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嘘をつく人: 3

 とにかく困ったのです。真夜中に電話してきてこれから死のうとしてる、でも止めろ(口では止めるなと言っている)。本当は死ぬ度胸もないのに人の注意を引くためのくだらない虚言。

「あなたが死ぬのを聞き届けます(電話だから)」

「君は、君はひどい人だ!」

「だってわたしはそこに行くことができません。こんな夜遅く電車もありません。そしてあなたは止めるな、と言っている。そこまで決意しているんです。わたしに何ができますか? このままお話ししていることしかできないですよ」

「自殺を止めないのは犯罪だぞ…」

 興奮しているのか声が上擦っていました。わたしが慌てるのを予想していたのに、平然としているのが気に食わなかったのでしょう。もしかしたら「ええ?! 止めてくれないの?」だったのかもしれませんが。

「そんな法律あるんですか? 死ぬぞ、て詰め寄られるわたしが犯罪者なんですか? あなたは本当は何がしたいんですか。死にたいんじゃなくて誰かに心配してほしいんでしょう?」

「僕は本気だぞ。死ぬぞ。馬鹿にするなよ」

「だから聞いててあげます。他にできることはないんです。わたしももうやめてほしいんです」

「僕の知り合いには弁護士がいるんだぞ」

「脅しですか?」

「もういいよ! 場所を変える! またかけ直す!」

 そう言って彼は電話を切りました。

(場所を変えるって…)

 呆れつつも、やむなくわたしは彼の実家(その人は実家住まいでした)に電話をすることにしました。夜中ですが自分たちの息子が死ぬと大騒ぎしているのです。もう家族に頼るしかないと思いました。それに彼の騒ぎ方は、子供が注目を引く時に駄々をこねるやり方と変わりありません。親に伝わってしまえばこれ以上死ぬ、と騒ぐこともできなくなると思ったのです。



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