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【エヴァ考察】 人類補完計画とコア化

今回は新劇場版の台詞で登場した「コアとは魂の物質化」を人類補完計画と関連づけて考えていきたいと思います.

1.人類補完計画と浄化

まず新劇の人類補完計画を2人の台詞でおさらいします.

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ゲンドウ「知恵の実を食した人類に神が与えていた運命は2つ.生命の実を与えられた使徒に滅ぼされるか、使徒を殲滅し、その地位を奪い、知恵を失い、永遠に存在しつづける神の子と化すか.我々はどちらかを選ぶしかない.ネルフの人類補完計画は、後者を選んだゼーレのアダムスを利用した神への儚いレジスタンスだが果たすだけの価値のあるものだ」

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(Q・C-0812B以下)
カヲル「しかし、リリンは自らではなく世界の方を変えていく.だから自らを人工的に進化させる為の儀式を起こした.古の生命体をニエとし、生命の実を与えた新たな生命体を造り出す為にね.全てが太古よりプログラムされていた絶滅行動だ.ネルフでは、人類補完計画と呼んでいたよ」

2人はいずれも人類補完計画を説明しています.この計画が目指す人類の最終形態、“知恵を失った神の子“(ゲンドウ)と、“生命の実を得た新たな生命体”(カヲル君)とは同じものを指します.

リツコ「私たちは、神に屈した補完計画による絶望のリセットではなく、希望のコンテニューを選びます」

神のシナリオ(太古のプログラム=死海文書)では、使徒殲滅の先に待つ結末は使徒に替わりヒトが使徒になることでした.これでは振り出しに戻るというか(“絶望のリセット”)、無限ループを連想させます(円環の物語?).

ゲンドウ「セカンドインパクトによる海の浄化、サードによる大地の浄化、そしてフォースによる魂の浄化」

カヲル君が言うように、インパクトとは人類が自らだけでなく世界をも変えてしまう儀式でした.浄化という世界を赤に染めるコア化、新劇場版で強調される世界観.

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(破C–388)
 ゲンドウ「〔セカンドインパクトの爆心地である旧南極は〕ヒトさえ立ち入ることのできぬ、原罪のけがれなき、浄化された世界だからな」〔〕内引用者補足

知恵の実を食べた原罪で汚れた人類.ヒトのままでは生きていけない赤い海と大地が広がっていく.原罪のけがれを落とす意味の浄化.インパクトがもたらすコア化は世界が知恵を失っていく過程でした.




1.1 魂の物質化

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ゲンドウ「エヴァインフィニティを形づくるコアとは魂の物質化.人類という種の器を捨て、その集合知をけがれなき楽園へと誘う最後の儀式だ」

さて、コア化やコアからなる生命体とは何だったのか.再度確認すると、人類補完計画によって得られる人類の新たな器とはエヴァインフィニティ=神の子=生命の実を与えられた生命体でした.その神の子を構成する「コアとは魂の物質化」とはいったい.

まずこの“魂“について.旧劇サードインパクトで映像化されています.

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冬月「人類の生命の源たるリリスの卵、黒き月……今さらその殻の中へと還ることは望まぬ」(26話‘C-82A)

リツコ「魂の入った容れ物はレイ1人だけなの.あの娘にしか魂は生まれなかったの.ガフの部屋は空っぽになってたのよ」(23話C-317)

画像のように旧劇では地球上の赤い光の粒子が黒き月(ガフの部屋?)に還り、リリスに融合する様子が描かれました.この赤く光るものが魂です.新劇ではこれを物質化したコアなるものが“永遠の存在“エヴァインフィニティを形づくり、また使徒の弱点部位となっていました.

この魂と永遠の存在という言葉の組み合わせ.そこから連想できるのは、誰しも1度は聞いたことのある“霊魂不滅“説です.

