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【経営者やマネージャーのあなたへ】彼に欠けていたもの 〜あの炎上事件から学ぶ「ブランドが壊れる時」(その1)〜

こんにちは。
8millionsの阿部です。

先日、残念な事件が起こってしまいました。

老舗の和菓子屋の8代目社長W氏が自分の過失による信号無視で他の車に衝突し、お詫びや安全確認どころか相手に言いがかりの恫喝を仕掛けるという始末(衝突された相手の方が大事に至らなかったことだけは不幸中の幸いです)

ドライブレコーダーで録画されたその様子がネット上に流出し、こんがり燃え上がっています。

そのニュースに対し、色々な人が色々なことを言っているのですが、その中で「ちょっとこれはマズイんじゃないか…」というものがあったので今回記事にすることにしました。


ちなみに今回の記事は特に

ブランディングの指揮を執る立場の人

に読んで頂きたい内容となっています。

例えば経営者だったりブランドマネージャーだったり、それらに近い立場の人にとっては、今後のあなたのブランドの浮沈の鍵を握ると言っても過言ではない(多分ねw)内容になると思います。

よろしければお付き合いくださいませ。


事件に対するリアクション

ざっと見ただけですが、この事件に対する周りのリアクションはざっくり分けて以下の4つでした。

1.問題の社長を罵倒するだけ

2.事故は残念だけど、商品が美味しいから今後も買うという応援

3.商品の美味しさは認めるものの、企業としての姿勢を問題視し、今後の購入は控えるとする意見

4.商品や他の社員やスタッフに責任はないと1や3を否定する意見


1に関しては問題外。ただ人を傷つけるだけのその姿勢は、事故を起こしたW氏と同類です。論じるに値しません。

2は商品や店舗スタッフさんのファンというお客様の声が中心。こういう方がいてくれるのは有難いことですよね。

3は2の真逆の意見ですね。コンサルタントや経営者のような方、また今までファンだったけど今回の件で気持ちが離れてしまったお客様の声が多かったようです。

4は商品やお店のファン、またはその企業の地元の人やW氏を知っているような口ぶりの人が多かったように感じます。

ちなみに、今回特に個人的に問題だと感じたのが4です。


何が問題だったのか?

個人的に問題が流ように感じたのが

4の内容を言っている人の中に「経営者」やそれに近い立場の人がいる

ということでした。

なぜそれが問題だと感じたのか?
これからそれについて説明します。

まず「4の内容」についてきちんと見ていきましょう。

「4の内容」を語っている人の主張をざっくり解説するとこんな具合です。


a .事故を起こした社長を擁護する訳ではない。

b .ただし、悪いのは事故を起こした社長であり、商品や他の社員に非はない。

c .よって、無闇に非難したり、購入拒否をすることは間違いだ。


いかがでしょう?

あなたはこの意見に対して、どのように感じるでしょうか?

個人的には

「ある観点では肯定できるものの、別の観点では致命的に間違っている」

と考えています。

つまり一つの意見の中に、見方を変えることによって二つの相反する意見がある、ということです。

具体的にどういうことなのか、これから説明します。


肯定できる観点

まず「肯定できる観点」について。
それは

「一人の人間としての観点」

つまり「今回の件を一人の人間としてどう考えるべきか」という観点です。

事故を起こした社長だけに問題があり、商品や社員、お店とは関係がない。

だから関係ない人や物を責めるべきではない。

これは「一人の人間としての立場」から見ると間違った態度とは思えません。むしろどちらかと言えば正しい態度と言えるでしょう。

しかし、もう一つの側面はどうでしょうか。


否定せざるを得ない致命的なポイント

別の観点では致命的な問題がある。

という話をしましたが、何の側面が致命的なのか?

それは

「ブランディングという観点」

つまり「今回の件を他者はどのようなイメージで受け取るか」という観点です。


事故を起こしたのは社長のW氏個人。それは間違いない事実。

しかし社長という存在はその企業の代表、顔となる存在です。

それ故、社長の言動はイコール企業の言動として第三者に受けとられる可能性が非常に大きい訳です。

特に今回のような「ネガティブな言動」であればなおさら。

だからこの「ブランディングの観点」では、社長の言動と商品や社員、お店とは関係がないとは言えないのです。

もちろん「だからと言って社員やスタッフが責められるのは仕方ない」という訳ではありません。あくまでも「経営者としての理解しておくべき姿勢」という話です。


なぜこれを経営者が言うことが問題なのか?

先ほど僕が

4の内容を言っている人の中に「経営者」やそれに近い立場の人がいることが問題だ。

と指摘した理由。

勘のいいあなたならもうお分かりになったのではないでしょうか。

そうです。

「経営者として、他者にどう見られているのかを意識する感覚がない」

からです。

間違えて欲しくないのですが「ただ他者に迎合しろ」と言っている訳ではありません。

ただ「自分が他者にどう見えているのか、つまり状況を認識すべき」ということであり、そして状況をきちんと認識したその上で、行動を選択する必要がある訳です。

この世界に存在するのはあなただけではないのです。

4.商品や他の社員やスタッフに責任はないと1や3を否定する意見

少し乱暴かもしれませんが、一般の方ではなく、経営者やマネージャーという肩書きのある方がこれを口にしてしまうということは、その役割における大切な姿勢を忘れてしまっていると言われても文句は言えないのではないでしょうか。


カリスマ社長に見えていなかったもの

この「状況認識能力」

これがない経営者やマネージャーは組織において致命的なのは分かりますよね?

例えば日本史で有名な「桶狭間の合戦」

あの戦いは(天候に助けられたとはいえ)織田信長の作戦勝ちというのは有名な話ですが、きちんとした作戦を立てるためには敵側との戦力差や戦いの場所の地形等、非常に多くの要素を見極める必要がある訳です。

もし信長に「状況認識能力」が欠けていたら…?

少なくとも桶狭間であのような勝利を収めることはできなかったでしょう。


翻って、今回のW氏はどうでしょうか。

200年以上続く老舗和菓子屋の8代目社長。

300人の社員の代表であり、数多くの業者さんやお客様に支えられている存在。

そういう「状況認識」がもしできていたら、あのような事故処理をしたでしょうか?

いや、そもそも信号無視なんてしたでしょうか?

自分の行為が社員やスタッフといった身内に、そして業者さんやお客様といった身近な第三者に迷惑をかけるかもしれない。

そういうことを彼は認識できていたでしょうか?

何によって憶えられたいか?

「非営利組織の経営」より

P・ドラッカーのこの言葉、W氏はきちんと噛みしめるべきだと思うのです。

そういう意味でW氏は経営者として「ブランディングの資質」が致命的に欠けていたと個人的には考えています。

ちなみにW氏は経営者として数多くの経験をされているそうですが、今回の件で彼の言っているブランディングは残念ながらブランディングというものの「一部分」しか理解できていないことが明らかになりました。

彼に欠けている「ブランディング」の側面とは何か?

それを次回にお伝えしようと思います。

ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。


8millions 阿部 龍太



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