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続氷点(上下)/三浦綾子

4冊にも渡る、「罪とゆるし」という大きなテーマについて書かれた壮大な話を読み終えた。
年末に相応しい読み応えだった。

私は信仰している宗教がないし、聖書を読むような忍耐もないけれど、この本に触れることでキリスト教の根底にある考え方や、原罪という概念について知ることができた。聖書は腰が重いけれど、小説を読むことによって考えに触れることが出来るのは、良い機会であるように思う。

それは、三浦綾子さんがこの難しいテーマを書くにあたって、人間ドラマの展開が巧みであり、読者を飽きさせず読み切らせる技量を持っているから成り立つのだと思う。それほど、この本に出てくる登場人物はびっくりするくらい生々しい。清いところも醜いところも、ことごとく人間。その人間らしさを、たびたび出てくる自然の不変さ、雄大さがさらに際立たせているように思う。

人間というのはいかにちっぽけで不確かなものであるのだろうと思う。だからこそ誰にでも原罪はあって、その罪をお互いに様々な形で受け止めたり償ったり許したりする。でも不確かな人間が正しさを貫けることはなくて、だからこその大いなる意志がある。それが原罪とキリスト教の考え方というのが分かって非常に興味深かった。

氷点という題名にもあるように感情と理性は矛盾することも多々あるしどんなに潔癖でいようと思っていても無意識下に憎しみを持つことだってある。人間はまさしく氷点なんだろうね。

いや、本を読むたび思うけれど、その時読むべき本に出会う気がする。

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