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外部生が東工大の院試に首席合格した話【情報理工学院情報工学系B日程合格体験記】

初めまして。
この度、東京工業大学大学院 情報理工学院情報工学系B日程の筆記試験にて首席合格しました。
誰かの参考になればと思い、僕の院試対策の方法などを共有したいと思います!


僕について

学歴:地方国立大情報系。偏差値で言うと50台中盤
TOEIC:
900ちょい
GPA:3.1
研究実績など:一切なし
対策開始時期:4月下旬

院試対策に使ったもの一覧

ネットに落ちている無料の資料やメルカリで買ったマセマなどを使い、過去問の解答は大学の先輩に譲っていただいたので、あまりお金をかけることなく対策できました。
結局一番の対策は過去問をひたすら解くことです。
僕の場合は間違えた箇所を中心に、解答を参考にしながら計5,6回過去問を解いたと思います。

微積分学,線形代数学,確率統計

それぞれマセマのキャンパスゼミと演習の2冊をしました。それぞれ3周くらいしたと思います。(毎周全問解いたわけではなく間違えた問題がメインです。)
線形代数に関しては、マセマに加えて理数アラカルト筑波大の武内先生の授業ノートなどを読んで性質を学んだり、NAISTの対策でNAISTの指定教科書を読んだりしました。
微積や統計は結局ほとんどマセマと過去問しかせず、マセマの問題も試験に出なさそうなものは飛ばしてたので、マセマの問題の中にも最後まで解けないものがありました。
微積と線形代数の青チャートも持ってましたが結局あまり使いませんでした。答案の記述作成の参考に少し読んだくらいでしょうか。
一番大事なのは過去問をやり込むことです。特に僕が線形代数の理解を深められたのは過去問の全ての問題を解き、解答を参考に理解を深めたからです。マセマが完璧になってなくても過去問をしましょう。

数理論理学,オートマトンと形式言語

オートマトンは先輩から東工大の講義資料を共有していただき、それを何度も読んで全て説明できるレベルになるまで勉強しました。講義資料だけでは演習が足りない気がして、一応静岡大学のオートマトンの講義の期末試験候補問題集を解いてみたりもしましたが、結局は過去問と講義資料がメインです。
数理論理学は新潟大学の講義資料を使いました。復習問題などにも目を通しました。擬似証明コードなどの、試験に関係なさそうなところは読み飛ばしましたが、講義資料全体を何度も読み、特に赤字のところはちゃんと理解するようにしました。2月頃に「はじめての数理論理学」という本を図書館で借りて全部解きましたが役に立ったかは怪しいです。東工大で使われているっぽい教科書にも目を通しましたが、全然理解できなかったので使いませんでした。新潟大学の資料でイマイチ理解できなかった部分は慶応や神戸大の資料を読んで勉強しました。

データ構造とアルゴリズム,プログラミング

大学1年生の頃にAtCoderをしていたこともあって(レートは茶色止まりですが)、特別な対策はほとんどしていません。ただ、全く何もしないのも怖かったので、けんちょん本でソートやDPを復習したり、アルゴ式でDPを解いたりしました。過去問ではPrologやSchemeが出てることがありましたが、もう出ないだろうと思って全く勉強しませんでした。

勉強スケジュール

1月(平均勉強時間: 10m/d)

本格的な院試対策はまだしていなくて、旅行とかしてブラブラしてました。
マセマの線形代数を1周読んだのですが手を動かすのが面倒でただ読んでいました。線形代数を勉強するのは学部1年の時に受けた授業以来だったので、「こんなのあったなぁ」と卒業アルバムを開く感覚で読んでおり、全然ちゃんと線形代数を勉強したとは言えないレベルです。

2月(平均勉強時間: 20m/d)

入試が近づき焦る気持ちはあったのですがやっぱりまだ本腰入れて勉強は始められませんでした。
マセマの微積を1周読みました。今回も手は動かさずただ読んでました。
「はじめての数理論理学」をやりました。数理論理学について何も知らない状態から、証明についてはある程度ここで学びました。ただ、試験ではあまり複雑な証明は出ないのでわざわざ手に取らないといけないような本ではありません。

3月(平均勉強時間: 0m/d)

この月はマセマすら読んでないしペンも一切持ってませんでした。
夜遅くまで遊んだ後徹夜でTOEICを受験することになり、時期的に受け直すこともできなかったのでもっと早くTOEICを申し込まなかったことをとても後悔しました。

4月(平均勉強時間: 1h/d)

