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法務が最強のビジネスパーソンの素地を作る(2021/12/06追記)

ここ最近法科大学院の人気が低迷し、弁護士や企業法務に携わる優秀な若手人材が減少する可能性が危惧されるところです。
ただ、私は「法務業務に携わること」や「法律を学ぶこと」を実践することは、ビジネスパーソンの基礎を構築するのに大変有意義だと感じています。
以下で、その具体例を書いていきます。

事実を大事にすること

法学部や法科大学院で勉強していても、実務に出ても、「事実を大事にしろ」と口酸っぱく指導されます。その結果、殆どの法務に関わる方は、事実を大事にすることが基本動作となっています。
ここで「事実を大事にする」とは「事実事実以外とを区別することに他なりません。

例えば、契約書の合意内容もあくまであるべき姿」であり事実そのものではなく、その状態が事実かどうかは、この目で見ないとわかりません。自分も契約書上で禁止されている行為を、海外の取引先が平気で実施している場面に遭遇したことがあり、きちんと目で見て、耳で聴いて事実を掴むことが重要ということを思い知らされたことがあります。

法務以外のビジネスパーソンにおいても、「リサーチ」として事実の拾い集めを日常的に行います。ここで我々は「事実」と、それらを繋ぎ合わせて立てた仮説を明確に区別して取り扱うことを求められます

なぜ、事実と事実以外を区別することが必要かというと、意思決定の判断材料を見誤らないためです。
実際のところ、何かを判断する際に、綺麗に整った事実が出揃うということは稀です。このため、事実だけでは判断がつかず、事実を繋ぎ合わせた「仮説」が判断の材料になることが多いわけですが、ここで、事実と仮説が混同されてしまうと、判断権者に正確な情報がインプットされず、判断の方向を誤る可能性が出てきます。この意味で、事実の切り分けが重要になります。

こうした事実を大切にする姿勢は、法務パーソンに基本的に備わっている姿勢であり、ビジネスパーソンとして非常に重要な素養と言えます。

言葉を大事にすること

法務の代表的な仕事として契約審査があります。ここでは特定の用語を定義し、それを当事者間の共通理解として約束事を決めていきます。不用意な言葉の言い換えを許容すると、各々の理解に齟齬が出る可能性があるからです。
従って、法務パーソンに言葉の定義を軽視する方は少ないでしょう。

ビジネスパーソンにおいても社内外問わず、言葉の定義の違いに翻弄されるケースがあるのではないでしょうか。

例えば、自分が経験したメーカーでは、製品に関する議論の中で「デザイン」という言葉がよく登場します。一般的な語法では、デザインは主に外観を指すことが多いですが、開発行為でいうデザインとは、「設計」を指し、大きく意味合いが異なります。

このように、それぞれの場面でどのような定義のもと、その言葉が使われているのかを蔑ろにしない法務の姿勢も、ビジネスでは非常に重要な基本動作と言えます。

論理的に考えられること

「ロジカルシンキング」という言葉が普及して久しいですが、無論、法学に論理的思考は不可欠です。

法的問題の解決は、法律の条文を読むことからスタートし、仮に条文にはドンピシャの定めがなくても、その条文が「どういった趣旨で設けられたのか」に立ち戻って目前の問題の解決を図ります。

こういった「趣旨に立ち戻る」という考え方は、ビジネスパーソンが行き詰まった時の一つの手段として有用なのではないでしょうか。

例えば、会社でイベントのコンテンツを考える場合、そもそも当該イベントが既存顧客への感謝を表すイベントなのか、新規顧客を獲得するためのものなのか、はたまた社員の福利厚生のために行うのかといったイベントの目的や趣旨を考えることで、実際に実行するべきコンテンツの内容は大きく変わります。必ずしも答えが一通りではない企画ごとでは、合理的な打ち手に辿り着くために、論理的発想が非常に重要です。

ただ、必ずしもビジネスはロジカルさで全てが決まっているわけでもありません

意思決定権者の意志や気持ちが、判断に影響することもあるからです。こうした意思決定が悪いわけではなく、「論理的に考えたらAであるが、今回は敢えて違うBを取る」という過程が見えていることが重要です。これによって、結果が出た後に振り返ることができるからです。

こうした意思決定の前提を作ることができる論理的思考は、ビジネスパーソン全般において必要な能力とされますが、法務の強みですので、活かさない手はないですね。

まとめ

以上、見てきたように、法務パーソンのビジネス基礎力は基本的に高いはずです。まだまだ日本では、法務出身者が、法務領域以外で活躍することが少ないですが、非常に潜在能力の高い人材の宝庫であることは間違いないと思っているので、自分も含めて、様々な領域へ影響をもたらせればと考えています。

なお、更に法務時代に実践して、次のキャリアに活きたポイントはこちらから!

画像提供:starline form freepik

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