様々な宗教、日常信仰等で扱われるテーマです.一般的に魂とは、肉体とは別に人に備わる精神的、非物質的なものを指します.ここでは霊魂と魂は同義と扱います.魂の不死.不滅の魂を物質化したからこそ、それが永遠の存在を形づくることができる.劇中で全身コアの機体が強いわけです.

(Q・C-1265,1266)マリ「無駄ダマはやめときなよ.あれ全部、コアだから.私らじゃ、手の打ちようがニャイよん」

「コアとは魂の物質化」とは霊魂不滅を背景に理解されるものでした.そして上記旧劇の画像に見られるように、この霊魂不滅の設定自体は旧作含む全てのエヴァンゲリオンを貫く基本設定だったといえます.このように霊魂不滅と密接な関係にある,魂とその器としての体という心身二元論がエヴァの世界設定の土台となっています.綾波レイがリリスの魂とユイのクローン体で構成されることや,エヴァが神のコピーからなる体に母親の魂が宿らせてあることにも見い出せ流ところです.




1.11  フォースインパクト周辺事情

ところで魂は不滅でもそれが物質化してはじめて生命は永遠の存在となる.ヒトの場合はフォースインパクトを待たなければなりませんでした.

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ミサト「すべての魂をコアに変え、エヴァインフィニティと同化させるフォースインパクトの始まりか」

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エヴァインフィニティとは人類の新たな器であり体(body)となるもの.そしてガフ(guf)とはヘブライ語で魂の入れ物である体を意味します.インフィニティがガフの扉から出てきたこと、入り口にガフの守り人(ネルフ戦艦)がいたことはこうした用語に関係します.また、上記画像のようにフォースが津波の表現になるのも、Horseman(ネルフ戦艦)が災い・天災をもたらす『ヨハネの黙示録』の四騎士に由来するからでした.

『ヨハネの黙示録』第6章(丸括弧内数字は節番号.太字強調は引用者)
(1)「また私は、子羊が七つの封印の一つを解くのを見た.そして、四つの生き物の一つが、雷のような声で「来なさい」と言うのを聞いた.」
(2)「私は見た.すると見よ、白い馬がいた.それに乗っている者は弓を持っていた.彼は冠を与えられ、勝利の上にさらに勝利を得るために出て行った.」
(3)「子羊が第二の封印を解いたとき、私は、第二の生き物が「来なさい」と言うのを聞いた. 」
(4)「すると別の、火のように赤い馬が出て来た.それに乗っている者は、地から平和を奪い取ることが許された.人々が互いに殺し合うようになるためである.また、彼に大きな剣が与えられた.」
(5)「子羊が第三の封印を解いたとき、私は、第三の生き物が「来なさい」と言うのを聞いた.私は見た.すると見よ、黒い馬がいた.これに乗っている者は秤を手に持っていた.」
(7)「子羊が第四の封印を解いたとき、私は、第四の生き物の声が「来なさい」と言うのを聞いた.」
(8)「私は見た.すると見よ、青ざめた馬がいた.これに乗っている者の名は「死」で、よみがそれに従っていた.彼らに、地上の四分の一を支配して、剣と飢饉と死病と地の獣によって殺す権威が与えられた.」
『新訳聖書〔新改訳2017〕』(新改訳聖書センター)



2.アドバンスド・アヤナミシリーズとコア

ここからは以上の理解をもとに関連しそうな事柄を見ていきます.以前、アドバンスド・アヤナミシリーズ(以下「アドナミ」と略記)が、生命の実由来の生命体ではないかと考察してきました.冬月先生の台詞をもう1度確認しましょう.

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冬月「アダムスの器のにえとなる、雌雄もなく純粋な魂だけで造られた汚れなき生命体.アドバンスド・アヤナミシリーズの再生」

アドナミは純粋な魂のみからなる.先ほどの考察に従えば、本来魂は精神的、非物質的なものに過ぎないのでヒト型の物体をつくれません.アドナミは物質化した魂、すなわちコアで造られた身体を持つとわかります.アドナミも知恵を失った生命の実由来の生命体だったのです.

