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イチゴイチエの想い出づくり

春の穏やかな陽気に誘われ老若男女賑わいを見せてきた水族館。私たちのフォトスポットにお婆さんお母さん、そして4歳くらいのお姉ちゃんが来てくれました。

私はちょうどその時、販売を担当していてご家族で楽しそうに撮影される様子を微笑ましく見ていました。お母さんとお姉ちゃんはフォトスポットとして光り輝くマグロの頭側、お婆さんはしっぽ側に立ち、お姉ちゃんは両手を広げてニコニコ笑顔で楽しそうに写ってくれました。

かわいい……この写真いいなぁ。とても自然な笑顔で写真から何とも言えない楽しさが滲み出ています。プリントした写真を見るために販売ブースにお客さまがお越しになりました。

「笑顔がとっても素敵ないい写真ですね。お姉ちゃんも楽しそう!」
感じたままにお客さまに話かけました。

「いい感じね、楽しそうないい写真!」
お婆さまも写真の仕上がりをとても喜んでいただけたようです。すぐに購入いただきました。

そこに突然、お客さまの案内を担当していたアルバイト歴の長いベテランアミーゴがニコニコしながらお客さまの元へやってきました。お婆さんもベテランアミーゴと目をあわせ微笑みかけています。

ん、知り合い……?

実はこちらのお客さま、先ほど知り合いになられたそうです

私の頭に次々と浮かんでくる ?  ?  ?  ?

知り合いになった…?家族じゃないの……?

いまだ事態が飲みこめない私にお婆さんとアミーゴが一緒になって詳しく説明してくれました。

「ちょっと聞いて!駅で知り合って仲良くなって一緒に来たの!実は他人同士なのよ!」

案内中にお婆さんにこのように伝えられ、ベテランアミーゴも大変ビックリしたそうです。撮影後にドッキリのようにそれを伝えにきてくれたのです。

おばあさんは本当は近くにある観覧車に乗りに来られたそうですが、駅でこちらの親子と仲良くなり、その親子が水族園に行く予定だと聞いて一緒に来られたそうです。

別れ際、お婆さんは私たちアミーゴにいい香りのする栞をプレゼントしてくれました。話をしている最中もお母さんとお姉ちゃんは少し離れたところで待っていてお婆さんが話終わるタイミングで合流し、一緒に館内へ入られました。

一組一組のお客さまが、どのような想いを持って水族館にお越しになるか私たちにはわかりませんが、お客さまの想いにふれたり…、想いを馳せたり…お客さまから教えてもらった「一期一会」の出会いを大切にしようと胸に誓いました。

「私たちもいい想い出をもらったね」アミーゴと顔を見あわせながら、ご家族とお婆さんの背中を姿が見えなくなるまで見送りました。