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背中の記憶/長島有里枝

なんかエッセイつづき。
難しい本を読んでいる最中で、合間合間に休憩がてらエッセイを挟んでいるのだけど、休憩ばかり進んでいく。

金沢21世紀美術館で、この人の作品を見て衝撃を受けて、どんな人生を送ってきたのか気になって買ったもの。

一度は目にしたことがあると思う、家族のヌード写真を撮って有名になった方なんだけど、その第一印象の衝撃だけでなく、感情がすごく伝わってくるような写真を撮る人で、美術館で写真を見て泣いたのは初めての経験だった。

エッセイには、どうして写真をはじめたとか、写真家として名を馳せるまでの道のりとかは、詳しくは書いていない。幼少期の、鮮やかな記憶が書かれている。でもそれだけで不思議と、その人の個性が分かり、その人の視点がわかり、だからあんなに素敵な写真が撮れるのかと妙に納得をした。

家族だけどまるごと愛することはできなかったり、幼いながらに世界の全てと戦ったり、背伸びした恋愛、友人との軋轢、私たちも一度は通った「狭い世界がすべて」だった、瑞々しい記憶が思い起こされた。小説でもあると後書きにあったけれど、それでも筆者の視覚から感じる鮮烈な記憶がまざまざと蘇っていて、生きた文章だと思った。

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