上旬はNAISTの入試で必要な小論文の準備を主にしていて、東工大対策は何もしていませんでした。
4月下旬に説明会があり、研究室を訪問して、僕が希望している研究室はB日程だと毎年首席か次席の学生のみが入っていること(多分B日程は各研究室につき1つしか枠がない?)、椅子が足りなくなるくらいの大人数が志望研究室の訪問に来ていたこと、他の学生と比べて僕の知識量・勉強量が足りなさすぎることなどを知り、危機感を抱きました。
研究室の先輩に「過去問っていつからやり始めればいいんですかね?」と質問したら「今すぐやり始めていいよ」と言われたのでできるだけ早く過去問に取り組もうと思い、まずはオートマトンや数理論理学の資料をざっと読んで全体像を理解しました。資料を読んだとはいえ、全然入試問題が解けるような理解度ではありませんでした。
この頃にマセマの確率統計の本も一周眺めた気がしますが、理解が浅く何も身についていませんでした。

5月(平均勉強時間: 5h/d)

過去問をちょっと見てみたところ、1,2月に勉強した数学を全て忘れていることに気がついたので5月上旬の2週間でマセマを全部やり直しました(微積・線形代数・確率統計のゼミと演習)。ゴールデンウィーク明けから平成18年のものから順に過去問に取り組み始めました。
過去問で間違えた問題の記録をつけていたのですが、データ構造とアルゴリズム・プログラミングは8割程度解けていて、それ以外は2割程度しか解けてませんでした。というか、ほとんどの年で1~3個くらい1問も解けない大問がありました。特に数学で実力不足を痛感し、マセマでは足りないのかなと考えもしました(実際、マセマだけでは厳しいですがマセマした後に過去問から学べば十分でした)。
ただ、これは計算工学時代の過去問が難しかったせいでもあると思います。情報工学系時代の過去問を解く頃には数学もオートマトン・数理論理学も半分くらいは解けるようになっていました。
なので、過去問を解くときは昔のものから解き始めず、一旦情報工学系時代の新しめの過去問を解いてみることをオススメします。(あと、平成29年度か平成30年度の過去問はなぜか公開されていない?っぽくて見つかりませんでした)。

6月(平均勉強時間: 5h/d)

5月に続き過去問演習をメインに進めて、オートマトンと数理論理学の資料の読み飛ばしていた所もちゃんと資料を読んで理解していきました。
過去問演習を2周くらいした後、演習に使わずに勉強後の自分の実力を測るために取っておいた最新の過去問を解いてみたところ数学8割その他9割くらいは取れるようになっており、先輩の話によると合格最低点は数学6割その他8割くらいらしいので合格点は取れるようになったみたいでひとまず安心しました。
ただ、この時点では数学はほとんど線形代数しかちゃんと勉強しておらず解析や統計の知識はスカスカだったので、過去問で合格点が取れたのも単に出題されたのが線形代数だったというだけです。

出願もこの時期にしました。研究計画書にはNAISTの入試で考えた研究計画を書いたので、他の受験生と比較するとかなりちゃんとした研究計画書になっていたと思いますがA日程には選ばれませんでした。結局A日程に選ばれるには、研究計画書なんかよりも、「高いGPAを取っていること」と、「志望する研究室の人気があまり高くないこと」が重要なのだと個人的に考えています。GPAが3.9の人でもA日程取れなかったという話も聞くので、やはり内部生に人気な研究室でA日程を取ることは難しいのではないでしょうか。

7月(平均勉強時間: 7h/d)

上旬はNAIST対策で線形代数と微積をメインに色々知識を詰め直しました。理数アラカルト筑波大の武内先生の授業ノートを読んで線形代数の細かい知識を入れたのもこの時期だったと思います。
NAISTの試験が終わってからはとにかく東工大の過去問を解きました。何度やっても間違えてしまう問題があったので、5周してようやく一旦全ての問題を一通り解けるようになったという感じです。過去問を解くことで特に線形代数に関する理解が深まりました。過去問を解くときに解けなかった問題の解答をChatGPT(GPT-4)に聞くこともあったのですが、ちゃんと理解した後にChatGPTの回答を見るとかなり大胆に間違っていることもあってChatGPTへの信頼度が下がりました。

8月(平均勉強時間: 4h/d)

7月末にはもうやるべきことはほとんど終わっていて、合格はできると確信していたのでこれからは首席を取って志望研究室に配属されるための勉強です。
数学で新しい知識を詰め込むことはあまりせず、すでに知っている知識の復習や過去問演習で間違えた箇所の再確認をしました。数理論理学は健全性や完全性といった、試験には出ないだろうけど資料には載っていた抽象的な話があまり理解できていなかったので一応一通り理解しました。
また、オートマトンと数理論理学に関しては自分用に知識のまとめを作り、復習しやすいようにしました。これらのまとめは以下の記事で公開しています
8月はとにかく退屈で、モチベーションも下がっており早く試験本番を迎えたいと思っていましたがなんとか勉強は続けられてよかったです。


