見出し画像

映像プロット『憶う』

〜まえがき〜

 中学生の頃仲が良かった友人、今はもう連絡を取らない友人のひとり。あなたには居ますか。ある日、何かをきっかけにふと過去の友人を想うことはありませんか。短い間でもずっと一緒にいた友人と、なぜ連絡を取らなくなったのか。懐かしく青い中学生時代へと思いを馳せるきっかけになればと思います。。

 主人公の芽衣は、中学二年生等身大の女の子だと思っています。部活は一生懸命、友達大好き、自分の気持ちに正直な素直な子。しかし、将来の夢も漠然としか決まらない、どうやって本音をぶつければいいのかわからない、そんな不安定な時期でもあります。今もその素直さは健在ですが、そのまま大学生になった訳ではなく、複雑な感情、不安、過去と未来のギャップなどに悩んだからこそ、感情豊かで優しい子に育ちました。そんな芽衣には、とても魅力的な友人が二人います。

 桃子はこの物語の中心となる芽衣の友人です。厳しい家庭で育てられ、両親の期待を一身に背負った責任感の強い女の子です。控えめな性格ですが、好奇心・探究心旺盛で芯のある中学生。ただ、中学二年生にして大きな壁にぶつかってしまいます。一人の放課後、芽衣に勧められ興味を持った女性アイドルを熱心に観る桃子。初夏のある日、その大好きなアイドルの新メンバーオーディションが開催されることが発表され、桃子は、いつか私もこんな風に踊りたい、歌いたい、笑いたい、と日々妄想を膨らませます。オーディションに応募したい気持ちで一杯、でも親が許してくれるはずなどない、でも…と、悩む桃子は、今まで生きている中で最も苦しい時間を過ごしているのではないでしょうか。結局、親に秘密で応募を決める桃子は、ワクワクと同じくらいの罪悪感を感じてしまいます。楽しい分の苦しさは辛いですよね。合格者には郵便で結果が送られてくるため、執拗にポストを確認するようになった桃子を同級生の佳純が不思議に思います。でも、親に見られてしまったら終わってしまう。必死です。結果、合格通知が届き喜ぶ桃子でしたが、一気に不安が押し寄せどうしようもない。そこで頼った友人は佳純でした。

 佳純は運動部に所属するハキハキ元気な女の子。情に厚く、幼馴染の芽衣も悩みを抱えた桃子もどっちも大切です。しかし、中学二年生の女の子三人、何か起こりそうじゃないですか。「私よりあの子が好きなんでしょ。」「どっちの方が好きなの。」など、選べない選択肢を投げられ悩む経験、ありませんでしたか。佳純は約束は絶対守る女の子なので、桃子にアイドルオーディションの相談を受けたことを芽衣には言いませんでした。その結果、桃子と放課後コソコソやってるのを見た芽衣に嫉妬されてしまいますが。佳純は佳純なりに、桃子の悩みを解決してあげたかっただけでしたが、実際、芽衣に対して秘密ごとをしていることになってしまい申し訳なさはあったと思います。

 最終的には、芽衣は教育大学へ、佳純は服飾系専門学校へ、桃子は大学へ行きながらアイドルへ、それぞれ未来へと進んでいます。三人ともすごく努力家です。大人になった三人が飲み屋さんへ行って何を話すのか、楽しみですね。

*******************
登場人物

斎藤芽衣(20) 現在大学二年生の20歳。教師を志して上京し教育大学音楽科に進学。中学時代は吹奏楽部に所属する。心優しく真面目な性格で友人は多い。嘘が嫌い。

斎藤桃子(20) 中学時代の友人。美術部に所属していた。芽衣と三年間同じクラスで同じ苗字からか仲良くなる。高校から別々になり連絡を取らなくなる。消極的だが、楽しいことが大好きで女性アイドルにハマっている。

小岩井佳純(20) 芽衣の幼馴染で高校も一緒。桃子とも仲がいい。上京し服飾系の大学に進学する。ハキハキものを言う子で負けず嫌い。約束は絶対に守る。


百田凛(20) 芽衣の中学時代の部活仲間で、大学で再会した。よく喋りよく笑う子だが口が軽いのが難点。

俊一(20) 芽衣が所属する高校の吹奏楽部の同級生。明日香の兄で、明日香から桃子の噂を聞き、芽衣に相談する。

明日香(18) 桃子の部活の後輩で俊一の妹。桃子と仲が良く卒業した後も連絡を取り合っていた。兄と同じ高校の芽衣と佳純の話を桃子から聞いていた。桃子のSNSを見て不安を抱く。

