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南相馬市小高区のまちづくりへの提案

提案に至る背景

現在の小高区を取り巻く状況として、南をみれば双葉郡が復興財源をベースにした圧倒的なパワーでのインフラ整備や企業誘致を行っており、北をみれば原町の利便性の高い生活が横目に見えているのに、南相馬市全体としての平等性を図ろうとする圧力もかかる中で「小高だけが取り残されている」という不安を感じる方も増えてきている。
実際に帰還人口は頭打ちとなり、移住者や起業家が集まっているといっても地域の状況を変えるようなインパクトには乏しく、実際の日中のまちなかの人流は誰の目にも明らかなほどに減ってきている。

今後双葉郡のような大規模な基盤整備を行っていくことは望むべくも無いが、無いものねだりをするのではなく持てる状況、持てる資源を活用しながら、自分たちの有利な環境をつくっていく動きをしていくことで住民の抱える不安や不満を解消し、豊かな暮らしをつくっていくことは可能なはずである。

本提案はまるまま採用されるというよりかは、ここからより具体的な議論を深めていくたたき台として考えてもらいたい性質のものである。

提案1: ウェルビーイングの社会実装のモデル地域として研究・実証活動を誘致する

インフラ中心の被災地復興ではなく、人の幸福(ウェルビーイング)をベースにそれを改善していく社会実装を考えていく場とする。大きな企業の工場を誘致するよりも、一人ひとりの被災者幸福に寄り添う研究・実証を行ってくれるスタートアップ企業・大学を呼び込む

  • 社会心理学系の研究の誘致: 幸福度の測定について社会心理学系の研究を誘致する

  • この領域のIT分野の誘致: ウェルビーイング領域でフィールドを欲しがっている企業は多くある。

    • 移動関連: このあたりはすでに行っている地域も多い

    • コミュニティや地域通貨、信用可視化: DAOやNFTといった技術は出ているものの、企画と技術が選考しており、地域が巻き込めておらず具体的なコミュニティ実装にまで踏み込めている実証活動は多くない。

    • 医療: 遠隔治療だけではなく、予防治療(見回りや日々のデータ計測、健康体操)の領域も含む

    • 買い物: 代理購入、高齢者でも使えるオンライン販売などニーズがあるが社会実装が進んでいない領域がかなりある。AIなども利用した活用が検討できる分野

    • 福祉分野: 高齢者に寄り添うロボットやAIなどの領域が現在注目されている。または、高齢者や認知症でも活躍できるような店舗や商店経営を支える技術群なども増えており、それらを活用した社会実装を行う

    • 都市計画: 都市計画レベルでの地域デザインを検討できる地域は多くない。都市計画課で行って来たような地域デザインを研究領域に開き、地域と議論しながら集落単位や生活範囲での地域デザインを検討できるようにする

    • 自然科学: 放射能の影響で遠くなってしまった自然環境を研究活動と合わせて地域に取り戻していくような取り組み。

提案2: 小高交流センターの運営の民間委託を進める

残念ながら小高交流センターの賑わいは影を潜めており、特に双葉食堂の閉店以降は小高全体の人流の現象が続いており、地盤沈下が止まらない。
民間での活動を行ってきてはいるが、やはり復興拠点施設としての小高交流センターをなんとか活用仕切ることが重要と考える。

2015年よりずっと反故にされ続けている「地域の人たちで組織をつくり、民間委託ができるように行政と民で2014年のようにワークショップ話し合いを行いながら、民間で指定管理運営できる形を考える」という約束を実施していただきたい。

  • 運営組織に一般社団法人オムスビは手を上げる。至らないかもしれないが、行える組織体であるべく、店舗運営やイベント企画などの経験を積んできた。

具体的な活用方針として、買い物利用での利活用の増大からの利用提案したい。現在小高ストアでも買い物はできるが、悪くいってしまうと「どこのスーパーでも買える」ものを売っている状態であり、少なくとも地域外からわざわざ訪れるような状況にはないし、移動手段のある世代にとっては原町に買い出しに言ってしまうことが多いのが現状である。

裏を返すと、「ここでしか買えない」「ここに来ないと体験できない」ものがあるのであれば、他地域から小高への逆の人流を作り出すことも可能である。

小高は地域おこし協力隊などの活用もあり、外部のセンスを持った人が多くあつまり、点のレベルでは珍しいものや他の地域では手に入らないものや体験を提供しているお店が増えている。交流センターにこれらを集約していくことで、買い物目的での利用客が増え、結果として周辺の遊び場、交流施設などでのイベントも増え、当然ながら買い物と合わせたランチタイムでのレストランの利用なども増えていくことが見込まれる

具体的な機能の例:

  • 明らかに美味しい食品、珍しい食品を取り扱うお店: スーパーやコンビニで買えるものとは違う美味しい食品(パン、)や、体や健康に気を使った有機・オーガニック食品などを扱うお店

