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NAIST合格体験記(2023年第1回情報科学領域, 得点率94%)


この度NAIST情報科学領域に合格し、上位合格者がもらえるらしい寮の優先入居権もいただいたので、誰かの参考になればと思い合格体験記を書こうと思います(2024年度春入学です)。
なお、これまでたくさんの先輩方が合格体験記を書いてくださっているので、過去の体験記を補完する形で個人的な感想やアドバイスを主に書けたらなと思っています。
(2024/03/28 追記)
入試成績が開示されたので追記しました。

ちなみにですが、東工大の合格体験記も別の記事に掲載しているので興味のある方はどうぞ。


僕について

学歴: 地方国立大の情報系。1留してます。同窓会で大学名を伝えたら「なにそれ私立?」と言われ、布団の中で泣きました。
GPA: 円周率と小数点以下10桁まで一致してます。
TOEIC: 高得点すぎて地元の新聞に載りました。嘘です。900ちょっとです。
数学: あまり得意ではないです。センター数学8割でした。
面接力: コミュ障なのでコンビニバイトを初日でクビになりました。なんで採用したの?
小論文: 手法自体はとても簡易な物ですがよく書けたと思います。計6名のNAISTの方に添削していただきました。

入試本番の出来

数学

解析は、
∫^{e^2}_e log x / x dxを求めろというもの、
線形代数は
1  0  2
0 -1 -2
2 -2 0
を対角化する行列Uを求めろというもので、どちらも基本的な問題だったので完答できました。
ただ、線形代数では固有ベクトルの計算ミスを指摘され、残り時間が分からなかったのでパニクって何故か再計算せず勘で答えたら正解したので滑り込みセーフでした。

面接

概ね問題なく回答できましたが、1問だけうまく答えられなくて最終的に先生に助け舟を出してもらう形で答えた質問がありました。しかもその質問は研究室訪問をして先生に小論文のアイデアを伝えたときに先生が教えてくださった論文に関する内容だったのですが、全く読んでなくて概要しか把握してませんでした。研究室訪問で小論文のアイデアについて相談して先生に関連論文を教えてもらった時はちゃんとその論文を読みましょう(あまり詳細に読む必要はありません)。他の受験体験記でも、先生との面談で質問された内容がそのまま入試でも聞かれたという話がありました。

以下面接で聞かれたこと

志望研究室の先生からの質問

  • 3分で小論文の内容を説明して

    • 頻出っぽいので必ず準備しましょう

  • その研究の意義1(なぜそれが必要かみたいな)

  • そのやり方ではなく~というやり方はある?(先生が面談で話していた内容でしたが、上手く答えられませんでした)

他の先生方からの質問

  • 小論文中の表の意味は?

  • 研究の意義2(なぜ従来手法じゃダメかみたいな)

  • 小論文中の言葉の意味

  • 卒業研究の内容についても軽く触れられた気がしますが忘れました

小論文の内容以外は何も聞かれませんでした。情報系出身で、プログラミング経験は小論文に書いてあったからもう十分だったのでしょうか。

追記(得点開示)

入試の成績が開示されたのでここに載せておきます。
200点満点中の188点でした。
合格体験記に得点を書いている人の中で180点以上だった人は見たことがないと思うので、結構いい方なんじゃないでしょうか。
今年の合格最低点は144点なので、去年の148点よりは下がってるみたいです(直近3年間の最低点の推移は134→139→148)。

試験対策

1月

本格的な院試対策はまだしていなくて、旅行とかしてブラブラしてました。
マセマの線形代数を1周読んだのですが手を動かすのが面倒でただ読んでいました。線形代数を勉強するのは学部1年の時に受けた授業以来だったので、「こんなのあったなぁ」と卒業アルバムを開く感覚で読んでおり、全然ちゃんと線形代数を勉強したとは言えないレベルです。
NAISTのインターンに応募したら、「今は忙しいのでごめんなさい」と断られて心が折れてました。(多分インターンを募集しているのは主に3,4月なんだと思います。)

2月

入試が近づき焦る気持ちはあったのですがやっぱりまだ本腰入れて勉強は始められませんでした。
マセマの微積を1周読みました。今回も手は動かさずただ読んでました。

3月

この月はマセマすら読んでないしペンも一切持ってませんでした。
徹夜でTOEICを受験することになり、もっと早くTOEICを申し込まなかったことをとても後悔しました。