愛美(20) 中・高校時代の芽衣のクラスメイトで同じ大学に通っている。桃子と同じ美術部だった。

優馬(21) 芽衣の彼氏。大学で知り合う。スポーツが好きでいろんなサークルに顔を出しているため知り合いが多い。

*********************
プロット

「通知」
 教育大学音楽学部二年、斎藤芽衣は午前の授業を受けながら船を漕いでいる。突然、机の上に置いていたスマホが振動し、驚きながらも画面に表示された通知に目を通す。送信者は高校卒業以来会っていない、同じ部活の同級生だった。確認すると、中学時代の同級生のLINEを知らないか、というメッセージだった。教授の目を盗みながら「友だち欄」を探すが見当たらない。携帯の機種変更時に消したかな? と思い返すが記憶にない。確か、最後に会ったのは四年以上も前、連絡すらとっていなかったのだとその子のことを考える。ただ、メッセージが緊急を要するような文面だったため、送信元へ簡単な返事をする。すると、すぐに返信が返ってきて「斎藤桃子が行方不明らしい」と。驚いて返信を返そうとするも、教授にバレて名指しされる芽衣。授業が終わる頃に同じ大学の凛へメッセージを送り、ダッシュで食堂に向かう。


「行方不明」
 芽衣が食堂に着くと、凛が先に二人分の席を確保して待っていた。食券機の近くで彼氏の優馬と偶然出会い、三人で昼食をとることに。芽衣は凛に桃子の連絡先を知らないか確認するが、知らない様子。桃子が行方不明だと元同級生の俊一から連絡があった旨を伝えると、凛は知人に手当たり次第聞き、協力してくれることに。その後、俊一からメッセージが届き、妹が桃子と連絡が取れないことで騒いでいる、とのことだった。優馬は一連の話を聞き、本当に行方不明かわからない今、事を大きくするのは良くないというが、二人が言って聞かないため諦める。

 午後の授業が終わり、家に帰ると母に電話をする芽衣。桃子の話をすると、高校時代に不登校になったらしいという話を聞く。ちょうど芽衣たちが高校生の頃、桃子の母親と町のデパートでばったり会ったらしい。母は、「桃子ちゃん一人っ子だし、お母さんも結構厳しい人だからね、大学受験がどうのこうの言っていたけど。」と言い、「あなたから桃子ちゃんの話を聞くのは久しぶりね、一時期よく桃子ちゃんのこと話してたのにね。」と言って電話を切った。芽衣は、中学卒業してからなぜ桃子と連絡を取らなくなったのか、なぜ行方不明だと聞いて初めて必死に連絡を取ろうとしているのか、考えてみた。シャワー後にベッドに入るもなかなか寝付けなかった。



「汗」
 芽衣と佳純は家が近い幼馴染で、いつも一緒に通学する。途中、家の前で待っている桃子と合流し学校へ向かうのが日課だ。芽衣と桃子は苗字が一緒、二年間クラスも一緒で仲良くなった。そして、芽衣たちは部活に勉強と忙しい初夏を迎える。バスケ部に所属する佳純は、足の怪我でレギュラー落ちし、部活が暇になったらしい。放課後は大人しく勉強するわけではなく、趣味である服のデザインを描くことに熱中している。桃子は活動しているのか怪しいほど静かな美術部に入っていて、最近の放課後は教室に残って勉強…いや、絵を描いていた。芽衣は吹奏楽の夏の大会があるため、佳純と桃子と別れて音楽室に向かう。そして下校時間になると一緒に帰る毎日。

 ある日、帰りのホームルームで将来の夢の話があり、三人は下校中に受験や将来の話をする。芽衣は音楽教師に、佳純はデザイナーにという二人の夢を聞いた桃子は、話題を振られると戸惑いながら、「高校受験が終わらないとわからないな」と浮かない顔だった。桃子は学年の中でも好成績を出している。芽衣と佳純は桃子を励ますが苦笑いを浮かべている。そして桃子と別れる時、佳純は桃子がやけにポストを気にしていることに気づく。

 芽衣の部活が休みになった土曜日に三人でショッピングホールに出かける。服を見たりポテトとクレープを食べたりプリクラを撮ったり。最後に可愛い雑貨屋さんで三人色違い(芽衣は黄色、佳純は紫、桃子は赤)のキーホルダーを買い、佳純がアイドルみたいだ、と嬉しそうに話すと、桃子は俯いて泣いていた。芽衣と佳純は驚いたが、すぐに顔を上げて喜んだ桃子。