受験本番

筆記試験

試験日の前日に東京に向かいましたが、台風で新幹線が止まり3時間遅れくらいで東京に着きました。東京に着く頃には24時を回ってたなんて人もいたので、可能であれば余裕を持って東京に着いておきたいところです。
ホテルは東京インに泊まりました。大岡山へのアクセスもいいし安くて綺麗なのでとても気に入っています。
試験会場は人が多くてびっくりしました(筆記試験受験資格者/B日程受験者数は265名で、欠席もあまりいなかった)。他の受験生を見ると、自分で作ったまとめノート?や見たことない教科書を使っていて、付箋びっしりのマセマを使ってるのは自分だけで恥ずかしかったです。
パッと見た感じ数学の問題が少し面倒そうな問題だったので第一問は飛ばして第二問から解き始めました。確か15分程度余裕を持って全問解き終えて、迷った問題の見直しをしていたら時間切れになって試験が終了しました。結果的に数学で1問、プログラミングで1問間違えたと思います。
満点逃したし他の受験生とあまり差がつかなかったかなあと思ってましたが、帰り道で他の受験生が「導出木の意味が分からなかった」と話しているのを聞いて、受験者のレベル感があまり高くなさそうで安心しました(口頭試問で彼の姿は見かけませんでしたが)。

口頭試問

筆記試験の日と同じく東京インに泊まりました。
情報工学系の筆記試験受験資格者265名のうち、口頭試問に進んだのは42名でした(つまり筆記試験の倍率は6.3倍でした)。口頭試問は欠席している人も少しいるようだったので口頭試問に進んだ時点で研究室を選ばなければ合格と思っていいんじゃないでしょうか。
口頭試問にはスーツで臨み、他の学生もスーツの人が多かったですが私服の人もちらほらいました。スーツの人は大体外部生だったんだと思います。
口頭試問は筆記試験の成績順に受験者が面接室に呼ばれるのですが、僕が1番に呼ばれてそこで自分が1番の成績を取ったことを知りました。
口頭試問で聞かれた内容は、「卒業研究の内容を30秒で説明して」というものだけで、あとは志望研究室の確認でした。卒業研究の内容を話している時も特にメモなど取っている様子もなく、深掘り質問もされなかったので本当に形式だけの面接という感じがしました。
9:30から試験が始まり、成績順に受験生が呼ばれますが僕は最初に呼ばれたので9:50にはもう試験が終わって帰っていました。

首席をとることについて

メリット

言わずもがなですが、好きな研究室に行けることです。
あと、口頭試問で早く帰れます。口頭試問では、自分の順番が呼ばれるまでは待機室で待つことになりますがスマホが使えず暇なので、暇つぶしのために本を持参する受験生もいます。しかし早く呼ばれるならそもそも暇つぶしせずに済みます。

首席を狙うには

東工大の院試は問題の難易度が低く、首席を狙うには試験でほぼ満点を取る必要があります(合格最低点が数学6割その他8割、首席狙うには合計で9.5割やそれ以上が必要)。よって高得点者たちの間では筆記試験の点差が開きづらく、上位層ではTOEICの点差のウェイトが重くなります。TOEICの配点は全体の1/10と非常に低いですが、首席を狙うのであればTOEICでもある程度高得点を取るべきかもしれません。

まとめ

このように、僕のように有名大学出身では無く、試験対策を始めるのが遅い人でも東工大の院試で首席を狙うことは十分にできます。
僕が首席を取れた理由、それは「過去問を何周も解いたこと」です。
しかし、過去問をただ繰り返し解くだけでは学習効率はかなり低いです。
なぜなら院試の過去問には解答がついていないため、過去問を解いて解答を確認し、自分にどのような知識や能力が足りなかったかを知るというフィードバックループが回せないからです。過去問演習には、過去問の解答を持っていることが重要なのです。
解答無しに過去問演習をする場合、自分の答えが正しいかどうか分からず不安なだけではなく、自分の知らない知識を得ることが非常に困難になります。
幸運にも僕には、自作した東工大の過去問の解答を渡してくれた大学の先輩がいます。
過去問演習では彼の解答を大いに活用し、分からなかった問題の解き方を確認し、効率よく勉強ができたことで首席合格することができました
彼が過去問の解答を提供してくれなかったら僕は倍率6倍越えの試験を首席で勝ち進むことはできなかったと確信しています。

そこで、今回僕は彼の解答をもとにして、彼の解答で間違っていたところや不完全だったところを補完してパワーアップさせた自作の過去問の解答を公開することにしました。
この解答集は、上位合格した先輩と首席合格した僕の解答を組み合わせているため解答の質は高いと思います。また、他の過去問解答には載っていない古い問題の解答が載っており、かなり学べることは多いと思います。さらに、高額で取引される院試の過去問集の中では今だけ破格の値段で提供しています。
院試は情報戦です。ぜひ僕の記事や解答集などを参考にして、他の受験生に差をつけてください!


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