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「本・映画・漫画」批評

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思わず何かを書きたくなった作品たちのご紹介です。
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#哲学

【書評】『ミシェル・フーコー講義集成 ~ 安全・領土・人口 』

「哲学すること」を一度知ってしまうと、もはやそれ以前の自分には後戻りできない。それは、新しい「情報」や「知識」を得ることではない。また、何かについての「やり方」(to do) を変えることでもない。では、何が変わるのか。 「哲学すること」によって、自分が慣れ親しんでよく知っていたはずの世界は、ガラガラと音を立てて崩れ去り、まったく新しい姿に変容してしまう。もちろん現実の世界が変わるわけではない。世界に対する「ものの見方」、もっといえば自分自身の「あり方」(to be) が、

【書評】『意味という病』:柄谷行人

語り得ないものについて語ること、そこで生じる理解と誤解ともどかしさ。僕が物心ついたころからずっと抱えていた違和感、それが「意味」という病だったんだと本書を読んで初めて気づいた。 著者は(自身も抱えているであろう)どうしようもなく拭いきれないような「病の症例」を、他の作家や哲学者の文章のなかに発見しては、その病状を例示してみせる(その行為自体が、あたかも「反復強迫」のようだ)。 だが、この病のやっかいなところは、はじめから「正常」がないところにある。したがって、根本的な治療

【書評】『記号と事件: 1972-1990年の対話』:ジル・ドゥルーズ

難解な哲学書を理解するには、哲学者本人が語るライトモティーフを知ることが一番の近道だ。その意味で、本書はドゥルーズの哲学を理解する上で最適の入門書である。 ドゥルーズの一連の著作やその中で磨き直された概念、そして映画・芸術・科学といった幅広い分野への言及が、どのような関心や意図をもってなされたものなのかが率直に語られている。 その語り口も、含蓄とユーモアに溢れてなお切れ味鋭く、まさに「ドゥルーズかく語りき」といった次第。フーコーの晩年の行き詰まりについての冷静な洞察も、彼

【書評】『バートルビー 偶然性について』:ジョルジョ・アガンベン

近代の民主主義に基づいた市民社会では、生得的に「権利としての自由」がある(ことになっている)。そのなかでも、具体的な行使が保障されている権利は、もっぱら積極的な行為としての「~する自由」だ。 もちろん「~しない自由」もあるには、ある。たとえば「黙秘権」。だが、発言の自由が認められている場で「あえて話さない」のは、ときに第三者に対して否定的な印象を残す場合がある(「発言できない“何か”があるからではないか!?」)。 では、消極的な自由(~しない自由)の積極的な行使は、権利に