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君は満足して、闘うのをやめるのか?|「幼年期の終わり」 アーサー・C・クラーク

アーサー・C・クラーク「幼年期の終わり」をオンライン読書会で読みました。私たちは自立した存在であるために、自分自身の作品を作り続けなければならないと感じたのでシェアします。

あらすじ

近未来の地球に高度な科学を持った宇宙人、オーヴァーロードが襲来します。その科学レベルの高さに圧倒された地球人は、戦うことなく彼らの統制下に入り、地球にはオーヴァーロードの導きによって平和と繁栄が与えられました。戦争はなくなり、国家は一つにまとまりました。しかし、その代償として、人類からは真に独創的な文化は失われていきました。それに抵抗しようとする人々と、地球を見守り続けるオーヴァーロードの思惑について話が展開していきます。

オーヴァーロードが与えてくれた高度な科学によって平和がもたらされた地球では、ユートピア的な社会ができあがりつつありました。教育の高年齢化、性の解放(完全避妊、遺伝子の特定)、移動手段の高速化、犯罪の撲滅。世の中のスピードはゆっくりになり、人々は与えられた余暇時間を楽しんでいました。

勝ち取るべきものがもう残されていない

そのような状況の中で、人類の一人は文化の停滞を憂いてこう言います。

オーヴァーロードの出現以来、真に新しいと言えるものは何一つ生み出されていません。その理由は明らかです。闘って勝ち取るべきものが何一つ残されていないから、手軽な娯楽が多すぎるからです。

人類はオーヴァーロードに圧倒的な文化レベルの差を見せつけられました。いくら頑張った所で、オーヴァーロードが作った以上のものを作れそうはありません。すでに考えられるほとんどの科学、文化はオーヴァーロードによって与えられたからです。生物は力の差があまりにも大きいと、戦意を喪失してしまいます。そして与えられたものに集中して、自分は満足しているんだと自分自身に言い聞かせるのです。

ここではないどこかへ

行き過ぎた満足は文化を停滞させます。人間は常に、ここではないなにかを探し求めてきたからこそ、進歩し続けることができました。アメリカ・資本主義的な進歩と生産が常に良いことであるとは言いません。しかし、現状に100%満足してしまったら、もうその人間はそこから先にどこにも行くことはできません。与えられたものの檻の中で、飼われていくことしかできなくなってしまうのです。

私たちは一人ひとりの自立した存在として、自由に生きていくために、文章を書いたり、絵や音楽を作ったり、プログラムを書いたりするんです。それはすでに世の中にあるものと比べて、まだ洗練されていないかもしれません。しかし、私たちは作り続けることでしか、与えられた世界を広げることはできないのです。もしあなたが自分の人生に、まあこんなもんかと限界を感じているのなら、どんなものでもいいです。あなた自身の作品を作りましょう。あなたの世界を広げましょう。



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