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【物語】いざつぼみがいまひらかれる
一人駆ける君を見つめた
黒い影になる前
美しい横顔が目に焼きついた
わたしは一人校庭の木陰にいた
読みかけの小説に
目を落とし
ただぼんやりと空想の世界にふけっていたかった
気づけば君を目で追うようになった
黄昏時
夕闇の前
聴こえてくる夕礼の時間
いつでも君はくしゃくしゃ頭をかきむしり
友達と他愛のないお喋りをしながら帰る
ひとつ閃きが走った
頬が赤く染まる
明日声をかけたら
お話しをしてもらえるかな
空想の世界に
現実から好奇心の手が伸び
瞳が開かれた
そうして
わたしは
夢の揺蕩いの世界から現実へと弾かれた
明日は君に声をかけられたらいいな
子供の頃の夢は駆ける君の影の中に閉ざされて
大人になった少女が今目覚めた