見出し画像

「戦後」は終わったのか

虎に翼85話
この回を見て、突然に昔の事が思い出された

番組の中で、いつも笑顔だけど実は腹黒そうな中年男性が、酒宴に現れた少女を見て何故か突然に号泣する
号泣は止まらない、延々と号泣し続ける(この脚本と演出の本気度)
彼は空襲で、娘と孫娘を亡くしていたのだ

僕は、この話ととてもよく似た話を知っている

我が家には昔、とても親しくしていた夫妻がいて、僕は彼らを「おじさんおばさん」と呼び、未だに本名を知らない
そして本名すら知らないが本当に親しくしていて一緒に旅行に行ったことがある
おそらく鬼怒川温泉
一泊してチェックアウト
帰る前に旅館のお土産コーナーをみんなでぶらぶらしていたとき、突然おじさんが並んでいた人形(観光地とは全く関係のない、腹話術で使うくらいの大きさの人形)を抱き寄せ、これを買っていくと突然泣きながら駄々をこねはじめた
おばさんが何か言っても聞かない
おじさんの、二度と絶対に離さないぞという覚悟に、とうとうおばさんは折れた

彼らには息子がいて、出兵して亡くなっていたのだとそのとき聞いた

その人形の何がスイッチとなって記憶を蘇らせたのかは判らない
しかし涙ぐみながらも嬉しそうに人形を抱きしめるおじさんの姿を、僕は今でも憶えている

「戦後」とはいったい何なのだろう
記憶を辿るとおそらく昭和40年代の終わりごろ、1972年前後だったと思う
当時はまだ小学校の裏山に防空壕跡があって、空襲で破壊され銃痕の残る工場の塀も残っていた
乞食もいた、社会鍋もあった
これが戦後20年
その頃は、たぶん日本中に「おじさんおばさん」がいた
そして来年は戦後80年
「おじさんおばさん」がみんな亡くなったら、それで戦後は終わるのだろうか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?