旅/✕✕温泉のストリップ小屋でヤケクソだった話ww

多分、二十歳ぐらいの冬休み。東北を3泊だったか4泊だったかで一人旅した。

夜行で花巻に着いたのは早朝。
宮沢賢治ゆかりの地をめぐり、イギリス海岸を、「こんなもんか…」って思いながらウロウロしていたら、派手にすべって転んで泥だらけになった。

駅前の安いビジネスホテルが取れなくて、赤電話(死語?)に10円玉を積み上げて、片っ端から電話をかけ、ようやく取れた志戸平温泉で一泊。

予算オーバーなので、素泊まりにしてもらって、コンビニみたいな店でカップラーメンとたこ焼きを買った。

その後、平泉、松島と南下したのは覚えているのだが、そのあとがどうもあやしい。

裏磐梯の雪原を、ウォークマン(死語?)で津軽三味線聴きながら、鉄道で移動した覚えはあるのだが、どこをどう通って、最後に✕✕温泉にたどり着いたのかは覚えていない。

で、温泉街をぶらぶらしていたら、
ワレ、ストリップ小屋を発見セリ…
浅草あたりの小屋にも入ったことがなかったが、暇だし、入ってみることにした。ボクが入ったのだから、相当安かったと思われる。

小屋の中に入ると、中央に舞台のある円形劇場だった。まだ薄暗いし、ボクのほかは誰もいない。誰もいない…しくじったか…。

そうっと席を立とうとすると、ピカッ!!っとライトが点き、

地獄が始まった。

おばさんの声でアナウンスが入った。
「ハイ、今始めるから、座ってて座ってて」

「ん?」と思って見回すと、右手の上の階に小窓がついてて、おばさんがこちらを見下ろしている。と、

♪ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル…

踊り子さんが速やかに舞台中央に進み出て、リズミカルに踊り始めた…そしてボクを執拗に見つめてくる。だってボクしかいないんだもん…

「ヤバい…」
ぼうぜんと 踊り子さんを見つめ返していると、2階のおばさんからアナウンスが入った。

「ハイハイ手拍子!! ハイハイ手拍子!! お兄さん!! 手拍子!!」

ストリップ小屋に入ったのは初めてで、客としてどう振る舞えばいいのか、じぇんじぇんわかりません…

クールにムッツリではダメなのか⁉…踊り子さんと一体になって、舞台を盛り上げなきゃいけない世界なのか⁉…たった一人でも‼

「ハイハイ手拍子!! ハイハイ手拍子!! お兄さん!! 手拍子!!」

…やってやる、やってやるぞっ!!

もう、ヤケクソだった。
ボクは一人でがんばった!!
気がつくとボクは泣いていた…!!

15分が過ぎただろうか…30分が過ぎただろうか…。

ちらほらお客さんが入り始めると、2階のおばさんと踊り子さんからのロックオンがようやく解かれた。

スローモーションが始まった。
今しかない!!
ボクはそうっと小屋を出た。

それ以来、ストリップ小屋には近づかないようにしている。

宿への帰り道、橋の上に屋台が出ていて、
ラーメン400円
と書いてあったので、食べていこうと席につくと、カップヌードルが出てきて、思わず顔を上げると、こわいお兄さんだったので黙って食べた。

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