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賃貸エージェント たかはしさん|メンバーに聞いてみた

omusubi不動産の紹介をすると「いろいろなバックグラウンドの人が働いていて面白いですね」と言っていただくことがよくあります。きっかけはそれぞれ違うけれど、「omusubi不動産」という会社に集い、同じ方向を目指して日々精進しています。

omusubi不動産の一番の魅力は、一緒に働いているひとりひとり。どんな人が、どんなことをしているのか。どうやってomusubi不動産にたどりつき、一見、ちょっと変わった不動産屋で働いてみようと思ったのか。この連載では、omusubi不動産の日常の様子を覗きながら、なかで働くスタッフに話を聞いていきます。

プロフィール
宮城出身、2011年まで仙台で過ごす。震災後、宮城から千葉へ引っ越し、不動産屋で働きながら靴教室に通う。2019年から靴教室運営をスタート。2020年に自分の活動を継続しながらomusubi不動産へ入社。

靴職人には欠かせない道具と、半生をともにしているブーツ

――たかはしさんは、omusubiで働きながら靴職人もされていますよね。やはり今日持ってきているのは靴作りの道具ですか?

たかはしさん:そうです。ワニって呼ばれてて、これはドイツ製なんですが、日本のワニだともうちょっとワニっぽい形してます。見た目がワニっぽいから「ワニ」って言うんです。靴作りの道具ってそういう形とか音とかで表すものが多くて、ハンマーもポンポンたたくから「ポンポン」って呼ばれてたり(笑)。そういう変な名前のものが多いですね。

――へえ! これは何に使うんですか?

たかはしさん:吊り込みって言って、靴を覆う木型に合わせる道具です。革を掴んだ状態で引っ張って、つま先にぐっと合わせる吊り込みって作業のときに使いますね。ハサミの反対部分では釘叩けるんですね。ハンマーとペンチがくっついてるんです。

――面白い! 初めて見ました。えっと、なんで靴を作ってみたいなと思ってたんですか?

たかはしさん:それが今回持ってくるか悩んだブーツがあって……(笑)。ダナーっていうメーカーのブーツなんですけど、専門学校時代の二十歳くらいのときに買ったもので。

――ふむふむ。

たかはしさん:当時僕がよく行ってた洋服屋さんにめちゃくちゃかっこいい人がいたんですけど、足元がダナーだったんです。その方を見て、ダナーかっこいいなって。当時はスニーカーしか履いてなかったんですけどね。それで専門学校のときに初めてブーツを買ったのが、このダナーでした。

20年もの間、ソールを張り替えながら履いているそう。

これは今でも自分で底を張り替えながら履いていて。僕、もう41歳になるんですけど、自分の半生はダナーと一緒にいますね(笑)。

――すごい! 人生のパートナーですね。

たかはしさん:今は自分が作っているものをできるだけ履こうとしているので、ダナーは唯一自分の作った靴以外で履いています。ダナーやブーツがすごく好きだったことから、自分でも革の靴をつくってみたいなあ、って思うようになりました。

――なるほど、ダナーが靴職人を目指すきっかけとなっていたのですね。

どうにもならない出来事を、チャンスに変えていく


――今は畑が違う不動産業の仕事をされていますが、omusubiに入るまではどんなことをしていたんでしょう。

たかはしさん:宮城県出身で、最初は仙台市のアパレル関係の仕事に就職したんですけど、2年くらいで辞めてしまって。その後ちゃんと働こうと思い、設立メンバーとして新しくできた会社に入ったんですが、なんと1年くらいで潰れてしまって……。

――なんと。それは大変ですね……。

たかはしさん:仕事がなくなる、とわかってから、友だちに相談したんです。そしたら今までの経歴とこれから取れる資格を考えてくれて。「今からならぎりぎり宅建試験受けていけるんじゃない?」ってアドバイスくれたんですよ。今なら、時間はたくさんあるから勉強するわって宅建試験受けて合格したんですね。

――友だちのアドバイスがきっかけだったんですね。

たかはしさん:そうなんです。ただ、いざ不動産屋さんへ就職しようとしてみると、当時の仙台って不景気であんまり求人とかなくて。なので、不動産屋はいいか、と思って、これまでやっていた仕事と似たような会社の就職に内定をもらったんです。働き始めれば2011年の3月16日に出社予定だったんです。

――ああ、それって……。

たかはしさん:はい。その前に震災が起こってしまって。内定が出ていた会社からは、正社員として雇うことができなくなりました、と。時給八百何十円のバイトだったらなんとか、と打診してもらったんですが、ちょっと僕も自分の生活があるので厳しいです、と辞退をしました。それで、東京の方へ出てきたんです。

――災難続きだったんですね。

たかはしさん:ただ、震災をきっかけに「いつ死ぬかわからない」っていうことを感じたんです。靴を作りたいっていう気持ちはずっと抱いていたんですが、仙台には靴作りを学べるところがなかったので、どうせ東京へ行くなら靴作りもやろう、と。

――うん、うん。やろうと思っていたことを試してみるなら今だ、と。

たかはしさん:そうですね。幸い宅建の資格もありましたし。そのときも友人に仕事のことを相談したら、地元のちいさな不動産屋で働いた方が、勉強になるよ、とアドバイスをくれたので、我孫子の不動産屋を受けて採用してもらい、初めて不動産業の仕事をスタートしました。そこである程度お金も貯まってきたので、靴作りの教室へ通うようになりました。

