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週刊 表の雑記帳 第十頁_謂れのない罪を自白させられるウイグル人たち

 今週の目についた報道はtwitter参照。

「偽の裁判」にかけられるウイグル人

 今週、ドイツのメディアにウイグル関連の記事が出ていた(こちら)。その記事の題は、China convicts Uighurs in sham trials at Xinjiang campsというもので、100万人以上のウイグル人が収容所に消えていると言われる中、彼らが謂れのない罪で「偽の裁判」にかけられているというものだ。

 どういうことか。収容所での生活は、基本的に単調かつ退屈で、思想や言語を植え付けられたり、習主席を礼賛するプロパガンダ映像を見せられたり、そういう毎日のようだ。そんな中、ある日突然、あるリストを渡される。そのリストには「違反・罪」が並べられていて、その中から選ばされるというのだ。その選んだ「違反・罪」によって彼らウイグル人はその収容所に入れられている、ということになるわけだ。犯してもいない罪を過去に遡って捏造するというとんでもないことが行われている。そもそも収容自体が何の正当性もないのに。

 違反・罪を選んだ後、その選んだ違反・罪によって裁判にかけられるのだそうだ。勿論、偽の裁判だ。弁護士もつかない。証拠もないし(そんな罪は犯していないのだから当たり前だが)、当然ながら適正な法的手続きを踏むものでもない。控えめに言って、滅茶苦茶だ。

収容所にいたウイグル人の証言

 この記事では、以前収容所にいたという4名に、それぞれ独立に収容所でのことを聞いている。それによると、70以上のリストの中から犯してもいない罪を選ばされるようだ。どのような罪がリストアップされているのか。「海外の人に連絡を取った」といったどうでもいいものもあるようだが、ほとんどが「祈りを捧げた」「スカーフを頭に巻いた」といった宗教的なもののようだ。ここにも、ウイグル人の宗教・思想を破壊しようとする意図が見える。

 言わずとも想像できることだが、そのリストの中から選ばない、ということは難しそうだ。当たり前だが、脅される。「何も選ばなかったら、お前は罪を自白しなかったということ。そうなると、お前は永遠にここに閉じ込められる」とこういうわけだ。罪を認めれば、監獄で過ごす期間も短くなる、とも言われるようだ。収容所に監禁されているウイグル人の立場からすると、こんな風に脅されて、選ぶなと言う方が難しいだろう。

言語・宗教・文化の破壊はチャイナの常套手段

 どうしてわざわざこんなことをするのだろうか。無理矢理にでも罪をでっちあげて、ウイグル人の強制収用を少しでも正当化しようという意図もあるのかもしれない。更に、多くのウイグル人を監獄に移送することで強制収容所をカラにし、国際社会からの批判をかわす意図もありそうだと記事では伝えている。しかしこんなことで国際社会の目を欺けるはずがない。言語、宗教、文化の破壊はチャイナの常套手段だ。

国際社会はこの深刻な人権弾圧に向き合うべき

 なお、これら4名のウイグル人はどのように収容所から出ることができたのか。これにはカザフスタン政府の尽力があったようだ。カザフスタンに住む彼らの家族からの社会的な圧力に加え、水面下でのカザフスタン政府による外交努力があったと見られる。カザフスタンに居住許可や市民権を有していたり、カザフスタンのパスポートを持っていたり、そこに家族が住んでいたり、そうしたことがあるとチャイナはウイグル人を解放することもあるようだが、逆に言うとそういった条件にないウイグル人はチャイナの抑圧から逃れる術がないということだ。

 それに、出られたからと言って幸せになれるわけではない。考えなくても当たり前だ。収容所では大変な抑圧があり、暴行も性的虐待もある。この記事に登場する4名も、深刻なPTSD(post-traumatic stress disorder:心的外傷後ストレス障害)を抱えている。社交性がなくなり人が嫌いになった、人生が空虚になってしまって、自分の家族も含めてあらゆるものに関心がなくなってしまったと話している。自由・人権を謳う各国は、ウイグル人の解放のためチャイナに圧力をかけていかなければならない。加えて、ウイグル人解放に力を尽くすカザフスタン政府の毅然とした対応は、我が国が北朝鮮に拉致された国民を奪還する上で参考になることがあるのではないだろうか。

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