4月

5月のオープンキャンパスまでに小論文の初稿を完成させ、オープンキャンパスで小論文を見てもらいたかったので4月中に初稿を完成させようと意気込んではみたものの、機械学習の知識が全く無くて論文の内容が何一つ理解できなかったのでAIcia Solid ProjectというVtuberのYouTubeチャンネルを見て一通り機械学習の基礎を勉強しました。
小論文は研究計画が何も思いついていない状態でまず自分の修学内容を書きました。そうすることで、なんとなく進捗が生まれていてやる気が起きそうだったのと、あとどれくらいの文量を研究計画で埋めればいいかが分かると思ったからです。結局研究計画が長くなったので修学内容の部分は1ページから0.5ページにまで圧縮されましたが、結果的に洗練された濃い内容が書けたと思うのでよかったです。
小論文を書き始めた最初の1週間は、研究計画があまりにも思いつかず不安で文字通り眠れない日々が続いたのですが、1週間経ったあたりでアイデアが浮かび、その後1週間で初稿が完成したので結果的に2週間くらいで小論文の初稿が書けました。
研究の方針を決めてからTwitterで見つけた志望研究室の先輩2名に相談したり、志望研究室の先生と面談をしたり、ChatGPTとブレインストーミングをしたりすることでアイデアを深めていきました。初稿ができた後は志望研究室の先生に見てもらい、簡単なフィードバックをいただきました。
下旬は東工大受験の対策をしていて、NAIST対策は特にしていません。

5月

1,2月に読んだマセマの内容を全て忘れていたので、5月上旬の2週間でマセマを全部やり直しました(微積・線形代数のゼミと演習)。
オープンキャンパス当日はめちゃくちゃ寝坊して、学研北生駒駅に着いた頃にはもう迎えのバスも無い時間で、NAISTに着く頃にはほぼオープンキャンパスが終わる時間だったのですが、その分人が少なかったので先生とゆっくり話せて、小論文の添削もしてもらえました(ボスじゃない先生にです)。
また、オープンキャンパスでは自分の研究計画と同じ分野の研究をしている先輩方の名前を教えてもらい、研究室のホームページでメールアドレスを調べてコンタクトを取り、小論文の添削をして頂きました。
自分的には初稿の時点でそれなりによく書けているつもりでしたがボコボコにフィードバックを頂き、とても洗練されました。合格が決まった後、入試対策でお世話になった先輩方の輝かしい業績を知って震えました。
また、5月中旬にNAISTの過去問を解いてみたら普通に解けたのでもう特別な対策はしなくていいかと思い、しばらくは東工大の試験対策に専念していました。

6月

出願。東工大対策に集中していて、NAISTに向けた特別な対策は何もしてません。

7月

ずっと東工大対策や柴犬のクレープ屋さんというスマホゲームに夢中になってたのですが、受験本番5日前の夜になってようやく、自分がNAIST対策を何もしていないし全然手をつけていない部分がたくさんあることに気がつきました(小論文の参考にした論文はまだ1度もまともに読んでおらず面接準備もしていない上、基底の意味や三角関数の公式なども忘れていました)。それで焦って翌日からスマホを封印して4日間だけNAISTに向けて1日15時間勉強する生活をして詰め込みました。スマホ依存症の人はスマホを封印したらすることが無くなって自動的に勉強時間が増えるのでおすすめです。
この4日間でしたことは以下の通りです。

  • 線形代数と微積のキャンパスゼミと演習をそれぞれ1周ずつ解いた

  • 理数アラカルトで線形代数の性質をざっとさらう

  • 筑波大の武内先生の線形代数の授業ノートが良さげだったから全部読んだ

  • Introduction to Linear Algebraの演習問題を各Problem Setの5問目まで解いた

  • ZOOMNOTES FOR LINEAR ALGEBRAという、Introduction to Linear Algebraと同じ著者が書いている、線形代数の要点がまとめられている本をざっと読んだ

  • A First Course in Calculusの問題を全部解いた

  • ネットに落ちている過去問を解いた

  • 想定質問の準備をした(ほとんど聞かれず無駄になりました)

