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"雪が綺麗と笑うのは"

雪で思い出すのは、2014年ソチ五輪の時期だ。


2月はちょうど受験シーズンで、学校も休みが多かった上に、その年は雪の影響でやけに登校日が少なかった。
あの頃はたしか神奈川でも1〜2度は毎年のように雪が降っていて、そのたびに駅までの気の遠くなるような坂道を、お主、転びたいのか?と笑ってしまうくらいに底がツルツルのローファーを履いて、それでもサボらずに学校に通っていた。


あれから10年もの時が経ったけれど、この10年で、日本の四季はだいぶ変わってしまったね。


寒いのは苦手だけど冬は嫌いじゃないし、日が暮れても冷え込まない夜道を歩くのは、なんだか煮え切らない感じがするのだ。
マフラーで顔を覆い尽くしても鼻先が冷え切ってしまうような、瞬きをするとまつげに霜のように乗っかった雫がまぶたを濡らすような、そんな冬がときどき恋しくなる。
ふと思い浮かべてしまうような、冬の思い出、ありますか?


いつも通り、ふだん通りに仕事を終えて、一歩一歩踏み締めて駅を目指す。

外に出ると、想像以上にあたり一面は雪で覆い尽くされていて、わたしの足で歩き無事滑らずに、事故なく、家まで着けるのだろうか‥と一瞬不安になるほどだった。

思ったより駅に人はいなくて、みんなこの天気で仕事を早めに切り上げて帰れたのだろうか。どうかみんなが無事に、家まで辿り着けますように。
ライフライン、交通機関、医療機関など、天候に左右されることのない仕事を担う人々たちに、感謝と尊敬の念が止まらない。
誰かの思いやりの輪が繋がって、なんとか日常が保たれてるのだと想像するだけで、1日として当たり前の日常は存在しないのだと思い知らされる。

こういう非日常のときは、休める人は休む。無理せず大人しく過ごす。働かざるを得ない人たちがどうか、少しでも報われるような世の中であってほしい。



今日来院した患者さんひとりひとりに、足元は大丈夫だったか。帰り道も十分気をつけて。と声をかける。すると、かえってわたしが心配されたりしちゃって、あなたも帰る頃、気をつけてね、と。
寒くて寒くて疲弊しそうな心に、思いやりの灯がともって、じんわりと温かくなる。



ふと手を伸ばせばたしかにそこに在るような、求めればいつでも照らされるような、そんな温かい場所で、世界が溢れますように。

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