しあわせの木

ちいさなむらにはいいつたえがあります

ちいさなむらのちかくには、さみしくこだかいやまがあって、そのてっぺんの木においのりをするとほしいものがてにはいる、というものです

あるとき、ひとりのおんなのひとがむらにやってきました
おんなのひとはむらのいいつたえをきいて、木においのりをしにいくようです

むらのひとははんたいしました
なぜなら、いままでなんにんもいいつたえの木においのりをしにいって、とうとうかえってこなかったからです

むらのひとたちはいいつたえをしんじていませんでした

それでもおんなのひとはやまにはいっていきました

みっか、よっかたってもかえってこなかったので、むらのひとたちはおんなのひとのことをだんだんわすれていきました

あるはれたよるのことです
さみしくこだかいやまのてっぺんが、ひるまのようにあかるくなり、そしてだれかがおりてきました
それは、あのときのおんなのひとでした
おんなのひとはちいさなあかちゃんをだいていました

そして、むらのひとににっこりとわらい、そのままむらからかえっていきました

ちいさなむらはちょっとしたおまつりさわぎになりました

あのやまからかえってきたひとがいて、にっこりとしていたからです

いいつたえは、ほんとうのことだった、あのおんなのひとはこどもがほしかったんだ、と

むらのひとたちはみんなそれぞれ木においのりをしにいきました


でも、だれもかえってきませんでした


ちいさなむらはなくなってしまいましたが、どこからかいいつたえをききつけたひとびとがたびたび木においのりをしにくるようになりました


こだかいやまはけわしいみちでいっぱいで、あぶないどうぶつやなんでものみこむかわもあったので、 ほとんどはかえってきませんでしたが、なんにんかはほしいものをてにしてかえってきました

おうさまになっていたり、きれいなひとになったり、おとうさんおかあさんとてをつないでたり、ほしいものはそれぞれちがいました

でも、みんなにっこりとしていました
ほしいものがてにはいったからです

あるとき、さみしくこだかいやまのふもとがいちだんとさわがしくなりました

たくさんのけむりをはくきんぞくのうま、はがねのつばさをもつとり、おおきなやいばのぞう、だいじにだいじにはこんできたぴかぴかのはこ、それにもっとたくさんのひとがやってきました

そのひとたちは、はるかはるかとおくのおおきなおおきなくにからやってきました

おおきなおおきなくにのひとびとは、みんなのほしいものをおいのりしにやってきたようです


ひとびとはきんぞくのうまややいばのぞうをつかってやまをきりひらきました

けわしいみちはたいらに、あぶないどうぶつははがねのつばさのとりがやっつけました

なんでものみこむかわのみずがすっかりあかくなったころ、ひとびとはいいつたえの木のところにたどりつきました

ひとびとはさいしょよりすっかりすくなくなりましたが、おおよろこびで木にむかいました


そして、ぴかぴかの箱をはこび、あけました


そこにはおとこのひとがはいっていました

たくさんのくだにかこまれて、どくんどくん、しゅーしゅーとおとをならしたしかくにかこまれた、ぼうきれのようなおとこのひとでした

おとこのひとはなおらないびょうきにかかっていて、はこにはいっていないといきていけませんでした

おおきなおおきなくにのひとびとはやさしかったので、しなないようにたいせつにたいせつにおとこのひとをかんりしていました

ひとびとはいいつたえをどこかできいて、なおすためにやってきたのです

おとこのひとは、なんねんぶりかのそとのくうきがはだにふれ、ほとんどうごかないからだをふるわせました

そして、くだにかこまれたてを木にのばしたようにみえました、ようにみえました、なのはそれがせいいっぱいだからです

ひとびとのよろこびはどんどんおおきくなります


そのとき、ぱっとあたりがあかるくなりました

あまりにまぶしくひかったので、みんなめをつぶってしまいました

おとこのひとだけは、まっすぐひかりをみつめています

あたりがいつものあかるさにもどったころ、ひとびとはおとこのひとにおいわいのこえをかけました


でも、へんじはありませんでした


ちいさなはこのおとこのひとは、にっこりと、ながいながいねむりについていました


ちいさなはこのおとこのひとはほしいものをてにいれて、あとは、のこされたひとびとのひめいがさみしくこだかいやまをおおきくふるわせるだけになりました






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