共通します。学生時代は様々な楽しみや可能性をもっているはずなので、好奇心というものや「やってみたい」的感情からこういった「よくわからない」行動をしていたのではないかと思います。

去年はしんみり系の小説でしたが、今年はちょっと意外な感じの作品。予想の斜め上を行く作風の作品が選ばれましたね。こういった意外性が本屋大賞に選ばれた理由の一つに挙げられるのではないかと感じました。また昨日か一昨日あたりにネット見てて知ったのですが、当作品には続編『成瀬は信じた道をいく』もあるようです。それも気になっているので買おうかどうか迷っています。皆さんも是非チェックしてみてくださいね!

・書籍情報

成瀬は天下を取りに行く 宮島未奈

初版刊行:2023年3月15日
刊行元:新潮社
定価:本体1550円(税別)
ページ数:208
ISBN978-4-10-354951-2

備考
初出
・「ありがとう西武大津店」 『小説新潮』2021年5月号 
第20回「女による女のためのR-18文学賞』大賞・読者賞・友近賞受賞作
・「階段は走らない』 『小説新潮』2022年5月号
ほかは書き下ろしです。
単行本化にあたって加筆・修正を施されています。


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