  • 自分の小論文と参考文献を読み直して、曖昧な理解のままにしてたところをちゃんと理解した

  • 参考文献でコードが公開されているものは一応軽く読みました

数学は世界共通の言語なので英語の本でも読むのはあまり難しくないし、英語版ならば無料で公開されており、さらにIntroduction to Linear Algebraに関しては他の人が作った全問題の解答が無料で落ちているので英語がある程度読める人は指定教科書は英語で読めばいいと思います。
しかし、数学の勉強自体はマセマで一通りして、追加の問題演習を指定教科書でやる感覚でいいと僕は思います。過去の受験記を読むと、LU分解や不等号証明などが出たと書いている人たちがいたので、そういったマセマでは扱っていない問題の補完という感覚で僕は指定教科書を解きました。
あと、参考文献のコードとか読んでましたがそんなことまず聞かれないのでもっと自分の研究計画の価値や直感的なアイデアを説明できるようにしておくなどの基本的な対策をするべきだったなと思っています。受験本番では、志望研究室以外の先生が自分の小論文を読むのは面接直前ですし、自分の研究計画の基本的なアイデアさえも小論文だけから読み取ってもらうのは難しいです。なので一番簡単に自分のアイデアを説明するにはどうしたらいいかを考えることが大切だと思います。僕は変な対策をしてたので結局1番参考にしている参考文献をちゃんと読み終えたのが試験室(オンラインでしたが)入室2分前でした。

アドバイス

小論文

  • 研究計画が何も思いついていなくても修学内容を書き始めたらモチベが上がるのでとりあえず修学内容を書き始めましょう。

  • 図表はFigmaで作成しました。パワポなどで適当な図を作ることもできましたが、見やすいデザインになるようにこだわりました。カラフルな方がかわいいなと思ってカラフルにしました。ギャルなので。

  • 図表を見るだけで提案手法の基本的な内容が分かるくらいに分かりやすい図表を作ろうとしたのですが、結局小論文だけでは専門外の先生にはあまり伝わっていなかったようなので、専門外の人に自分のアイデアやその価値をわかりやすく伝えるにはどうしたらいいか考えておくべきだと思います。

  • 結局先輩たちの小論文は受験前になっても全然理解できなかったので、先輩たちが難しそうなこと書いてるからって落ち込まなくて大丈夫です。あなたの研究計画も他の人が見たらすごく難しい内容に見えてしまいます。

  • 小論文にあんまり難しいこと書くと自身の理解が甘くなって質問に答えられなくなるし、簡単すぎると「それ意味あるの?」みたいな印象になるので、研究計画を立てる時はまず修士課程全体の研究テーマを考えて、次にその一部分に関する具体的な研究計画を立てるのがいいと思ってます。喩えるなら、
    1. 夢はプロサッカー選手です!(修士課程の目標)
    2. そのためにまずは地元の大会で優勝を目指します!(小論文の研究計画)
    3. そのためにするべき練習は…(その研究計画における提案手法)
    みたいな感じで考え、それを小論文に落とし込めばいいと思います。

  • オープンキャンパスで研究室に行ってみたら先輩や他の受験生たちが旧帝大や高専出身の人たちばかりで怖かったです。

  • 僕が小論文を先生や先輩方に添削してもらった時は「よく書けてる」「文章力があって、自分なら高く評価する」「入試は問題ないだろう」という評価をいただきました。しかし、小論文が大変よく書けていても面接でイマイチ答えられず不合格になった人も見たのでアテになりません(なので、ちゃんと面接で質問に答えられるよう自分がちゃんと理解している内容で小論文を書く必要があります)。

  • オープンキャンパスで小論文を見てもらったりアドバイスをもらったりするためにオープンキャンパスまでには初稿を完成させておきましょう。

  • 研究目的と研究手法は混同しないように。ちゃんと分けて書きましょう。

  • できるだけ多くの人に添削をお願いしましょう。←本当に大事

  • 文中の表現を変えるだけでも印象が変わります。例えばインクリメントな言い方をしているところを直すみたいな。「既存手法をちょっと変更してみます!」よりも、「既存手法に⚪︎⚪︎を加えて⚪︎⚪︎を実現します。」みたいな言い方の方が凄そうに見えます。

