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実際どうなの?リーガルオペレーションズver.2023

みなさん、こんにちは。
このnoteもまたかなり間をあけての投稿になってしまいました。この投稿は、裏法務系アドベントカレンダー2023の記事です。

昨日のAmi〜こちら個人情報担当ですさんからバトンを受けまして、本日は12日目の投稿となります!

誰がこの記事を書いているのか?

まず、簡単に自己紹介させてください!
元メーカー法務で、現在は契約書管理クラウドサービス「Hubble」でカスタマーサクセスの担当執行役員(CCO)と法務向けメディアのLegal Ops Lab(略してLOL)の編集長を兼務している、山下俊といいます。

さて、このLegalACの企画には、3年連続3回目の参加になりますが、今年は何を書こうかなと思っていたところ、意外にこの2年間、「リーガルオペレーションズ」がトピックに上がることが少なかったため、今回は、こちらを柔らかめにまとめておこうと思います!

リーガルオペレーションズとは?

この単語の意味については、様々なメディアでも解説がある通り、簡単に言えば、「いわゆる法務業務」以外の業務(かつては雑務と言われていたようなものも含め)全てとイメージするとよいと思います。なので新しい何かが生まれたというよりも、従来からあった法務関連業務が「再定義」されたと捉えても良いでしょう。

とはいえ、これだけでは、具体的にリーガルオペレーションズの中身を特定することは難しいため、発祥の地である米国では、主要な要素を類型化して具体化するような取り組みがなされています。これがCORE1214functionsと呼ばれるようなものです。

CLOCが定義するリーガルオペレーションズのCORE12の画像
CORE12(CLOCのウェブサイトより引用)

これに追随するような形で、日本では2021年に「日本版リーガルオペレーションズ研究会」が立ち上がり、日本にフィットする類型化された項目として、翌年CORE8が定義されました

日本版リーガルオペレーションズ研究会が定義するリーガルオペレーションズのCORE8の画像
徹底解説!リーガルオペレーションズとは?」(Legal Ops Lab)より引用

ぶっちゃけ、盛り上がってますか?

元々発祥の地であるアメリカでは、上記のCORE12を定義した業界団体Corparate Legal Operations Consortium(CLOC)が中心となって活動を展開しており、目立っています。実際にラスベガスで大規模なイベントを行うなど、かなり盛り上がっている様子が伺えます(行きたい…)。

一方で、日本はどうかというと、「日本版リーガルオペレーションズ研究会」(以下「研究会」)が立ち上がった2021年に、前述のCLOCの日本支部が設置され、日系企業の加盟も増えてきています。

そして、2023年には日経新聞でも「リーガルオペレーションズ」という言葉が登場したり、リーガルオペレーションズを主テーマとしたイベントが開催されるなど、徐々に認知度が高まり、盛り上がりを見せつつあるという状況です。

その上で、企業における実際の取り組みはどうでしょうか。

私が2023年12月時点で認識している範囲ですが、少なくとも数十人規模のメンバーがいる法務組織では、「リーガルオペレーションズ」という言葉が登場する前からこうした役割を持つメンバーが存在しており、今回の「再定義」を機に、数年前からリーガルオペレーションズへの取り組みを強めている企業も多いようです。そして、従来そういった役割が必ずしもなかった企業でも、「リーガルオペレーションズ」の名を冠した専任ポストや部署が登場しつつあります。

その一方で、こうしたリソースがないベンチャーやスタートアップでは、BizOpsやオペレーションエクセレンスをミッションに持つチームが、法務業務のうち、テクノロジーの活用や業務フローを中心に改善する支援をしている場合もあります。

いずれにしても日本では、まだリーガルオペレーションズの取り組みは始まったばかりで、黎明期といって差し支えないように思われます。

個人的にはこの業務は、やはり実務を知っている法務経験者の方が適任だと感じており、法務パーソンの新たなキャリアパスとしても可能性を探っていきたいところです。

とはいえ日本では広がらないのでは?という疑問

こういった疑問を感じられた方もいらっしゃると思います。

アメリカでは、高騰する法務のコストの適正化を経営陣や投資家から要請される中で、コロナによるネガティブな景気変動も加わり、法務の周辺業務の効率性を高める必要性がより高まったことが普及の大きな要因でした。一方で、日本では必ずしも法務(弁護士)のコストが高いと経営から認識されている企業は多くはないでしょう。この点では米国と日本とでは事情は違います。

ただ、むしろ日本では、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(いわゆる「在り方報告書」)の公開が大きく影響しており、今後も影響していくのではないかと感じています。

つまり、この「在り方報告書」の公開によって、法務にも事業貢献の機能が一層求められるようになり、この機能を果たすために、より分析的に法務業務の効率性を見つめ直す必要性が高まったことがあるように思われます。要は、「高い専門性」をもった集団でありつつも、会社の一機能として他の部署が当然にやっていること(戦略を作る、効率性を高める、人材育成のロールモデルを作るなど)を今まで以上にしっかりやりましょう、ということです。

このため、私は、今後も企業における法務機能の在り方が議論され続ける限りにおいては、日本でもリーガルオペレーションズが定着し、改善され続けるのではないかと考えています。

リーガルオペレーションズに興味を持った方へ-ワタシ的CORE8の歩き方-

ここまで読み進めてきて、実際にリーガルオペレーションズに興味を持って頂いた方には、まず前出の「CORE8」を使った取り組みをオススメします。私なりにCORE8を分析した結果として、以下のようなCORE8の「歩き方」をオススメしたいです!