 夏休みに入るちょうど一週間前、芽衣は練習のたびに教室の前を通るのが億劫になっていた。部活のない二人が、毎日楽しそうに絵を描いていたり、お話ししているのが我慢できなかった。芽衣は二人に嫉妬に近い感情を覚える。その日の下校時間、芽衣は佳純と二人で帰る、と言い放ち桃子を置いて佳純の手を引っ張った。仲良し三人の中から除け者にされた気になってしまった。その後、芽衣と佳純は一言も話さず別れた。家に着いて母親の顔を見ると泣き出してしまった芽衣。桃子にきつく当たってしまったことや二人が羨ましくて嫉妬してしまったことを後悔する。

 次の日、何事もなかったかのように接してくる桃子に対して、ぎこちない様子の芽衣。昼休みになり佳純が二人に対して、部活や勉強で忙しいにも関わらず気持ちを考えていない言動をしたことを謝った。桃子も、勉強が嫌で逃げていたのは私、と泣きながら謝る。芽衣は、ごめん、と一言しか出なかった。その日から桃子は授業が終わるとまっすぐ家に帰ってしまう。


「ぎこちなさ」
 桃子は一人部屋で写真を撮っている。最近買った三脚にスマホを固定し、タイマーをセットして白Tシャツに短パンデニム姿の自分を写す。撮っては確認を繰り返し、たまにカーテンの隙間から外を気にしている。髪のセットを変えてみたり、アクセサリーをつけてみたり。しばらく撮影を続けた後、勉強机の上に勉強している風を装ったノートとシャーペンを置き、着替えの服をベッドの上に置く。机の引き出しの中には自己PRや志望動機の下書きの紙が束になっていた。そこからホッチキス留めされた書類を取り出し、選んだ写真とともに清書をあるサイトに打ち込む。送信したのは、締め切りギリギリのアイドルの追加メンバーオーディションだった。

 しばらくすると、車庫に車の入る音がする。桃子の母親が帰ってきた。桃子は急いで服を着替え、三脚をタンスに隠し、すぐにパソコンを閉じる。勉強机に向かったタイミングで家の鍵が開く音がした。下から桃子を呼ぶ声が聞こえ、ドキドキしながら向かう。母親から、受験勉強のため勉強塾へ入塾することを勧められたが、先ほど応募したオーディションのことが頭をよぎり戸惑う。なんとか母を説得し、三年生になるまで成績を維持することを条件に入塾を先延ばしにしてもらう。布団に入る時、自分がアイドルになれたらと想像を膨らまし胸が躍るが、悪いことをしたような罪悪感も感じる。

 机の上にあるホームルームで配られた志望高校と将来の夢を記入する用紙に目を移す。三者面談で使用するようで、志望高校と志望理由の欄はしっかりと書かれているが、将来の夢については空欄だった。ただ、期日が明日までで「アイドル」と書く訳にはいかず、なんとなく「教師」と書いた。芽衣と佳純と下校している時、二人の夢を聞いて羨ましく思うのと同時に、はっきり自分の夢を言えない自分が嫌になった。その話をした日は、オーディションの書類通過者に郵便が届き始める日だった。

 1学期の終わりが近づいてきた頃、佳純が桃子の部屋にやってくる。桃子は佳純にアイドルオーディションを受けたことを打ち明ける。また、オーディションの書類審査合格通知が届いたことを告げると佳純は喜んだ。ただ、母親には秘密で送ってしまったこと、誰にも知られたくないことを伝える。佳純は秘密を守ると宣言し、放課後に面接の準備をしよう、と提案する。桃子はかすみが応援してくれることがとても心強く感じた。次の日から、勉強をする名目でオーディションの服装を考えたり、自己PRの内容を考えたりと、二人で秘密の時間を過ごす。

 母親にオーディションのことがバレてしまうのも時間の問題で、オーディションの追加資料が届くことを忘れていた桃子は、母親が郵便を受け取ってしまい責められる。母親に激怒され、すぐ辞退するように言われたが、佳純が応援してくれていることもあり、初めて母親に言い返し、夜ご飯も食べずに眠りについた。

