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あなたはどの国で働きますか?

あなたはどの国で働きますか?

 グローバル経済の帰結として出てくるのは、世界の賃金と物価の水準が等しくなっていくこと。つまり、これからの時代、職種が同じならどこで働いても収入はほぼ同じで、暮らしぶりが同じなら生活費もほぼ同じということだ。あなたは日本で働いてもいいし、外国で働いてもいい。日本で暮らしてもいいし、外国で暮らしてもいい。あなたは自由に選べる。選ぶのは、あなただ。
 ところで、世界のどこで働いてもどこに住んでも収入も生活費も同じなのに、1つだけ違うものがある。それが税である。グローバル化が進んでも、国家の枠組みは当分のあいだ残るだろう。そして国家にはそれぞれの事情がある。税は国家の事情で決まる。
 日本の特殊事情は2つ。少子高齢化国債残高だ。そしてそうなると、税が違ってくるのである。日本で働いた場合は、年寄りの世話と借金返済のために、稼いだうちのかなりを部分を国家に取り上げられそうな勢いである。
 さて、あなたは日本で働きますか? それとも外国で働きますか?

 世界には人口が増えている国はまだまだいっぱいある。少子高齢化が進む日本で働くより、そんな国で働いた方が有利だと、そう考える若者が増えれば、ますます日本の財政は厳しくなる。真っ先に立ち行かなくなるのは年金だろう。
 ところで、考えてみると一見奇妙な話だが、外国へ出れば義務は免除される一方で、外国へ出ても権利は守られる。国債の話だ。国債の債務者は日本で働く人(納税者)、国債の債権者は国債を持っている人。現実には収入が多い人ほど資産(国債)を多く持っているものだが、彼らが拠点を外国に移せば、借金返済の義務は免れて、債権の元本ならびに利子は確実に受け取れる。そう考えると、日本の破たんはますます近い。
 最近世界で起きている問題の多くは「グローバルとローカルのせめぎ合い」に起因する。日本の少子高齢化と国債残高も、これから同じ波に揺さぶられる。

国家は何のためにあるのか?

 経済のグローバル化が進んで人と物の移動が盛んになれば、賃金も物価も世界で同じ水準に近づいていく。それがグローバル経済の1つの帰結である。その意味では世界は1つになっていくということだが、一方で国家の枠組みがなくなる気配は今のところ無い。
 ところで、国家が何のためにあるかというと「税を取り立てるため」にあるのである。税金を納めたくないなら独立すればいいのだが、それをやろうとするとどうなるかというと、国家はそれを阻止するために軍事攻撃を仕掛けてくる。つまり「圧倒的な軍事力を背景にして、強制的に税を取り立てる仕組み」、それが国家の本質である。
 もしあなたが「軍事力とは外国と戦うためのもの」と考えているとしたら大きな勘違いだ。それ以前に「国民を従えるために、国民が逆らわないようにするため」に軍事力はあるのである。現に世界の軍隊の多くは内戦もしくは国内での騒動を鎮圧するために投入されている。アフリカでも中東でもロシアでも中国でも、多くの場合、銃口は自国民に向けられる。

所得税の最高税率はなぜ下がったのか?

 財務省のサイトに「日・米・英の所得税(国税)の推移」が載っている。それを見ると、1980年以前の日・米・英の所得税の最高税率は70%~83%と高かった。地方税を除いた国税分だけの数値である。
 現在の日・米・英の所得税の最高税率は37%~45%である。1980年以前と比べて30~40ポイントも下がったことになる。財務省のサイトには出ていないが、他の先進国も同じような推移を辿っている。
 税金の大きな役割は所得再分配であるが、この変化を見ると、福祉国家は過去のものになったということなのかもしれない。そして、経済格差が広がるのは当然の結果と言えるだろう。
 さて、問題は「所得税の最高税率はなぜ下がったのか?」である。あるいは、言い換えると「かつての最高税率はなぜ高かったのか?」である。
 ズバリ答えを言おう。かつての最高税率が高かった理由は「平等社会を謳う共産主義に対抗するため」である。最高税率が下がった理由は「共産主義がほとんど崩壊したから」である。
 すなわち、かつての西側政府にとって最高税率を高くして所得再分配効果を強くしておくことは、自国民が共産主義に惹かれないように、「資本主義でも平等に近い社会が築ける」ことを自国民に知らしめるために必要な施策だったのだ。そして共産主義がほとんど崩壊した現在、その必要性が無くなったから、所得を再分配する必然性も無くなったということだ。
 他に理由は無い。だから所得税の最高税率は下がったのである。

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税の成り立ち 〜 
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