NAISTの過去問の解答・誤植訂正
この記事では僕が受験した時の数学の問題や先輩方の合格体験記に載っていた問題・解答の訂正やあまり知られていないであろう簡単な解き方を扱います。間違ってる解答があったら「フンッ、こんなレベルでも合格できるんだな」って鼻で笑ってください。
問題1
v=(v1,v2)に対して、以下のどれが線形写像じゃない?
(a) T(v)=(v2,v1)
(b) T(v)=(v1,v1)
(c) T(v)=(0,v1)
(d) T(v) =(0,1)
(e) T(v) =v1 - v2
(f) T(v) =v1v2·
解答
普通に線形性を調べて解答してもいいがそれじゃ時間かかるから…
行列Aを用いてT(x)=Axと表せるならば、
T(x)は線形写像の条件を満たす
(証明)T(λx+μy)=A(λx+μy)=λAx+μAy=λT(x)+μT(y)
よってそれぞれに対して表現行列Aを見つけていくと速い。
(a)A=[0 & 1 \\ 1 & 0]よって線形
(b)A=[1 & 0 \\ 1 & 0]よって線形
(c)A=[0 & 0 \\ 1 & 0]よって線形
(d)T(0)≠0よって線形じゃない
(e)A=[1 & -1]よって線形
(f)T(λv)=λ^2 v1v2 ≠ λT(v) = λv1v2よって線形じゃない
問題2(問題の紹介のみ、解答略)
行列Aの固有値求めろ。Aと同じ固有値を持つ異なる行列を求めろ。
関数の線分の長さ求めろ
問題3
1 0 2
0 -1 -2
2 -2 0
を対角化する行列Uを求めろ
解答
(以下、与えられた行列をAとします。)
これも教科書通り普通に解いてもいいのですが、僕なりの楽な方法は、固有値を求めた後、固有ベクトルをx=[x1, x2, x3]^Tとすると
Ax=λxの拡大係数行列を簡約化して
[A | λx]=
1 0 2 | λx1
0 -1 -2 | λx2
2 -2 0 | λx3
->
1 0 2 | λx1
0 -1 -2 | λx2
0 0 0 | λx3 - 2λx1 - 2λx2
より
x1 + 2 x2=λx1 (<=> 2 x2 = (λ-1)x1)
-x2 - 2 x3=λx2 (<=> 2 x3 = (λ+1)x2)
0=λx3 - 2λx1 - 2λx2
という連立方程式が導けて、あとは固有値をそれぞれ代入してx1=1とでもおいて計算すれば、3つの固有値を求めるのに簡約化を1回行うだけで済むから計算量減らせる気がします。
でも実は(固有値が重複してる場合を除いて)x1=1とおくことで変数が減るのでn-1個の方程式を解くだけでよくて、
2 x2 = (λ-1)x1
2 x3 = (λ+1)x2
の二つ方程式のλに各固有値を代入してx2, x2を求めればいいです。(だからこの問題に関しては本当は簡約化さえしなくてもこの連立方程式が得られて答えが導けます。)
あ、固有ベクトルの標準化は忘れないように。あと固有値が少ない時や重解の時はあんまり変わらないと思います。
以下GitHubに上がってた問題の解答訂正など
問題4
これの線形代数の(11)
解答
解答例みたいにしてもいいが、楽な解き方は
Ax=λxより
A^2 x = A(λx) = λAx = λ^2x
よってA^2の固有値はλ^2で、A^2=Aだからλ^2=λよってλ=0,1
問題5
問題4と同じくこれの線形代数の(12)のA
解答
|A^k|=|A|^kかつ|A^k|=|E|=1よって|A|≠0なのでAは正則
問題6
問題4と同じくこれの線形代数の(15)のA
解答
ケーリーハミルトンを使いましょう。
問題7
問題4と同じくこれの解析の(3)について
問題がミスってるけどΓ(1)とΓ(2)の間違いかな。それでまあ数学的帰納法でしょう知らんけど。
問題8
これの7/7の(2)の2の解答について
解答だとなんかジョルダン標準形作ってるけどこれ元々ジョルダン標準形なので固有ベクトルをかける意味はありません。三角行列の冪乗の公式を使いましょう。
問題9
これの解析の1-2の解答について
分散の式モドキと書いてありますがこれは指数分布の分散の式そのままです。
aに(1)で求めたa=1/λを代入すると1/λ^2となり、指数分布の期待値1/λ、分散1/λ^2が出てきます。
問題10
これの線形代数の問題
det A=-1の時det A^2, det(-A), det(0.5A), det(A^{-1})を求めよ
解答
det A^2=|A|^2=1
det(-A)=(-1)^n |A| = (-1)^(n+1) (nはAの次数)
det(0.5A)=(0.5)^n |A| = -(0.5)^n
det(A^{-1}) = 1/|A|=-1
基本的な性質ですが案外知られてない気がします。
問題11
NAIST合格体験記2021(2022年入学 情報科学研究科 第1回)より
行列Aの固有値と固有ベクトル、A^∞を求める問題。これは
0.4 0.2
0.6 0.8
の書き間違いですね。列の和が1になる、いわゆる確率行列ってやつです。
固有値には必ず1が含まれます。
他にも過去問を探した際に誤植や気になるところなど見つけた気はしますが大体こんな感じだと思います。