コアからなる生命体といえば全身コアの方たち.

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(Q・C-1265)
マリ「ムダ弾はやめときなよ.あれ全部、コアだから」

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(Q・C-1408)
アスカ「こいつ、全身がコアか!」

第12使徒とアダムスの器たるMark.09です.アドナミやインフィニティも全身コアの生命体と推察できます.ネルフの人類補完計画とは全人類を全身コアの生命体へ移行させる計画だったといえます.

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冬月「人が人を救済する人類補完計画.その傲慢ごうまんの行き着く先がこれとはな」

結局、アドナミは生命の実を与えられ一足先に人類より“進んでしまった“存在といえます.“アドバンスド“の名を冠するのは伊達じゃない.

白き月同様公式がネタバレしていたことにしばらく気づきませんでした.



3.アダムスの器の覚醒

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マリ「悪いけど!オーバーラッピングのための!かてになってもらうわ…よっ!」

全身コア太郎といえば、シンエヴァで8号機の糧になったアダムスの器たち.総じてエントリープラグがありそうな脊椎せきついあたりを狙われていたように見えます.なぜでしょうか(進○の巨人?).

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(序C-0231)
「脊椎伝導システムを解放.接続準備」

おそらくアダムスの器を活動停止にするためですが、たとえばQでのアダムスの器(Mark.09)は黒波が脱出した後にアスカの攻撃により一度停止しますがすぐ活動を再開させたことをどう考えればよいでしょう.

これについては、まずMark.09に初号機同様に覚醒の概念があることを確認します.Qでの獣化2号機との戦闘シーン、原画では「カクセイMK9」と表記されています(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q アニメーション原画集下巻』278,290,298頁等).原画集ではアスカの「裏コード777」の時点でMk.09は覚醒しています.

ここから次の仮説が立てられます.Mark.09は覚醒するとパイロットがいなくなっても活動できる.しかしパイロットなしには覚醒できない.したがって覚醒前にパイロットを除けば覚醒を未然に防ぎ機体を停止できる.そのような設定があったのではないでしょうか.よってシンエヴァのマリはいずれも覚醒前だったアダムスの器を停止することができた(いずれ刊行されるシンエヴァ原画集でアダムスの器が覚醒状態だったらごめんなさい).

ちなみにマリのいう糧とは贄に換言できましょう.何かと贄となってきたアヤナミタイプはここでもその役目を負ったといえます.贄として喰われる、それが彼女らに仕組まれた運命だったのでしょうか.

それにしても8号機の噛みつきシーンかっこいい.特に口を開いてるところ.

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4.アヤナミタイプナンバー6とコア

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以前、この通称黒波がゼーレのアヤナミであり、アドナミの前身だった可能性、生命の実由来の可能性を指摘しました.もっとも、すると彼女も全身コア娘になるわけですが、画像の消滅の様子は冬月先生と同じLCLに見えます.次の画像の第4使徒のようにもっと深い赤でもいいはずでは.

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黒波が試作段階だからでしょうか?あり得る見解ではあります.

もっともそれだけではないでしょう.彼女は第3村で他人と触れ合い、これまでうまく捉えることができなかった心の動き、感情に言葉を与えることを知り、ヒトとしての振る舞いを学び、エヴァ史上もっとも人間らしい生活をしました.ポカ波と異なりエヴァなしに他人とつながりを持つことができた.つまり彼女はここでけがれにけがれ、ヒトを取り戻していた.個人的にこのような理解も加えたいと思います.

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今回は以上になります.最後までお読みいただきありがとうございます.


画像:©khara/Project Eva.

※追記(2021/08/25)
「1.1魂の物質かとコア」、「1.11フォースインパクト周辺事情」及び公式ツイートの引用の追加、表現の微調整をしました.

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