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【考察】円安が進んだら、日本食品の輸出はどう伸ばすべき?

前回の記事でも触れましたが、、、円安が進んでいます。

1.円安の進捗の現状について

4月29日の外国為替市場でドルが対円で一時1ドル=160.245円を付け、1990年4月以来34年ぶりの円安・ドル高水準を付けた、とのこと。(その後、1ドル=153円台まで戻しています。)

円安傾向は2022年から強まり、それまで110~120円前後だったのが、2022年は130円程度、2023年は140円程度となり、今年に入り、さらに11%近く下落しています。

さて、日本の食品については、輸出数量(金額)は年々、伸びています。
(以下のNHK報道、農水省発表の食品の輸出額データをご覧ください。)

ジェトロの分析によると、この伸びは円安の押し上げ効果だけによるものではなく、近年、食品や雑貨類などの消費財は、人気の高まりとともに着実に輸出が上向いており、この伸びも輸出トレンドに沿うものであり、
円安は、このトレンドを底堅くするための補強材料の役割を果たしている、とのこと。

その上で、より大幅に円安が進んでいったら、どういう影響が出てくるのか企業はどういう輸出戦略をとるべきなのか、気になります。

輸出面では、良い影響が中心だとは思いますが、一方で、輸入では原材料費アップとしての影響が出ており、総合的な分析が必要です。

2.円安時にとるべき企業の輸出戦略について

さて、ここでは、以下の藤原さんの資料を参考にさせていただき、円安時にとるべき企業の輸出戦略について、分析してみます。

一般的には、、、
円安は、輸出企業にとっては海外へ商品を安く売ることが可能になるため、価格競争力が高まり、収益の上昇が見込めるというメリットが生まれる。日本製の商品は海外で高い人気を誇りますので、円安によって低価格で販売されるようになれば、売上量が増えることが期待できます。

3.工業製品の輸出の場合

ところが、藤原さんの考察によると、
2000年代以降、日本企業の輸出、特に工業製品(BtoB)輸出については、「いいものを、安く」から「高くても、売れる」戦略に転換した結果、円安下でも値下げは起きにくいそうです。

以下、藤原さんコメントを引用します。

輸出企業が円安局面で行う価格設定行動は主に以下の2つに分けられます。

  • 現地での外貨建て価格を引き下げ、販売数量の拡大を目指す。

  • 現地での外貨建て価格は変えず、円建て価格上昇分の為替差益を得る。

過去、日本企業は、円安になると現地で値下げを行ってきました。しかし、最近の円安局面では値下げは行わず、逆に今は現地の販売価格を引き上げているのです。どういうことか。理由としては、

  1. 海外の競合品では値上げが進んでおり、輸出企業も現地の相場に合わせている。

  2. 値下げをしても販売数量の拡大が見込めない。

が考えられます。1は企業として極めて自然な行動です。市場価格が上昇している中での値下げは不自然です。2のほうは、インフレ下でも値下げで販売数量の拡大が見込めるなら、値下げは価格戦略として妥当性を持ちます。それでも値下げをしないのは、値下げをしても販売数量は拡大しないからです。円安による原材料コストの上昇が利益を圧迫する中で、数量効果が期待できない値下げを行う意味はないでしょう。

ではなぜ値下げをしても販売数量が拡大しないのでしょうか?それは、日本の工業製品(BtoB)の最大の特徴はコモディティ化していない点にあります。半導体装置をはじめ、日本の工業製品の多くは他国企業では簡単に真似できないオンリーワンなものが多いのです。つまり日本のBtoBは「高くても、売れる」がゆえ、不毛な価格競争の波に巻き込まれることがない。値下げでシェア拡大する動機も必要性もないのです。「高くても、売れる」製品に特化することで円安局面でも値下げをする必要がない、とのことです。
(以上、引用終わり)

4.食品の輸出の場合

ここからは、自分の考察になります。
結論から言うと、引用した工業製品の輸出の考え方と同じ戦略をとるべき、と考えます。円安による値下げをするのではなく、現地価格は据え置き、円建て価格上昇分の為替差益を得るべき、と考えます。
このためには、食品においても「高くても、売れる」製品づくりを行い、また、日本食の特徴(オンリーワンであること、食品安全性の高さなど)を明確に打ち出すプロモーション戦略をとることが求められます。


(参考1)NHKの報道です。

(参考2)解説資料その1です。本文中で引用した藤原さんの考察です。

(参考3)解説資料その2です。この資料は、今回は引用はしていません。

前回書いた、「円安」に関する投稿です。


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