  • 意見と事実は分けて書きましょう。

面接

  • 研究室で先生に面談をした人は、その時先生に言われた内容とか教えてもらった論文をある程度読んで頭に入れておきましょう。面接で聞かれる可能性がかなりあると思います。僕は試験本番でそこで躓いたし、小論文はとてもよく書けていてもそこでうまく答えられなくて落ちた人の話も聞きました。

  • 先生は、小論文の内容について「この人はここ理解してるかな?ここはどうかな?」って感じで色んな角度からつついてきます。どこをつつかれても大丈夫なように小論文の内容についてはちゃんと考えておきましょう。研究目的に対して、自分の手法の他にどんなアプローチが考えられるかとかも。

  • なんやかんや書きましたが、結局面接で大事なのは以下のことだと思います。(僕のように引用していない文献に関しても触れられることはありますが)

ポイントは、とにかく自分の研究計画書に書いた内容と引用した文献についてはごまかさずに話せるようにすること、それだけだと思います。

NAIST 情報科学区分 院試 文系学部からの合格体験記

数学

  • (これは正しいか分からないけど)NAIST数学は12分なので、1問あたり6分使うことができて試験官に説明する時間やバッファを考えると1問の回答に使えるのは各4分くらい。とすると1分以内には解答の方向性が思い浮かぶ程度の問題である必要があるので、出題される問題のレベルは基本的な性質を問うものが多くなると予想しました。それが正しいとすると、行列でちょっとめんどくさい問題が出るのは2、3次元程度のものだろうから、試験対策では線形代数の難しい問題を解くよりも行列に関する性質などの「知識」を入れる方がいい。つまり、広くて浅い問題をそれなりの速さで解ければいいと思います。Introduction to Linear Algebraの各演習問題の5問目まで一通り解いておくことはその対策になると思います。本番の問題はめっちゃ簡単だったから結局マセマだけでよかったですが。

  • 油性ペンで答案を書く練習をしましょう

  • 不等式証明とか、基礎的すぎてマセマに載ってない問題が解析の指定教科書に載ってるから忘れてないか一応チェックしましょう。

  • 個々の問題に対する解法よりも、定義や性質を覚えるべきです。核とは何?正規直交行列とは?それらの性質は?みたいな。

  • 計算ミスは命取りなので、計算ミスを減らす工夫を知っておきましょう(行列の積を計算するときにn個の列ベクトル×行ベクトルに分解して計算するとか)

  • 指定教科書をしっかり勉強して、研究室インターンにも参加していた人が数学でコケて落ちているのを見ました。もちろん受験本番の問題運もありますが、中途半端に指定教科書に手を出すよりもマセマに載っている定義をしっかり理解した方がいいのでは無いかと思います。僕は指定教科書はただの問題演習に使っていました。

  • 入試本番では結構面接官の方がアドバイス?をくれます。無言で黙々と問題を解いて、固有値の計算が合わず焦っていたら面接官の方が「どこまで進んだか教えて」と話しかけてくれて、今計算しているところまでを見せたら間違っている部分を教えてくれました。なので面接官の先生にはガンガン話しかけた方が得です。

  • 別の記事で僕が学んだ性質や、時短できる解法、合格体験記に載っている過去問の誤植指摘などを書いているのでよかったら読んでみてください。


英語

TOEICの申し込みは早くしましょう。
僕は1月中旬か下旬にTOEICの受験申し込みをしようとしたら2月の試験の申し込み締め切りを1時間過ぎていて3月下旬の試験しか受けられず、思いがけず1発勝負になってしまって本当に焦りました。結果的には悪くないスコアが取れたので良かったですが、受験当日体調が最悪で、受験直後はもう一度万全の状態で試験が受けられたらなと何度も思ったので、もしまだTOEICを受験していない人がいたら一刻も早く申し込んでください。
TOEICのテスト対策は特に何もしていないのであまりアドバイスできませんが、僕は金フレの単語でも覚えてないものがたくさんあるし、その程度の単語力でも900は全然狙えるので、センター試験(共通テスト)レベルの英文がある程度読めるのならとにかく公式問題集をした方がいいと思います。

おわりに

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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特に意味はないですが、なんかうれしいので。

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