――そこからどのようにして、omusubiと出会ったんでしょうか。

たかはしさん:今はこのomusubiの事務所があるみのり台に自分の工房を構えていますが、もともとは柏でテナントを借りて、自分のお店を持っていたんです。当時は都内の管理会社でバイトしながら工房を運営してたんですけど、一年目で生徒さんがいい感じに増えてきて、ダブルワークしているバイトも徐々に減らせるなと考えていたときに……。

――もしかして……。

たかはしさん:コロナウイルスが流行し始めたんです。

――うおお……。

たかはしさん:生徒さんが、言葉の通り半減してしまって。靴教室がうまくいかなくなってきて、ダブルワークしていた仕事の転職も考えるようになっていたころ、ある日妻が「omusubi不動産募集してるよ」と教えてくれたんです。自分も物件探しをしている頃からomusubi不動産を見ていたので知っていたので、応募してみようと。

――なんとなくomusubiのことを知ってたんですね。

たかはしさん:そうです、そうです。やっぱり靴の方をちゃんとやりたいけれど、靴の方だけだと食えていけないから、と、事務のパートの求人に応募しました。でも当時のマネージャーの人に面接してもらうと、経験もあるし、他のことをやってもらうのはどうですか、と打診をしてもらって。当時のマネージャーも週4勤務だったので、週4でも働けるんだったらいいかなと。だから今はだいたい週の半分はomusubiで働き、残り半分は自分のやりたいことをやっています。

入居者さんに誘われて実現した合同展示会


――omusubiでは今賃貸のご担当ですよね。

たかはしさん:そうですね、営業のスタッフは河野さんという別の方がいて、僕はお客さんからこの物件見たいよ、という問い合わせがあったら案内をして、内見をして、申し込みをもらったら入居審査っていうのをやって、審査通ったら契約書を作って、実際の契約をお客さんと取り交わしを締結する、という一連の流れを担当しています。あとは入居後に何かあれば連絡をいただいて、その対応をしたり、退去のときの立ち会いだったり。

――たかはしさんの担当は、ほんとうに不動産屋さんらしいお仕事ですよね。外から見たomusubiと実際に入った印象って違いましたか?

たかはしさん:外から見た感じだと面白い物件たくさん持ってて、不動産屋らしくない不動産屋だなあって感じで見てたんですけど、実際入ってみたら……やっぱり不動産屋ですね(笑)。

――(笑)。

たかはしさん:しかもあの、普通の不動産営業よりも複雑というか、難しいというか。

――どんなところが違うんでしょうか。

たかはしさん:そうですね、まずシェアアトリエがあったり……。一般的な不動産屋って、入居者の方とのお付き合いってあんまりないんですよね。入居の時に契約して、なにかあったときに連絡を取り合って、あとは退去のときくらい。もちろん住まいとして入居される方とのコミュニケーションもあるんですが、アトリエだとより頻繁にコミュニケーションをとったりするかもしれません。そういう点においては普通の不動産屋では味わえない業務ですね。

――なるほど。omusubiで働いているなかで、特に記憶に残っている出来事はありましたか?

たかはしさん:割と最近なんですけど、5月に北小金の方にレトロビルsAnkAkuっていうシェアアトリエがあって、そこの1階にTOHKOTOさんっていうピックレザーを使って鞄を作っている二人組の方がいて。かなり精力的に活動していて、大手百貨店とか地方のセレクトショップとかでポップアップショップをしているんですけど、TOHKOTOさんが「よかったら一緒に合同展示会をやりませんか?」ってお声がけしてくれて。

――わあ、うれしいですね。

たかはしさん:僕が靴で、あともう一人Tシャツとかを作っているHOUSE DATEさんという方と3組でTOHKOTOさんのスペースをお借りして。それはomusubiにいたから声をかけてもらえた出来事でしたね。不動産屋としてじゃなく入居者の方とつながることができたのはいい思い出になりました。


松戸の落ち着く場所は、入居者さんのアトリエの中


――松戸周辺で高橋さんがよく行く場所はありますか?

たかはしさん:omusubiのシェアアトリエになるんですけど、8lab(はちらぼ)っていう二世帯住宅を部屋ごとに区切って使われている場所で。路上博物館っていう活動をしている方たちが入居されているんです。3Dプリンターで動物の骨格標本を作っていて、その中のアトリエがすごく好きです(笑)。一般の方は入れないので、中を覗かせていただけるのはomusubiで働いている特権ありきなんですが、いかにもラボって感じで、3Dプリンターが置いてあったりして。そういう作業場みたいなのが好きなんでしょうね。

――路上博物館さん、気になります……! イベントでその作品を見られる機会もありますか?

たかはしさん:そうですね、以前せんぱくオープンデーでも出されてました。あとはオンラインで骨格標本の販売なんかもされているみたいです。

――ほんとだ! 本物の標本みたいです。

たかはしさん:また、よく行く場所として挙げていいかはわからないですが、自分の工房はよく行きますね(笑)。自分の好きなものばっかりを揃えた場所なので、サードプレイスというか。居心地がいいです。

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omusubi不動産では、随時不動産事務スタッフ、空き家リサーチャー、物件ライターなどを募集しています。詳しくは下記のページをご覧ください。

取材・撮影=ひらいめぐみ


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