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ヘンすぎてスゴすぎる生き物【読書感想】吉田重人/岡ノ谷一夫「生きもの ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係」

吉田重人/岡ノ谷一夫 「生きもの ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係」 岩波書店 


「ふとん係がいる」という衝撃の社会性と、一目見たら忘れられないビジュアルで、一躍有名になったハダカデバネズミ。
なんとも酷いネーミングだ。
裸で
出っ歯で
鼠である。

でもなあ。

これが、そのまんま、なんだよなあ。


ヘンな生き物

この和名を付けた人には拍手を贈るしかない。

ハダカで
デバで
ネズミ。

名は体を表す。いや、体が名を表す。


書籍は2014年発行。
「きもかわ」や、「へんな生き物」が流行り出した頃だろうか。
日本でこの風変わりな生き物に最初に目を付けた研究者による
ハダカデバネズミ超推し!な、愛情ダダ洩れの著書である。

初めての出会い。
研究用に生体を入手する過程。
飼育。
ハダカデバネズミに魅せられていく研究者。
そのミーハーぶりは実に楽しそう。
まるでアイドルとファンのようだ。

スゴい生き物

ヘンな生き物に夢中になる研究者もヘンな生き物だけど。
ハダカデバネズミはスゴイ生き物でもある。

①哺乳類なのに真社会性
ハチやアリに代表される、女王がいて働き係がいて・・・というのが新社会性。虫やエビなど無脊椎動物ならけっこういる。
でも、脊椎動物ではハダカデバネズミとダマランドデバネズミ(ハダカデバネズミの近縁種。こっちもヒドイ名前だ)の2種しか見つかっていない。

②やたら長生き
哺乳類は体のサイズと寿命の長さがだいたい比例する。小さい動物ほど短命。ハダカデバネズミのサイズなら、同じくらいのネズミで3~5年といったところ。
ところがハダカデバネズミは30年以上生きる!

③地中生活に特化した身体、感覚器

④音声コミュニケーションが豊富
穴のなかで仲間同士のコミュニケーションに一番有効なのは声だからか。齧歯類にしてはやたら鳴き声が多彩。今のところ20種類くらい分かっている。
真社会性で階級が存在するがゆえに、あいさつの鳴き声にも階級が反映されているそうだ。

まだまだ魅力はたくさんあるが、それは本を読んで欲しい。
デバたちの社会が、人間の社会に例えられたりしていて、非常に面白い。


私が一番興味を持ったのは長寿命というところ。
それと、かなりの近親交配で繁殖しているのに、遺伝的問題が起きていないようだ、というところ(少なくとも本書には記述がなかった)。血が濃くなるのは繁殖に大問題というのが生き物の常識なんだが。どうなってるんだ、こいつら?
このあたりの疑問は近年発展中の遺伝子工学が、そのうち解き明かしてくれるだろう。
研究成果の続報を楽しみに待つとして。

読み終わったが、やっぱりどうも・・・・・・
毛の無い出っ歯のネズミを
「カワイイ!」とは思えなかった。
すまん、ハダカデバネズミ。


私はフワフワモコモコムクムクの毛のある動物が好きだな。


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