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パン作りになくてはならない酵母の3つの働き

酵母って何だろう

パンを作るとき、活躍してくれるのは酵母です。
主要な働きは以下の3つ。

・ふくらませる
・味を良くする
・いい香りにする

これらについて書く前に、そもそも酵母とは何かについて少し触れます。

酵母って何だろう。栄養素? などと以前の私は思っていました。
そしてパンを焼くようになり、調べました。

無数の微生物のうちの一つ

私たちの身の回りには、たくさんの微生物が存在しています。
微生物は目に見えず、見るためには培養することが必要。
でも、培養できる微生物だけではないといいます。
だから、世界中の微生物の総数は、未知。
すごい話ですよね。空気中だけでなく、植物の表皮や穀物、そして人の体内や畑の土の中…とにかくあらゆる場所に存在している微生物。
そのひとつが、酵母です。

酵母の活躍は多岐にわたる

近年、「腸活」が人気です。
腸内に存在する微生物の数によって栄養の吸収率が変わるのだとか。同じものを同じ量食べても、栄養をうまく取り込める人とそうでない人がいるということになります。
また、畑で野菜を作る際に使われることが多い「腐植」。
これは、土壌の微生物たちによって草や木が分解されたものです。
微量ミネラルを豊富に含んでおり、野菜の成長を助けてくれています。

パン酵母はエリート集団の一員

酵母もそうした菌や微生物の一種。核を持った単細胞です。
性質(菌株)が似ているものをひっくるめて酵母と呼びます。

その内、パンだけでなく、発酵や醸造に用いられている酵母は、おなじみビール酵母やワイン酵母、酒酵母など。
「サッカロマイセス・セレビシエ(日本語では出芽酵母)」と呼ばれる彼らは、酵母界のトップアスリートたち。菌株によって味や香りが変わります。

人と酵母の付き合いは長く、5千年以上前から。
味噌や醤油、お酢などの調味料づくりにも使われます。

酵母のお陰でパンができる

①パンを膨らませる酵母のちから

酵母も人間も代謝をするという点で共通しています。人間で言えば、呼吸したり食べたものをエネルギーに替えたりする仕組みです。

人は酸素を吸い込み、二酸化炭素を吐き出します。また、食べものを消化吸収するときに得た糖分は、体内のエネルギーに変わります。

酵母は、酸素があってもなくても生存可能。
酸素がある環境では、酸素と糖を取り込んで水と二酸化炭素に変えます。
酸素がない場合は、取り込んでおいた糖をアルコールと二酸化炭素に変えて、生きるエネルギーとします。

このとき酵母は、強い力で糖を分解し、アルコールとガス(二酸化炭素)が同時発生。その効果でパンは膨らみます。

ただ、元々小麦粉には糖分が少ないので、バケットやパン・ド・カンパーニュなどは膨らみはひかえめで、どちらかというと硬いパンになります。
作るときに糖を加えないからです。

②パンの味の決め手も酵母

酵母菌は孤独ではなく、乳酸菌、酢酸菌などと一緒に発酵種になります。これを共培養といいます。例えば、「サワー種」を使って焼いたパンに少し酸味があるのは、乳酸菌の働きのお陰です。

また、酵母自体にもアミノ酸やビタミンなどの栄養素がたっぷり。
これらが旨味成分となって、味わい深い天然酵母パンができるわけです。

一方、市販のパンの多くは、イーストというパン酵母のみを使っており、安定した大量生産向きの味になります。
また、使用されていることが多い「防腐剤」等の添加物には、冒頭で紹介したような腸内細菌の働きを抑えてしまうものもあります。

③パンのいい香りは酵母のお陰

発酵中には、様々な香り成分も生まれます。
例えば、レーズンを使って酵母液を作ると、芳醇な、ワインに似た香りを楽しめます。
酵母の代謝の方向性が、発酵ではなく、腐敗の方向に傾けば、香りも良いものにはなりません。味もしかり。
焼き立てパンのいい香りも、酵母の代謝のお陰です。

酵母の存在を感じ、感謝する

手作りすることで得た気づき

自分で発酵種を培養した時や、パンを作っている時。
目には見えないほど小さな酵母が確かに存在することが実感できます。
それは、一種の神秘体験です。
そして、形の大小を問わず、様々な生物に助けられて生きている自分の存在を感じ、ありがたいなと思います。

参考:一般社団法人日本パン技術研究所のホームページ
   万田発酵株式会社のウェブメディア「発酵日和」
   「完全版生ごみ先生が教える「元気野菜づくり」超入門 吉田俊道著


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