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《ナルキッソス》

カラヴァッジョ≪ナルキッソス≫1599 国立古典絵画館

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目を逸らすことのできない暗闇が好きだ。
誤魔化すことのできないシンプルさが好きだ。
ここにあるのは自己愛に溺れた青年と、
それを映し出す鏡のような水面だけ。
水仙も精霊のエコーもいない。
静かで美しく、哀れなこの絵が好きだ。

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これは、水面に映る自身に吸い寄せられるように泉に落ちた説も、衰弱して死んだ説もどちらも好きだな。

もしかして、ネメシスに「理想化された姿」にしか見えなくなる呪いでもかけられたのかな〜〜。長い間水面を見つめ続けて、どんなに老いても自分の目には、過去の美しい青年のままの姿が写り続けてる。みたいな。良いね。もう意味合いも変わってくるよね。過去の栄光に縛られた末路みたいな。飛躍しすぎか。

とにかく水面が美しすぎるのよ。この絵は。こんなに水感がないのに、水面に見えて且つ美しいって何事。鏡っぽさも強いし、やっぱり自身を映し出す、みたいな意味合いとかも推していきたい。
セイレーンの話じゃないけど、水って引き込まれたら死ぬじゃない。そしてね、向かって右側の手よ。入ってない?水ん中に。引き込まれちゃう?大丈夫?もう、この少しの表現で泉に落ちた説も上がってくる。いいね〜〜!
水面が深淵にも見えたりしない??
"深淵を覗くとき、深淵もまたこちらをのぞいてるのだ"(フリードリヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』より)がよぎったりしたけど、どう?

あとはなんと言っても!大好物の背景です。
真っ暗。場所のヒントも何もなし。ただの暗闇。より一層この主題と絵の哀れさが引き立つ。背景があるのも好きだけど、意識が背景に分散しないで、哀れな姿だけにフォーカスをあててくる。っは〜〜〜〜〜〜〜〜!!こう、ガツンとくる虚しさ、大好物です。


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