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【第6章】勤続16年「ユニクロが青春だった」 元スーパースター店長との邂逅

ユニクロで16年間も働いた叩き上げ店長は語る

 本書の取材も終盤となって、思ってもみなかった人物からメールが来た。僕と同時に町田店に赴任して、3ヵ月ほどで異動していった店長の木内(43歳)である。本書のもとになったWEB連載の記事を目にして、懐かしさのあまり連絡をしたという。
 この連載で、僕は木内のことを良くは書いてこなかった。新入社員だった時代に教え導いてもらった記憶はなく、「悪い人ではないのだけど器が小さくて下ネタ好きな男」という印象しかなかったからだ。
 しかし、連載を進めていくうちにアルバイトスタッフの石本などが、木内を「仕事ができるし、やりやすかった」と評するのを聞き、僕の評価は一面的に過ぎないことに気がついた。
 木内からのメールは「ユニクロは青春だったよ。あのころは青かったし熱かった。器が小さいのは相変わらずだけど、よかったら会おう」という趣旨だった。
 入社5年以内に同期の8割が辞めると指摘されているユニクロで、木内はなんと16年間も働いてきた。しかし、5年前に退職し、現在は妻の実家のある静岡県に住みながら保険会社の代理店を開業すべく研修中らしい。
 木内の目から町田店はどのように映っていたのか。町田店がスクラップされた原因は何か。その判断は正しいのか。そして、木内自身はどうしてユニクロに入り、辞めていったのか。
 木内と会ったのは静岡県焼津市。静岡市から電車で西へ10分ほどの漁港で有名な街である。木内のインタビュー場所は西焼津駅から車で5分ほどの県道沿いにあるコメダ珈琲店を選んだ。愛知県発祥の喫茶チェーンだが、2008年に投資ファンドが買収してからは全国展開を加速している。旺盛な成長意欲を持つチェーンのロードサイド店。ユニクロ町田店の思い出を元店長と語るのにふさわしい舞台だ。

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