  • 美容と暮らしのショップ: ハンドメイドアクセサリーやアロマなどを扱った総合的な暮らしを提案するショップ

  • 生鮮のショップ: 野菜や現在のマルシェをさらに強化する形で、あえて地域のものではない少し珍しい野菜などもおいておく。魚店は数年内に谷地魚点も閉店を検討していることから、精肉や鮮魚を取り扱うことも徐々に検討に入れていくべきと考える。
    カミツレさんなど地域の飲食店と連携を行い、産品を美味しく食べてもらうための提案を行う。

三春のBRITO MARTが先行事例として参照されたい

提案3: 若者向け住居の整備と支援策

現在も空き家活用などで住居整備などを進めていただいているが、残念ながら必要な速度・地域ニーズとは一致していない。

  • 空き家の出る速度が遅く、家賃も安くない: 同程度の規模の地方と比べて、取り壊しを行ったため状態のよい空き家が少なく、家賃や購入も高い(他の田舎に行けば500万を切る価格で比較的状態の良い空き家がいくらでも出てくるが、この地域はそうではない)= 空き家活用での整備は現実的ではない

  • 現実に、空き家をリノベーションして住みたい、と考える層は全体としてはニッチな市場であり、地域に住む若者は新築住宅に住みたいと考えている。

そこで、

  • 分譲区画の整備: 小高には500㎡を超えるような区画が多く個人単位で土地が購入し辛い。現在の家を立てるなら120-30㎡もあれば十分。ある程度大きな区画を行政が支援しながら民間で買い上げていただき、分譲住宅池や分譲アパートを整備していく。
    ただし、大手住宅メーカーが整備する効率性を重視したものではなく、コミュニティとの浸透が図れるデザインの住宅を建てる。双葉や大熊の住宅群のイメージ(よりかは小さいものだが、意味としては)で考えていただきたい

相場感として新築購入の場合は土地込みで2000-2300万程度、賃貸の場合は5-7万で4-5人の家族が暮らすには十分な広さの住宅が供給できる状況をつくってもらえれば、双葉郡の破壊的な住宅・移住支援制度と比べても十分競争可能であると考える。

提案1,2,4,5と合わせて「小高に来ると未来の暮らしを先に体験できる」「田舎にはない珍しいものや楽しいものがあつまる地域」というブランディングを行い、そうしたメッセージに共感してもらえる若者世代を集める。

提案4:教育分野の振興

いわゆる「お勉強」をやる教育でこの規模で競争優位性を保つことは難しい。
そもそも不確実性の高い未来に対しては、決まりきったことを素早く学べる能力よりも、自分で興味や課題を発見し、それを探求、改善していく人材像が求められるようになると考える。
そこで、地域との距離の近さを活かし、能動的に考え、地域や自分のいる環境のことをより知り、理想を持ちながら粘り強く改善していく人材を育て上げられる地域とする。
市民としても教育は教育機関に任せるものではなく、地域一帯として子育てや子どもたちの体験を応援していく文化を醸成する

子ども園: 引き続きフォニックスやアクティブラーニング的な取り組みを続けていただく(通わせている人間として考え方としては非常に良いと思っています)
小中学校: 少人数ならではのアクティブラーニングを重視しながら、地域との交流を図り、はやい段階からまちのことを考えてみたり、実際に自分たちでレモネードビジネスをやってみるような取り組みを行う
高校: 小高産業技術高校でより実践的な教育を行うため、地域の企業と連携し具体的な社会課題や企業課題の改善に取り組む人材を、実戦形式で育成する

提案5: 上記を踏まえた空き地活用と景観の整備

上記を踏まえた空き地活用とそれに合わせた景観の整備を提案する。

  • 回遊と交流が可能な町: 先述した機能に加えて南北につなぐ道をミニ庭園、芝生の道、ガーデニングなどで整備していく。このあたりは東京大学 洲崎珠代さんの研究提案をベースに議論したい。

  • 駅前通りの景観整備: 街路樹を植えたり、用水路を復活させるなど、大胆とも思える景観整備を行っていただく。東町の交差点ー本町までは車がゆっくりしか通れないようにあえて道を湾曲させるなど、歩行者に優しい通路をつくる ※キャッセン大船渡に街路樹エリアを整備して道を曲げている事例がある。

提案6: 東部、西部地区の振興

西部地区は川俣SICを中心に、農業や流通の優位性を軸にした産業づくり(流通・加工施設など)や体験宿泊ができる機能を整備する。金房小学校を外部の利用者に開いた場所として、利活用を地域住民と考えてもらう

東部地区は紅梅ゆめファームなどの大規模営農がし易い環境を整えていくと同時に、まずは自然を広く使ったレジャー
などの推進などを行っていくのがよいのではと考える。

※実際のところは東部西部地区の解像度が高くないため、このあたりの提案は他のご意見を伺いたいところです。

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