 次の日、佳純に母親にオーディションのことがバレてしまったことを話し、これからどうするべきか話し合っていた。すると、教室の扉の前に芽衣が怒ったような顔で立っていることに気づく佳純。芽衣は「二人で帰る。」と言うと、佳純の手を引っ張り帰ってしまった。残された桃子は、佳純が描いてくれたアイドル衣装を静かにファイルに入れ帰路につく。家に着いた桃子は、母親に辞退する旨を伝え、夏休みから塾に行くことを約束した。

 

「残光」
 夏休み中盤、アイドルオーディション面接日当日。桃子は塾に行くフリをして、面接会場に行くために片道一時間半の電車に乗る。佳純には「ちょっとだけ行ってきます。」と短いメッセージを送った。『237番 斎藤桃子』という紙を大事に手帳に挟み、お小遣いで買った服をリュックに入れていた。初めて行く隣の県の都市部の建物に圧倒されながら、地図を見て面接会場にたどり着く。

 11:30 会場入りの時間、会場横に立って、入っていく保護者同伴の女の子たちを見ながら時間が過ぎるのを待った。一度、警備員に話しかけられたが、「違います。」と一言。
 12:30 入場締め切り時間前にもう一度警備員に声を掛けられたが、「友人を待っています。」と一言。
 13:30 もうそろそろ駅に向かわないと遅れてしまう。桃子は入り口の写真を撮る。
 13:40 会場に背を向けて歩き出した。

 帰ると普段通りに夕食をとりお風呂に入り布団に入る。桃子は布団を頭まで被り、泣いていた。


「本人だと断定できない」
 桃子の連絡先を知らないか、佳純に連絡を取る芽衣。すぐに返信が返ってきたが、連絡先は持っていないようだった。佳純とはお互いバイトのない明日の夜に会うことを決めた。夕方ごろ、俊一の妹明日香からあるSNSのアカウントと共にメッセージが届く。「Momo」というアカウントは桃子のアカウントだという。投稿に目を通すと、歌の配信を半年前から毎日続けているようだった。画面に映る女の子は芽衣の知る桃子ではないように感じた。投稿は二週間前で止まっており、それ以降SNSを利用した形跡がなさそうだった。明日香曰くLINEやDMの返信もないらしい。寝る前に桃子のSNSアカウントを佳純に送った。

 朝起きると佳純から、「Momo」は多分桃子だよ、とメッセージが来ていた。芽衣は桃子が自分の勧めたアイドルに一時期ハマっていたことを思い出す。四限の講義を受けている途中、彼氏の優馬のLINEに女性と思わしき人物からメッセージが届く。凛が横で茶化すが、送り主は桃子の連絡を知っている人だった。送り主の愛美は、中学・高校・大学と芽衣と同じ学校の同級生。同じクラスになったこともなく親交も無かった為、存在は知っているものの話したこともなかった人物だ。優馬の軽いフットワークが功を成した。芽衣が連絡先を探している旨を伝えると、すぐ連絡先を送ってくれた。芽衣は、すぐに連絡を取ろうとしたが、なぜか緊張してしまった。結局メッセージを送ったのは学校を出る直前になる。


「電話」
 夕方になり、待ち合わせ場所の佳純が働く居酒屋に向かう。前に会った時より派手に髪を染めた佳純が厨房から出てきた為、芽衣はおもわず笑ってしまう。桃子に送ったメッセージはまだ既読がついていないようだった。佳純は「時効だ、許せ桃子。」と言いながら、桃子が中学二年の夏にアイドルオーディションを受けたことを明かした。芽衣が部活の時に相談を受けていたことや、放課後にオーディションの作戦を立てていたこと、どんな服を着ようか絵を描いていたことを懐かしそうに話していると、芽衣は涙が出てきた。芽衣はあの日の放課後、桃子を突き放してしまったことをいまだに後悔しており、恥ずかしく情けなく思った、が、佳純はそれを否定した。佳純は芽衣への変な心遣いが誤解を生んでしまったのだと謝る。突如、桃子のスマホが鳴る。桃子からの電話だった。


「骨」
 桃子を見つけた。桃子は居た。でも、「桃子が居ること」は私の人生から遠ざかっていた。桃子がいてもいなくても変わらない、そんな感覚でいた。思い出としてただ残っているだけだった。

 桃子は地元を離れ上京し、憧れのアイドルグループの一員として活動することが決まった。大学とかその他諸々は、桃子曰くどうにかなるらしい。電話の最後に、三人で渋谷に行く約束をした、お酒を飲む約束も。

 その後は、泣き酒したからかあまり覚えていない。朝起きると、あの日のキーホルダーを握っていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?