①まずは各COREのレベル1をチェック!

各COREでは、レベル1〜レベル3までのチェックポイントが設けられており、全部にチェックがついたら当該レベル達成!といったような設計になっています。

私が見てきた限り、レベル1は比較的ベーシックな内容が多い(その反面でレベル2はチャレンジングなものが多い)ので、まずは各COREのレベル1の達成状況をチェックすると良いでしょう。

CORE8「業務フロー」の画像
「業務フロー」の各レベルの内容(日本版Legal Operations CORE 8 EVENT Reportより引用)

②課題感に合わせて、個別のCOREを深掘る!

その上で、一番メジャーなアプローチの仕方はこれではないでしょうか?

例えばナレッジマネジメントについて課題感があったり、今から取り組もうとする方向性に不安を感じる場合には、CORE8の「ナレッジマネジメント」のレベル2及びレベル3の項目のうち、いくつかを今期に達成できるよう、計画を立ててみる、といった具合です。

「ナレッジマネジメント」の各レベルの内容(日本版Legal Operations CORE 8 EVENT Reportより引用)

③結局戦略ありきなのではないか?に気づく

CORE8は確かにそれぞれ8つの項目が独立し、かつフラットに存在しているように見えています。しかし実務に落とし込もうとした場合、企業や法務(組織)の戦略によって、各COREで取るべきアクションが変わってくることに気づきます。故に、何を取り組むにも、まず戦略を仮置きすることが実は最初にくるべきアクションであるということになるわけです(実際に研究会でも、そのような言及があります)。

もっとも組織の戦略を考えようとなると、動きが重くなることも現実にはあると思われるので、個人的には、前述したように各COREの取り組みを先行させてみるということもあって良いのではないかと思ったりしてます。

④会社の状況に合わせて複数のCOREを相関させて改善に取り組む

各COREは、法務業務を一つの角度から分類したものに過ぎないため、当然相互に関係します。つまりCORE8は、個別に扱うだけではなく、隣接する項目と関連させながら考えることも重要ですし、非常に良い示唆を与えてくれます。

とはいえ、理論的な組み合わせ方は非常に多岐に渡るため、ここではよく使う組み合わせの例を2つ、ご紹介しておきます!(なお、図中には記載していませんが、いずれの場合においても、法務の「戦略」が存在していることが前提となっています。)

【組み合わせ例①】業務の効率化と個々のメンバーの成長の考慮要素

生成AIが登場し、法務の働き方の変容が予想される昨今ですが、その一方で(むしろ、それだからこそ)人材の重要性は高まる一方です。

人間がやるべき業務は何なのか、これに集中するための業務の進め方と効率の高め方はどう考えるべきなのか。上記の図にも記載した通り、CORE8のうち、人材、業務フロー、ナレッジマネジメント、テクノロジー活用の4つの要素を紐付けながら考えるのがオススメです!

【組み合わせ例②】法務組織の形成または成熟に関する考慮要素

人材と並んで、法務組織をどのように設計するかも重要なテーマの一つです。特に法務は、従来から予算も決して潤沢ではない中で、近年では人材の獲得競争も激化していることから、どこまでを法務組織内で対応し、どこからを事業部門などの非法務部門に委ね、また外部専門家に委託するか、といった検討が必須になるでしょう。

こうしたヒト・モノ・カネを俯瞰して見るためには、CORE8のうち、人材・予算・外部リソース・マネジメントの4つの要素を紐付けながら考えるのがオススメです!

まとめ

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

そもそもCORE8は、皆が絶対にレベル3まで至らなければならないというものではありません。というのも、より多くの企業の指針となるようにいわば最大公約数的に内容を定めていることもあり、COREの各項目が自社の現状に当てはまらない箇所も往々にしてあるからです(例えば一人法務など)。

また、CORE8はベータ版ということも言及されており、金科玉条のごとく扱うというよりも、実際に実務で活用されることで、より内容がシャープになっていくことが想定されています。是非業界的にも活用が進むこと楽しみにしています!

そして、私も皆様の取り組みを広く世の中にお伝えする役割を、微力ながら担えればと思っています!

次は、お待ちかね、 ジュリスト・バニー🐰さんです!お楽しみに!


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