戦略人事の意味~【解説】人的資本可視化指針(第6回)
戦略人事。
最近よく聞かれる言葉ですが、どういった意味でしょうか。
人事単独で、最適化を考えるのではなく、人事は経営戦略の基盤となることを明確に意識し、経営戦略においても人事なりのイニシアティブを発揮していくということになります。
そもそも、日本、特に大きい会社の人事部門は組織においても権力を持つ部門でした。人を動かすというところのため情報が集まり、組織の礎、要といっても過言でないほど、大きな意味や役割を持っていました。また、採用・配置、給与、処遇、人材育成、労務管理などといった「きっちりこなす」「しっかりやる」ということが求められる、どちらかというと組織、チームプレーにおいては「守り」の担当とみられていました。ルールに従って、時には前例踏襲とみられがちであっても「組織を安定的に回す」「問題を鎮火する」ことが大事であって、それゆえ組織の安定的運営、公平性、そういったものを重視しがちでした。
ただし、それは経営環境ゆえであって、今のような変化する時代には変化が必要なのかもしれません。もちろん、人事戦略を立て、経営にも関わってきた、「戦略人事」のようなことをこれまで実践してきた企業もあるでしょう。
これまでの人事、人事管理との違い
日本の大企業での人事の役割は、経営陣からの指示や自ら策定し承認を受けた「人事戦略」に基づいて、人事管理を進めてきました。目標についても、経営陣からのトップダウン、もしくは、自ら自由に設定を許されていたというイメージです。
これに対して、戦略人事は経営に対して、より関与度が多いイメージです。経営に積極的に参画し、経営陣の一員としても人を送り込み、経営戦略「全体」に口を出していく。つまり、経営に人事面を中心に影響力を及ぼしていくということです。
具体的には
人事領域には「治外法権」を発動させて防御
とか
人事のテーマ以外、例えば新規事業企画などには口を挟まない
とか
経営戦略の目標達成についての議論に積極的に参加しない
とか
といったこれまでのやり方を大きく変え「積極的」「攻め」のスタンス色を出していくということです。そういったことが求められるのです。
戦略人事のポイント
戦略人事のポイントは、
・経営に積極的に参画
・経営陣の一員としても人を送り込み
・経営戦略「全体」に人事面を中心に影響力を及ぼしていく
ということです。経営資源である人的資本の可能性を引き出し、経営への貢献(直接的には売上や利益拡大への貢献)を最重視して、経営に関わっていくということです。
特に人事部門としては
・収益向上、利益増大を促す人的資本の条件整理、要件の具体化
・事業開発、イノベーション実践、儲ける仕組み企画、成果を出すコンピテンシーを企画
することが、人的資本の時代の「戦略人事」に必要でしょう。
制度としては、センター・オブ・エクセレンス、オペレーション部門、組織開発・人材開発部門などが言われています。そのような機能も必要かもしれません。しかし、大事なのはそのような制度や機能のような「形を揃えること」ではなく、「人的資本の意味を徹底的に検討し」「理想となる人材像と組織と人事マネジメントの最適イメージやコンピテンシーを可視化し」「経営への積極的関わり」「人的資本をいかに活性化し、事業イノベーションなど経営向上に役立てる」ことですから。
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