【コロナで脱資本主義】エピソード2 なぜ、サラリーマンは貧乏なのか?(3)
エピソード2
なぜ、サラリーマンは貧乏なのか?(3)
「私がこのメカニズムを勉強していた頃は、興奮のあまり寝付けずに、また、寝ても夢にまで出てくるありさまでした。だから、決して大袈裟ではなく、二人も私の講義を、眠れなくなるかもしれない、くらいの覚悟で聞いてください」
ボクの喉仏が鳴った。そして、それが聞こえたのか、はたまた興奮のためか、エリカも思わず眉根を寄せて、真剣な表情のマルクんに言葉をぶつけた。
「ねえ。本当に、資本主義というのはサラリーマンにとって不公平な経済世界なの?」
「と言うと?」
「アタシ、思うんだけど、資本主義は確かにそのメカニズムを知らないサラリーマンにとっては悲劇よね。でも、メカニズムさえ理解してしまえば、誰もが勝てる権利を有している、すなわち公平な世界なんじゃないの?」
「さすがはエリカさん。そのとおり。不公平なのは資本主義そのものではありません。それを平等に学ぶ権利が奪われていることに問題があるんです。そして、そのメカニズムを知る者と知らない者との間に生まれた知識格差。これがお金に姿を変えて『貧富の差』となって顕在化している。それが資本主義の世界ってわけです」
なるほど。
はたらけど
はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり
ぢっと手を見る
要するに、この歌のような世界を変えることはできないわけか。いや、資本主義自体は公平な世界なんだから、むしろ変わっちゃいけないのかな?
そうだよ。実際に、社会主義・共産主義国家はどうなった。ソビエト連邦はどうなった。破綻したじゃないか。それに、日本国内に目を向けても、国営企業が民営化されて黒字に転換した例もあるじゃないか。
「もし、二人が本格的に経済学を学ぼうと思ったら、それこそ、自分の一生をそれだけに捧げなければなりません。このマルクんのようにね」
マルクんが笑顔で続ける。
「でもね、経済学を算数に置き換えるならば、二人は『分数の計算』すら教わっていないのが現状です。私は二人に、知らなくても日常生活に支障のない『微分積分』を解説するつもりはありません。知らなければ困りますし、知っていればなにかと便利な『分数の計算』を覚えてもらいたいんです」
言うと、マルクんはボクたちにウィンクを投げた。
「では、今日はここまでにしましょう」
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エピソード4までは無料でお読みいただけます。 「資本主義はもっとも優れた経済制度」と子どもの頃から刷り込まれ、それを疑うこともしない日本…
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