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週刊 表の雑記帳 第一四頁_チャイナの海軍力が海上自衛隊を圧倒している説_その一

 今週の目についた報道はtwitter参照。

虎視眈々と尖閣を狙うチャイナ

 チャイナの船が毎日尖閣諸島周辺に現れ、昨日時点で八九日連続。領海への侵入も繰り返す中、衝撃的な報告がこちら。米国のCSBA(Center for Strategic and Budgetary Assessments:戦略予算評価センター)のToshi Yoshihara氏による報告書。本報告書の重要な点は、これがチャイニーズで書かれた文献を調査することでチャイナ本土がどのように日中の海軍力のバランスを分析しているかを評価している点だ。

日中の海軍力の真のバランスとは

 報告書はまず要旨から始まり、その後第1章の序論から第6章の結論までの全六章で構成される。本記事ではまず、Executive Summaryつまり要旨とIntroductionつまり序論の内容から、いくつか重要な点を箇条書きで紹介していく。必ずしも直訳ではないが、要点を抑えられればという意図で記載する。

Executive Summary 要旨

・アジアにおける海軍力のバランスは劇的に変化している。過去十年で、チャイナの海軍は日本の海上自衛隊を艦隊の大きさ、総積量、火力等の重要な力の指標において追い越した。

・チャイナ海軍の急激な膨張がこのままのペースで続けば、チャイナ海軍はこの十年で海上自衛隊に永久に追いつけない差を付けるだろう。

・端的に言えば、海における日本の相対的な実力低下は、自由な国際秩序を守る能力を蝕むだけではなく、日米同盟による抑止力をも弱める。

・チャイナの海軍力の蓄積は、これまでなかった戦闘という選択肢をチャイナに与えた。兵器類の進歩と操船術の上達は、チャイナ海軍の攻撃作戦による限局的な海域支配を可能にする。

・チャイナは海において日本を屈せられる手段と技術を有しているとますます自信を深めている。このような自信は、北京が力による現状変更に打って出る確率を高める。故に、チャイナの国家的意志と海軍力の増強は、インド太平洋の将来的安定にとって悪い兆候である。

・本研究(このCSBAの報告書のこと)は、チャイナと日本の海軍力の競争がますます苛烈になっていくとチャイナが見ていることを示す。と同時に、多くのチャイナの戦略家は、チャイナの海軍力はアジアの海における北京の野心を可能にすると信じている。本研究は、このまま放っておけば、地域の海軍力の不均衡が日米同盟を損ねアジアを不安定化することを示す。日米双方に、チャイナの挑戦を認識し海軍力の均衡を取り戻すため迅速に行動するよう促すものである。

Introduction 序論

・1990年代まで、チャイナ海軍が力を誇示する方法は限られていた。20世紀が終わる頃にも、まだソ連時代からの時代遅れの大型船を有していた。なので過去10年のチャイナ海軍力の急激な量・質の向上はこれまでになかった様相で、印象的かつ憂慮すべきものだ。ある意味では、日本は19世紀後半から20世紀初頭の清と帝政ロシアに安全保障を脅かされていた時代を再び経験しているような状況だ。清の北洋艦隊が日本海軍に勝つ可能性のあった頃から125年。この歴史的背景が近年の日本とチャイナの力の逆転の重大さを強調している。

・明治日本が成功を収めた「富国強兵」を今チャイナは真似てやっている。

・日本の海軍力の相対的な弱体化は、米国が日本に対して同盟国としてチャイナの台頭に対抗してほしいとより大きな期待を寄せている丁度その時に起こっている。故にこのようなより競争的で厳しい安全保障環境の中で日本の力が落ちていることは、地域の安全、同盟国の政治、そしてより大きな視点での米国とチャイナの戦略的競争において大きな意味を持つ。

・実に、チャイナ海軍力の台頭と日本の相対的な弱体化はインド太平洋の安全保障において重要かつ厄介な疑問を投げかける。海軍力において台頭しているチャイナは、力を失いつつある日本をどのように見ているのだろうか。この力の逆転は海上における日本とチャイナの関係にどう影響するだろうか。このような新しい状況に対して日本とチャイナの海上戦略はどのように適応していくのだろうか。これは日本と日米同盟にとってどのような意味を持つのだろうか。本研究はこれらの疑問をチャイナの視点から精査していく。

・第2章ではチャイナ海軍がどのくらい増強しているか、主要な指標において日本がどのくらい後れを取っているかを示す。又、本研究に用いた情報源や手法を説明する。第3章では、日本とチャイナの海上競争の根底にあるものは何か、その構造的・観念的な要素を明らかにする。第4章では、日本の戦略、能力、作戦に関するチャイナの文献を評価する。これらの文献は、チャイナの観察者が日本の海上能力の明らかな低下を認識し、大局的に潮目が変わってきていることを感じていることを示している。これらは、海上自衛隊と人民解放軍海軍との力が逆転してその差が更に開いていっていることについてのチャイナの解釈を明らかにする。チャイナが仮定する東シナ海における驚くべき戦闘シナリオについても分析する。第5章では、公開文書の情報を統合してチャイナの考え方を描出し、日米同盟の戦略へ与える意味を考察する。第6章では、地域の軍事力の均衡の重要性、公開情報の価値、将来研究の余地のある分野について最終的に考察し、締めくくる。

尖閣も今すぐ対応が必要だ

 要旨を読めば、チャイナが毎日尖閣諸島周辺に現れ、時に領海にも侵入し居座る現状も、より憂慮すべきものとして理解できる。既にチャイナの海軍力は我が海上自衛隊のそれを上回っているという分析なのだ。その気になれば奪られてしまい、取り返すのも難しい。我が国の主権を侵すようなことは許してはいけないし、何より我が国がしっかりと力を有し備えることは、自国のためのみならず地域の安定と繁栄のためにも重要だ。我々には、自由な世界への責任がある。

 第2章以降の主要な点については、次回以降の記事で記していく。


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