見出し画像

彼が炎上した根本的な理由 〜あの炎上事件から学ぶ「ブランドが壊れる時」(その2)〜

こんにちは。
8millionsの阿部です。

前回の記事で、とある老舗和菓子屋社長の炎上騒ぎとその周りの人の反応について、ブランディングの観点から少しお伝えしました。

社長に就いてから数々の改革を行い、今の繁栄を築き上げたW氏。

当然ブランディングについても熟知していたはず。

なのにこの体たらく。

これはつまり、彼が「ブランディング」というものを一部しか理解していなかったことを示すものです。

では彼が理解していなかった「ブランディング」とは何なのか?

そして渦中の老舗和菓子屋は今後どうするべきなのか?

今日はそれについて考えてみようと思います。


W氏が理解していなかったこと

前回お伝えした「W氏に欠けていたブランディングの資質」

それは

「ブランディングの基礎構造」

というものです。

基礎構造、つまりブランドの基礎がどのような仕組みで形作られているのか。

おそらく彼はその一部しか理解していなかったのではないか。

今回の事件における彼の言動を見る限り、そのように感じられるのです。

ではその「構造」とはどういうものなのか?
それをこれから説明します。


ブランドの基礎構造1.上屋

上屋、つまり建築物の地面から上の部分、すなわち目に見える部分です。

ブランディングで言えば「マーケティング」的な部分と言えましょう。

商品そのものや店舗、名刺やパンフレット、接客やセールストーク…

そういった第三者が受け取るもの全てがこの部分に当たります。


ブランドの基礎構造2.土台

土台、つまり建築物の地面から下の基礎の部分、すなわち目に見えない部分です。

ブランディングで言えば「ビジョン」や「ミッション」もっと専門的に言えば「コンセプト」的な部分と言えましょう。

その行動は何のためなのか、誰のためなのか。
全ての行動の土台となる目的、意志…

そういった自分自身の内にあるものがこの部分に当たります。

「W氏が理解できていなかった」と僕が指摘するのはこの部分です。


2011年9月、とある街でのとある出来事

ちょっと話が飛びますが、2011年の9月、震災の傷跡がまだ残っていた宮城県のとある街に出かけた時の出来事をご紹介します。

タクシーに乗って移動していた時のこと。

ある程度瓦礫が片付きつつあるとある街中で、一軒だけポツンと家が建っている風景がありました。

周りの建物は取り壊されてほぼ更地。なのにその家だけ何事もなかったかのように建っている。

その家について、そのタクシーの運転手さんはこんなことを教えてくれました。

「あの家はね、数年前に建て直したんだけど、その時に何を思ったか、通常の倍以上の値段を基礎工事に費やしたらしいんだよ」

そしてこう続けました。

「でもまさか…こんなことになるなんてねえ…」


ちょっと想像してみてください。

地上部分は大きく、華やかな建物。

しかし地盤は脆く、脆弱な地中の基礎。

そんな建物、あなたは住みたいと思いますか?

僕なら絶対にお断りですし、多くの方は僕と同じ選択をするでしょう。


しかし、建物以外となると、違う選択をしてしまう人が少なくないのです。

目に見える上屋ばかりに意識が向いて、目に見えない土台をおろそかにしてしまう。

そう、今回のW氏のように。


土台をおろそかにしたブランドの末路

W氏就任後、SNS等のツールを活用して積極的に顧客との接点を増やしてきたこの和菓子屋さん。

だからこそ、今回の事件でも「これからも購入する」という応援メッセージをいただけていた部分は大きいと思います。

しかし、です。

こういった「目に見える部分」は上でお伝えした通り「上屋」となるもの。

「土台」となる部分が強固に構築されていれば、そもそも論として今回のような炎上騒ぎにならなかった可能性が高いのです。


この和菓子屋さんのサイトには

「発酵の力で日本を元気に」

船橋屋公式サイトより

という言葉があります。

「日本を元気に」する会社の代表が、信号無視をして事故を起こし、その相手を恫喝するでしょうか?

僕はW氏のことは何一つ知らないのでこういう言い方は少し乱暴なのかもしれませんが、彼の心の中には

「売上」や「顧客数」や「LTV」や「ROI」

というものへの意識は明確に存在していても、この

「発酵の力で日本を元気にする」

というものへの意識は残念ながら薄かったのではないでしょうか。

もしそうでないのであれば、今回のような事故が起こる可能性は限りなく低いでしょうし、万が一事故が起きたとしても今回のような言動が出る可能性はさらに限りなく低いでしょう。

こういう目に見えない「土台」の部分が脆弱だったからこその今回の事件。

僕にはそのように感じるのです。


あなたはどうでしょうか?

土台をおろそかにしたまま、上屋だけ見ていないでしょうか?

もしよろしければ、一度考えてみてください。
W氏のようになってしまう前に。


もう一つ気になったこと

今回の事件について色々調べていたら

「残念な事件ではあるけれど、いいものを作っているんだから、これからも頑張ってほしい」

といったことを言っている人が何人もいました。

前回の内容と同様、実はこれも非常に誤解されがちなもので、経営者やマネジメントをされている方に注意が必要なものです。

何が誤解されやすいのかについて、次回考えてみようと思います。

ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。


8millions 阿部 龍太


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?