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アフターバーンとは?

 アフターバーンとは何か、ご存じでしょうか。アフター(後)バーン(燃える)という言葉が表すように、運動後に消費されるエネルギーのことを指します。
アフターバーンを理解して継続的に運動を行えば、代謝量の高い状態を維持することができ、有酸素運動以外のトレーニングでもダイエット効果をもたらすことが期待できます。今回はこのアフターバーンの効果について、お伝えしていきたいと思います。


1.何もしなくてもエネルギーを消費している?


 まず初めにエネルギーの消費について簡単にお話したいと思います。
人間は1日のうちでエネルギーを
・安静時代謝量(何もしていなくても起こる身体の中の代謝)
・生理活動(排せつや睡眠)
・生活行動(通勤、勉強など)
・食事誘発性熱産生(食べ物の消化・吸収)
に利用します。
これらの割合の大小は個人の体重や生活様式によって差はありますが、安静時代謝量は成人男性で1500kcal前後になり、総消費エネルギー量の6割程度を占めます。
 さらに運動を行った場合、これらに運動による消費エネルギーが加わります。例えば軽いジョギングを体重60㎏の男性が30分行ったら、約250kcalの消費になります。基礎代謝量での消費エネルギー量と比べると、かなり小さな消費量に見えますよね。

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このように、私たちは自覚していない体内の小さな反応にさえエネルギーを消費しています。特別運動を行わない人が1日3食食べても体重が増加しないのは、この無意識的な消費エネルギー量のおかげです。



2.アフターバーン=運動後勝手に代謝があがる現象


 アフターバーンは、端的に言うと運動後の代謝によってエネルギー消費量が勝手に高くなる身体の反応です。
 運動時の身体の中の代謝経路は、安静時よりも活発に働いています。筋肉を動かすために脳からの指令が出され、働いている筋肉に対して多くの酸素を供給するため心拍数が上がり、発生した熱エネルギーを逃がすため汗をかくといった反応はもちろん、筋肉への刺激により酵素が活性化されミトコンドリアでエネルギーが作られる…など、私たちの自覚している以上に多くの反応が起きています

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 これらの反応の結果として上昇した体内の乳酸濃度や消費した酸素やATPは、運動後すぐに安静時の状態に戻るのではなく、時間をかけて戻っていきます。この戻るという体内の作業自体にもエネルギーが必要になるため、通常時よりもエネルギー消費量が高くなります。これがアフターバーンの起こる理由です。

運動を行ったあとの体内は、もとの状態に戻るためにエネルギーを無自覚で消費しているということです。

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3.アフターバーンの効果の持続時間は?


持続時間、つまり運動後の代謝が活発な時間については様々な研究が為されています。外国のある研究では30分のレジスタンス運動(ベンチプレス、スクワットなど)を行った後、アフターバーンにより酸素消費量が通常より多い時間が38時間以上も続いたとされています¹。研究から1日~2日間持続するものだとされていますが、最も代謝が活発になりエネルギー消費が大きいのは運動直後です。
しかしアフターバーンはそこまで大きいエネルギーが消費されるわけではないので、期待のし過ぎには注意が必要です。運動で消費した分に加えて、通常よりも少し消費エネルギーの高い状態で生活している、くらいの認識が良いかと思います。

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4.どんな運動でもアフターバーンは起こるのか?


 筋肉中のATP、乳酸、酸素代謝量が増加するのは、筋肉に負荷がかかるようなある程度強度の高い運動を行ったときです。

例えば近年注目されているHIITは高強度の運動を繰り返し筋肉への負荷が高いうえに酸素の消費量も多くなるため、効果が高くなります。その他にもプライオメトリクスやサーキットトレーニングが効果的であるとされています。

しかし軽いジョギングなどの有酸素運動は、運動中のエネルギー消費量は大きいものの身体の代謝反応が通常に戻ることが容易であるため、アフターバーンの効果はあまり期待できません。

そのようにすべての運動でアフターバーンの効果が期待できるわけではないので注意が必要です。


5.EPOCとは違うの?


 運動生理学の分野の言葉で、EPOC(Excess Post-exercise Oxygen Consumption:運動後過剰酸素消費)というものがあります。
これは先ほど挙げた運動中の体内の代謝(ATPの消費、筋肉・血液中の酸素消費、乳酸の除去、心拍数上昇など)を安静状態に戻すために、安静時以上の酸素を消費するというものです。

アフターバーンとの違いについては、両者は運動後の同じ回復現象について示していますが、アフターバーンは回復により消費するエネルギー量の観点から、EPOCは酸素量の観点から考えられているという解釈をしています。


6.アフターバーンの効果を活用しよう


 ここまでお伝えしてきたように、運動を行うことで運動時の消費エネルギーだけでなくそのあとの生活でも通常時と比べて大きなエネルギーを消費することが期待できます。

これは体脂肪量を減らしたいと考えている方、太らない身体を維持したいと考えている方には注目すべきことだと思います。消費エネルギーを高める=有酸素運動だと考らえていますが、筋トレでも効果的であることがわかると嬉しいですよね。


 ここで注意しておきたいことは、減量するにはあくまで継続することが必要です。

アフターバーンによる消費エネルギー自体はそれほど大きくないので、1日運動しただけでは3日後からは今まで通りの状態になってしまうからです。

減量は消費エネルギーが摂取エネルギーを上回っている状態が続いたときに起こります。毎日食事を制限するよりも3日に1回運動して消費エネルギーを上げる方が心身への負担も少ないと思います。地道ですが楽しみながらやってみましょう!

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 おすすめはHIITトレーニングやサーキットトレーニングのような心拍数が上がりつつ筋肉に負荷がかかる運動です。特に大殿筋やハムストリングスといった大きな筋肉は解糖系の利用が大きいので、負荷をかけると回復に使うエネルギーも大きくなります。

疲労の溜まりすぎや怪我に注意しながらエネルギー消費の高い生活を送り、太りにくい身体を手にしましょう!


※一方増量を目指している方にとっては注意が必要です。運動後もエネルギーを消費し続けるということは、動いた分だけのエネルギーを摂取しても不足してしまうことになります。運動後のエネルギー摂取を確保しなければならない理由の一つとして認識していただけると幸いです。


本日のまとめ
☑アフターバーンは、運動後の体内の回復によって消費エネルギーが安静時よりも高くなること
☑アフターバーンの持続時間は1日~2日
☑軽い有酸素運動よりもインターバルトレーニングやレジスタンストレーニングで効果が見られる
☑この期間を活用して運動を継続すれば、常に消費エネルギーの高い生活を送ることができる


【参考文献】
1.Mark D Schuenke1, Richard P Mikat, Jeffrey M McBride. Effect of an Acute Period of Resistance Exercise on Excess Post-Exercise Oxygen Consumption: Implications for Body Mass Management
DOI: 10.1007/s00421-001-0568-y

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